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「アジア太平洋国会議員フォーラム」参加報告の巻【長島昭久のリアリズム】

2020.02.10 Vol.727

 正月早々の1月11日から16日まで、豪州キャンベラで開催された第28回アジア太平洋国会議員フォーラム(Asia Pacific Parliamentary Forum, APPF)に日本の国会を代表して参加しました。APPFは、昨年逝去された中曽根康弘氏が総理大臣を辞められた後に、アジア太平洋諸国の議会人に呼びかけ創設した会議体で、政府間の建前論を超えた本音の議論を議会人同士で大いに戦わせようではないか、という基本精神が貫かれてきました。

 今年も域内28か国から300名を超える国会議員が一堂に会し、3日間にわたり経済、安全保障、環境など主要なテーマが討議され、時に激しい議論を戦わせました。私は、日本が全体会議に提出した3つの決議案のうち、地域における安全保障課題に関する決議案の趣旨説明を行い、各国代表との分科会での議論に参画しました。そこでは、朝鮮半島の非核化に加えて、南シナ海をめぐる中国の強硬姿勢が争点となりました。

 私からは、中国が力を背景に広大な人工島を造成し、軍事要塞化している現状について率直に警鐘を鳴らすとともに、「中国の行動は、地域諸国の信頼を損ね、緊張を高め、平和と安定を蝕むものであり、私たちはこれを看過するわけにはいかない。このような行動が繰り返され、容認され、未解決のまま放置されれば、地域における国際秩序は根底から覆されてしまうであろう」と、深刻な危機感を背景に敢えて強めの発言を行いました。とくに、海洋における自由で開かれた法秩序は、人類が長い歴史を経てようやく合意に漕ぎつけた規範であって、その中核理念は「武力やその威嚇を背景にした一方的な行動により現状を変更しようとする試みを全面的に禁じて」います。この基本原則こそ、アジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎にほかなりません。

 これに対し、中国代表団が全体会議でも分科会の場でも猛然と批判、反論を行ったことは想像に難くないでしょう。しかし、日本や豪州のみならず、ヴェトナム、インドネシア、マレーシアの代表団も私たちの懸念を共有し、中国代表団に対し厳しく反論。ロシアや韓国の代表団も、基本的に同調してくれたのです。もちろん、これは決して中国をやり込めるための問題提起ではありません。あくまでも当事国による二国間解決を強調する中国に対し、国際秩序の根幹にかかわる問題は、二国間だけでなく地域全体の懸念であることを認識してもらうためのものでした。全会一致ルールの下で、最終的には決議案から「南シナ海」という固有名詞は削除されてしまいましたが、豪州代表団の修正案によって、地域全体の課題であることが再確認されたことは有意義だったと考えます。

 今後とも、あらゆる国際場裏において、地域大国である日本が豪州や東南アジアの有志国と連携しつつ、アジア太平洋の平和と安全と繁栄を確立する使命を果たしていかねばならいと再認識し、帰国の途につきました。 

(衆議院議員 長島昭久)

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