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“未来における過去の記録としての都市”というフィクションを描く 個展「元田久治 – Towers」/8月6日(日)の東京イベント情報

2017.08.06 Vol.695

 荒涼とした人気のない世界にたたずむ、風化したようなタワーたち。それは、現代の建築が過去の遺物となった、はるか未来の風景なのか…。

 現代の版画表現における注目作家の一人、元田久治の個展。

 幼いころより古びた神社など、時間を経て一部風化したような風景を描くことを得意とし好んでいたという元田。リトグラフという技術は、ときとして感情がこもりがちな線をドライな印象にし、その点において自らが描くものに対して客観性を得ることができたという。以降、元田の描く世界観は建物が廃墟と化した姿を表現し、未来における過去の記録としての都市、というフィクションとして確立していった。

 しかし2000年代以降に立て続けに起こった社会での壮絶な事件や事故、災害が、元田の作品の表現と近似していたため、鑑賞者は元田の作品を現実と結び付けながら見てしまうようになる。元田はアートとしてのフィクションを描いてきたが、見る者の意識がこれまでとはまったく違うものになってしまったのだ。元田はいま、社会の変容の中に生きる現代の作家として、そんな状況とも戦いながら制作を続けている。

 本展ではリトグラフのほかにも、鉛筆、墨、水彩の新作も展示される。

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