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野党共闘不発。ベテラン大物議員の落選。そして結果は自民の絶対安定多数

2021.11.07 Vol.747

 第49回衆院選(10月31日投開票)で自民党は追加公認2人を含め261議席を獲得した。公示前より15議席減らしたが、それでも単独で過半数(233)を超えるどころか、衆院全ての常任委員長ポストを独占し、各委員会で半数を確保できる絶対安定多数(261)にも単独で達した。公明党の32議席(3増)と合わせ、与党で293議席を確保した。

 共闘し、213選挙区で候補者を一本化した野党5党は立憲民主党は14減の96、共産党は2減の10、国民民主党は3増の11、れいわ新選組は2増の3、社民党は1議席を維持するにとどまった。その一方で日本維新の会は公示前の11から41へ大幅増を果たした。また「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」は議席を得られなかった。

 自民は神奈川13区から立候補した甘利明幹事長が選挙区で立民の太栄志氏に敗れ、重複立候補する比例代表南関東ブロックで復活当選を果たした。しかし選挙を指揮する自民幹事長が選挙区で落選するのは極めて異例のこと。甘利氏は岸田文雄首相に辞任の意向を伝え、岸田氏もこれを受け入れた。後任の幹事長には茂木敏充外相が起用された。

 また東京8区で長く「石原王国」を築いてきた石原伸晃氏も立憲の新人・吉田晴美氏に敗れた。石原氏は比例でも復活できず、落選。10期31年に渡って維持してきた議席を失った。今回、石原氏は恒例の石原軍団や父で元東京都知事の石原慎太郎氏の応援もなかった。

 立憲では大阪10区で党副代表の辻元清美氏が維新の新人・池下卓氏に敗れた。比例での復活もなく議席を失った。序盤は全国区の知名度と固い地盤を持つ辻元氏が優勢だったが、10月27日に自民元副総裁の山崎拓氏が辻元氏の応援演説に立ち、「選挙区は辻元清美、比例は自民党」とアピール。これに維新の松井一郎代表が国政で対立する自民と立民の異例のタッグを「とにかく野合」と批判。これを契機に保守票が池下氏に流れたとみられている。

 もっとも、大阪では自民の中山泰秀防衛副大臣も4区で維新の美延映夫氏に敗れ落選。維新は大阪では19選挙区中、公明に配慮し候補者を立てなかった4選挙区を除く15選挙区すべてで勝利しており、他の地域とは異次元の結果となっている。

 他の選挙区を見ても今回は大物議員の苦戦が目立った。

 立憲の小沢一郎氏は岩手3区で自民の藤原崇氏に選挙区で敗れた。比例で復活し議席は保ったものの、今後、存在感や求心力の低下は否めない。今回、小沢氏はかつてない危機感をあらわにし、異例のお国入りで引き締めを図った。他候補の応援に回るのが常だった公示日当日に選挙区入りし、自ら「今回の選挙戦は大変厳しい」と訴えた。終盤の3日間も地元をくまなく回って街頭演説を繰り返したが、4度目の顔合わせとなった藤原氏に世代交代を突き付けられた形となった。

 また「無敗の男」と呼ばれ、茨城7区で15選を目指していた立憲民主党の中村喜四郎元建設相も自民の永岡桂子氏に敗れた。中村氏は自民党時代の1994年(平成6年)にゼネコン汚職事件で斡旋収賄罪容疑で逮捕され、離党したもののその後も無所属ながら強固な後援会組織をバックに、「無敗」を重ねてきていた。

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