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野田の世界観を熟知したメンバーが揃った印象 桃尻犬『ルシオラ、来る塩田』

2021.08.30 Vol.744

 今年で第22回を迎える三鷹市芸術文化センターの名物企画「MITAKA“Next”Selection」の第2弾。

 桃尻犬は2009年に立ち上げた団体で、メンバーは作・演出の野田慈伸のみ。その作品は人間の悪意や杜撰さ、どうしようもなさ。人生のくだらなさ、つらさ、どうしようもなさ。それらがポップに楽しく、HAPPYに描かれる。

 今回の作品は10年前にコンビニに煙草を買いに行ったまま帰ってこない母親に置いていかれた兄妹のお話。2人はいつしか兄が妹を殴り始め、妹もなんとなく「嫌だなぁ」とは思いつつもあまり強く出られない関係に。その一方、隣の家は日曜のお昼に庭で焼き肉を食べるようなハッピーな家だったりするのにだ。この捨てられた兄妹をめぐり、それを助けたり、助けられたり、ただ一緒にいたりする人たちの隣をうらやむ羨望のお話。野田曰く「うるさく、元気がいいお芝居にしたい」とのこと。

 桃尻犬は公演のたびに俳優を集め、作品を作るスタイルなのだが、今回も野田の世界観を熟知したメンバーが揃った印象。

人生について考えてみる 演劇団体「桃尻犬」『山兄妹の夢』

2019.06.21 Vol.719

 桃尻犬の主宰で作・演出を務める野田慈伸は俳優としても多くの舞台に客演。その独特の風貌と癖のある役を演じることが多いことから顔を見れば「ああ、この人」と思う人も多いかもしれない。

 その一方でNHKちょいドラ2019「尽くす女」の脚本、人気劇団「玉田企画」最新作「かえるバード」への脚本協力など、脚本家としても活躍中だ。

 そんな野田による桃尻犬の作品では人間の悪意や杜撰さ、どうしようもなさ。そして人生のくだらなさ、つらさ、どうしようもなさといったものがポップに楽しく、HAPPYに描かれる。

 今作は熊本の山小屋にこもり実の兄妹でわいせつDVDを違法に販売し、家族ぐるみでおよそ4億円を荒稼ぎした実際の事件をモチーフとしたもの。

 主人公の兄妹は将来小さな喫茶店を作ることを夢見、その資金を作るために今はせっせと山小屋でわいせつDVDを作っている。その山にはさまざまな人々が迷い込んでくる。遭難者はもとより、プロポーズをしてフラれた男、姥捨てられた老婆…。そんな「これだ!」と思った瞬間に失敗してきた人々によるどうしようもない物語が展開される。

 前回公演『俺ずっと光ってるボーイ、健之助』では連日満席で千秋楽には立ち見も出た。今回も早々にチケットの売り切れが予想されるが当日券ももちろん出るので、あきらめずにトライしたい作品。

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