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こんな時代だからこそ演劇が見たい『物語なき。この世界』

2021.07.10 Vol.743

 本作は最近では映像の世界でも脚光を浴びる脚本家・演出家の三浦大輔の3年ぶりの書き下ろし作品。三浦はシアターコクーンには2015年にブラジル演劇の巨匠ネルソン・ロドリゲスの『禁断の裸体』の演出で初登場。2018年には自作の『そして僕は途方に暮れる』でエロスや暴力シーンを封印し、精緻なセリフで微妙な人間関係を演出し新境地を開いた。

 その後は映画、テレビドラマと映像の世界での作品が続いたが、今回は満を持しての演劇作品となる。

 今回の舞台は新宿歌舞伎町。10年ぶりに歌舞伎町のうらぶれた風俗店で偶然再開した売れない俳優と売れないミュージシャン。その出会いは「運命」というには間抜けすぎる出来事。自分の人生に「ドラマ」など起こるはずはないと諦めの気持ちを持つ平凡な2人だったが、この出会いをきっかけに2人に突然大きな事件が降りかかる。

 こう書くと「ドラマ」や「事件」を中心に描かれているように見えるが、三浦が描くのは「そもそも『物語』など存在するのか?」ということ。

「都合のいい出来事ばかり並び立てる」ことに違和感を感じる三浦がキレイごとやメッセージなしで、この世界の矛盾を暴く作品となる。

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