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TikTokが米中摩擦の一端となる日が来るとは…

2020.08.09 Vol.732

 トランプ米大統領が7月31日、中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」について、「米国での使用を禁じる」と記者団に述べた。アプリ使用に安全保障上の懸念があると問題視したため。

 バイトダンスは2017年、別の中国企業が手掛ける動画共有アプリの米国事業を買収。ティックトックに統合し、米事業拡大の足掛かりを作った。この買収をめぐり、米政府の買収審査機関「対米外国投資委員会(CFIUS)」が昨年秋から、米安保を脅かす問題が生じていないかどうかの調査を進めていた。

 米政府はかねてから、通信機器やアプリを通じ、米国から機密情報や個人データが中国側に漏れる事態に神経をとがらせていた。

 2019年5月にはトランプ大統領が、アメリカ企業による非アメリカ企業の通信機器使用を禁止する大統領令に署名。中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除に乗り出した。今回のティックトックはこの流れに乗ったもの。

 これを受け、バイトダンスは8月1日、ティックトックの米国事業を完全売却する方針を固めた。売却先として有力視されている米マイクロソフト(MS)は2日には買収交渉を継続すると発表。最終的な交渉期限を9月14日に設定した。

 ティックトックを警戒する動きは日本でもあり、自民党の「ルール形成戦略議員連盟」(会長・甘利明税制調査会長)は、7月28日に行われた会合で、個人情報が中国側に漏洩する恐れがあるとして、ティックトックを念頭に中国発のアプリの利用を制限するよう政府に提言する方針を固めている。

 また運営会社と連携協定を結んでいた埼玉県が7月に情報発信などでの同サービス使用を停止。同じく協定を結んでいた神戸市もティックトック上の公式アカウントを止めた。大阪府や広島県も連携協定を締結しているのだが、今後については日本政府の動きも見ながら慎重に対応するとしている。

 またティックトックについては6月30日の香港国家安全維持法(国安法)施行を受け、香港から撤退するという動きもあった。

 国安法違反疑の捜査に関する実施細則では、インターネット事業者に対し、国家の安全に危害を加える情報の削除などを要求できると明記。中国企業のバイトダンスが要請を拒むのは難しいとみられ、応じれば世界で批判されて利用者離れを招く恐れがあることから事前に撤退に踏み切ったとされた。

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