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黒船EV車テスラの破壊的イノベーションで変わる世界の自動車産業【寺尾聖一郎の「SDGsなライフシフト」】

2021.08.03 Vol.Web Original

このコラムでは、国内外のSDGsの最新情報を元に、17のSDGsのカテゴリーから毎回スポットを当て、教育、ライフスタイル、ビジネスなど“日本一わかりやすいSDGsコラム”を目指して連載しています。

 

 こんにちは、今回のテーマは時価総額最上位に上り出た、イーロン・マスク氏率いるテスラのEV自動車の実態について、その体験をもとにレポートさせていただきます。


EV元年本格到来

今年に入ってEV自動車の注目が加速していますが、最先端を走る米テスラ社のモデル3は既に6カ月待ち状態が続いています。

 

◆テスラの車は一体何が違うのか? 

設計思想が過去の車と全く異なるので、いくつか特徴を挙げてみます。
1)家庭のガレージで充電ができる(もうガソリンスタンドには行かなくて良い)
2)定期的に車がアップデートされる。(Wifiを通じて購入後も進化し続ける)
3)故障も寝ている間に故障も治っている。(ディーラーで修理という発想がない)
4)スマートフォンでほぼ全て完結(注文、購入、エンジン起動、温度調節、車庫入れなど)
5)全自動運転機能が既に内装されている(約85万のオプションでレベル5へのアップデートが可能)
6)ペットにやさしい「ドッグモード(外出中の車内温度キープ)」がついている。(TOP写真)
7)AIの活用で世界中のドライブデータが日々アップデートされている。

その他スピードや充電速度などその他の特徴を記載しきれませんが、確かに、1度経験すると、通常の車には戻れないオーナーの気持ちがよくわかります。例えるならば、スマホを手にした時のサプライズに近いと思います。

一言でいえば、この車は「タイヤのついたスマホ」と言われるのも納得します。

今までの車は、その車種ごとに、機能が限定し、進化した機能は新車に乗り換えるしか手段がありませんでしたが、テスラの場合は、1度購入すると常にこのアップデートされて行くので、常に最新のバージョンに乗ることができます。

 

*注文から納品まで全てスマホで完結する

 

◆EVシフトするEU諸国は日本より15年~20年先に進んでいる。

2021年7月14日、日本の自動車業界に衝撃のニュースが走りました。2050年までにEU域内で温室効果ガス排出をゼロにするという内容。つまり、CO2などの温室効果ガスを、2030年までに1990年比で少なくとも55%削減し、2035年までに100%削減という厳しい内容。これにより、ヨーロッパでは2035年までにガソリン車とディーゼル車の販売は禁止され、ハイブリッド車(HEV)についても事実上、販売禁止という規制です。世界各国でも米カリフォルニア州ZEV法で「2035年までに新車販売禁止」を筆頭に、中国の新エネルギー車政策、など各国でも電動車シフトを掲げてきています。

 

日本自動車業界のEV状況

では日本は、どうか?というと菅政権の重要政策で2020年12月に公表された「グリーン成長戦略」では2050年カーボンニュートラル社会の実現可能性を上げていますが、EUに比べると15年もの時差が生じていいます。

 

日本の各社の動き

トヨタの場合:累計1700万台のハイブリッド車を生産しているトヨタは5月12日に先立って2030年までに電動車の世界販売台数を800万台程度とする新たな目標を発表し、新車販売の約8割を電動車に置き換える宣言をしている。

日産の場合:世界に先駆けた日産と言えば、リーフという電気自動車を世界に先駆けて一般発売され、革新的で未来的なEV(電気自動車)として、2010年12月に誕生しましたが実は日産の電気自動車の歴史は長く1947年から電気自動車を発売していた。

 ほとんど知られていない歴史ですよね。

 

日産のEV販売はなんと1947年!

1947年といえば、終戦直後はひどい石油不足で、電力供給は過剰ぎみだったために、政府も電気自動車の生産を奨励した時代がありました。そうした時代に登場した「たま」は、商工省の性能試験でカタログ性能を上回る航続距離96.3km、最高速度35.2km/hの好成績を収め、当時はすごく評判になりました。昭和25年頃までタクシーなどに使われていました(公式HPより)。日本のEV自動車産業は世界先駆けだったのです。

*日本初のEV実用自動車 1947年「日産たま」

トヨタのプリウスが世界で発売され、海外セレブやハリウッド俳優がプリウスに乗り換えることが最先端のエコアクションとして、世界的に大ブレークしたことは記憶に新しいと思います。私も2011年から乗り続けたプリウスを、今年手放しましたが、走行距離16万キロ、リッター22キロの燃費を常に維持しつつ、一度も故障したことがない本当に優れた車でした。

 

テスラはどこへ行く?

2003年にテスラ(Tesla)は創業。バッテリー式電気自動車と、電気自動車関連商品に特化して、開発・製造・販売している自動車メーカーです。社名の「テスラ」は、電気技師で発明家の、「ニコラ・テスラ」に由来していますが、本社所在地はカリフォルニア州シリコンバレー。アメリカの電子マネー決済運営会社「PayPal」の創業メンバーであるイ―ロン・マスク氏が、テスラ・モーターズのCEOに就任したのは2008年のことです。

*大幅値下げしたテスラモデル3(上海工場版)

 

テスラモデル3の大幅値下げ額は150万円!(650万円→500万円へ)

人類にとって持続可能な未来を実現するために、マスク氏は電気自動車に特化したテスラに、多大な資金を投資して、現在まで新しい電気自動車を次々に発売してきました。結果、テスラの時価総額は2021年4月の時点で世界8位まで上がっています。その膨大な資金力で世界販売への加速を止めないテスラはついに、今年の3月、日本市場で、一番人気車種テスラモデル3ロングレンジの大幅な値下げを仕掛けてきました。その値下げ額は約150万円。つまり、500万円で購入でき、さらにEV助成金などを差し引くと、411万円で購入できるのです。EV自動車のネックだった走行距離も現在のモデル3のロングレンジは590キロ走行可能で、上位クラスのモデルSは走行距離647キロ可能ですので1回の高速受電で東京→関西エリアへもストレスなく到着します。

 

ポルシェやアウディ、BMW、フォルクスワーゲンも激しい競争に。

EUの自動車メーカーも次々にEVシフトが進んでいます。課題は蓄電池の容量と価格といわれ、各社1000万円前後の車種ゾーンと、500万前後のコンパクトカー車種に分かれています。

 

◆自動車産業の課題はEV化、自動運転、AI化、そしてサプライチェーンの大幅改善

テスラ車の日本進出と各国の環境宣言により、加速するEV化。日本のお家芸である自動車産業は今後大きな変革の必然にさらされていくでしょう。中でもEV自動車は部品が極めて少なくても完成するので、既存のサプライチェーンは大変革が必要にせまられています。また、AIを駆使した自動運転化により、自分で車を所有する時代からシェアする時代下では、無人カーを自宅に呼んで、目的地まで送ってくれる現実がもう整っているということです。EV化は二酸化炭素削減に大きな貢献をするので、既存の自動車産業にとってはこの10年が大きな正念場になることは間違いないと思っています。都内では青山に試乗用のショールームがございますので、どうかお近くのEV販売店で一度試乗されてみてください、きっと未来が見えてきます。

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