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1/4 謹んで新春のお慶びを申し上げます。【長島昭久のリアリズム】

2024.01.26 Vol.web Oiginal

 

今年こそ「未来に誇れる日本」のため、
政治不信を一掃し、日本経済を再び成長軌道へ!

 さわやかな大谷翔平選手のL.A.ドジャース入団の報道と終盤国会を揺るがした「派閥パーティ裏金問題」をめぐる暗いニュースが交錯する中、複雑な思いで年を越しましたが、新年早々、能登半島大地震と日航機事故が重なり、波乱の年明けとなりました。尊い命を落とされた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。政府与党挙げて、一日も早い復旧復興を実現します。

 先ず、「政策」以前の問題として、今回の「政治とカネ」事件について、自民党国会議員として率直にお詫びせねばなりません。もちろん、私自身は、政治活動に係る全ての収支は報告・公開しております。しかし、自分は潔白だと叫ぶだけでは済まされないほど事態は深刻です。政治への信頼回復、とりわけ自民党政治に対する国民の皆さまの不信感の払拭に全力を挙げねばなりません。

「政治資金規正法」を改正し、透明性を確保せよ!

 緊急に改革すべきポイントは、以下の3つだと考えます。第一に派閥によるパーティを禁止すると共に、収支報告に関し会計責任者と国会議員との間に原則として「連座制」を適用するよう政治資金規正法を改正すること、第二に不透明で恣意的な運用が常態化している政党の「政策活動費」を抜本的に見直すこと、第三に旧文通費の使途を透明化すること、などです。

 現行の政治資金規正法では、議員側からの積極的な働きかけが認定できない限り処罰されるのは会計責任者のみということになってしまいますが、これを原則「連座制」にして、会計責任者による独断専行が立証されない限り議員も処罰の対象となるよう法改正するものです。これにより、収支報告書不記載に対する抑止が高まると考えます。いずれにせよ、政治とカネをめぐっては、法律以前に、私自身も含め政治家が厳しく自らを律する姿勢が求められると考えます。

 その上で、日本経済を再び成長軌道に乗せ、国民の暮らしを豊かにするための政府与党の総合政策を、令和6年度予算案および税制改革大綱に沿って説明させていただきます。

「物価高に負けない賃上げ」を実現し、デフレから完全脱却!

  私が最も重視するポイントは、以下の3つです。

  • 給料が上がる経済の構築・・・来年の夏までに
  • こども達の未来を保障する社会の実現・・・数年以内に
  • 再び成長する日本経済の創造・・・中長期を見据えて

(1)家計の可処分所得を拡大し、消費拡大からデフレ完全脱却への道筋を描くため、①定額減税(2024年度の所得税・住民税から納税者本人と扶養家族一人当たり 4万円を差し引く:4人家族なら16万円)、②賃上げ促進税制の大幅拡充・延長(大企業や中小企業に加え、新たに「中堅企業」にも税制優遇措置を拡張し、物価高に負けない賃上げを全ての企業に促す)、③非課税扱いの経費として計上できる「企業交際費」を5000円から1万円に倍増(中小企業向け交際費年間800万円まで損金扱いできる特例も延長)、④すでに昨年10月から実施している「106万円/130万円の壁」の撤廃により、安心して働ける環境を整えます。

将来世代のために、今なすべきことは何か?【長島昭久のリアリズム】

2023.10.10 Vol.web original

 私たちは、こども達にどんな未来を残せるでしょうか。

 こどもの貧困や児童虐待、いじめ、不登校、教育機会の格差、若い世代を追い詰める奨学金の返済など、こども・子育てを取り巻く環境をこのままにしておくわけにはいきません。このままでは、こども達が大切な未来を失ってしまう!

 私は、この10年、焦る思いで、こども子育て政策に取り組んでまいりました。

こども達の「未来保障」に取り組んだ10年

 国内で子育て政策で頑張っている明石市(泉房穂市長=当時)や和光市(松本武洋市長=当時)、福岡市(高島宗一郎市長)などに足を運びました。里親さんとして何人ものこども達を育て上げたご夫妻のお宅にも伺いました。

 児童養護施設のクリスマス会や運動会には毎年お邪魔しています。また、国会でも、塩崎恭久元厚労大臣から引き継いで「児童養護・虐待防止のための超党派議連」の会長として、児童福祉法の改正やこども基本法の制定に取り組みました。

 そして、5年前、“世界で最も子育てしやすい国”フィンランドにも自費で視察に行きました。そこで見学した「ネウボラ」という子育てファミリー・サポート事業は、目から鱗と共に涙が出るほど感動的な制度でした。

 フィンランドの子育て家庭の98%が利用している無償のシステム「ネウボラ」は、昨年で創設100周年を迎えましたが、妊娠から出産を経て子どもが就学するまでの約7年間を、一人の保健師さん(かかりつけ)が健康診断を通じて家族丸ごと(親も兄弟姉妹も一緒に)ケアする仕組みです。7年間も同じ保健師さんが家族と接するわけですから、気軽に愚痴も言えるし、悩みや不安の相談もしやすく、家庭の中で親でも子でもリスクが生じたら、その保健師さんが早期発見、即対応で、責任をもって適切な専門的支援につなげてくれるから安心なのです。

 たしかに、似たような「切れ目のない伴走型」の子育て支援の仕組みを“日本版ネウボラ”と呼んで導入している自治体はありますが、一番の肝である「かかりつけの保健師さん」が一定期間同じ家庭をケアする真のネウボラ制度は、未だこの国にはありません。

リスクを抱えている子育て家庭は、総じて社会から孤立しがち

  たとえば、1歳半と3歳時に行う(法定)乳幼児健診。この健診会場に現れない親子が全国平均で約5%います。それ以外の95%の家庭は大丈夫だから、で済まされる問題ではありませんね。3~5歳で幼稚園にも保育園にも通っていないこどもの数も全体の約5%です。この5%の家庭こそが、リスクを抱えて地域コミュニティから孤立し、もしかしたら児童虐待など厳しい環境に置かれている可能性があり、緊急に支援を必要としているのです。

 就学前の幼児期における教育投資の重要性を訴えるノーベル経済学者ジェームズ・ヘックマン教授の言葉を借りるまでもなく、日本には「三つ子の魂、百まで」という諺があるように、幼児期における成育環境は、こども達の成長に決定的な影響を与えます。この頃の逆境体験が発達障害を引き起こしたり、心に深い傷を残したり、虐待の連鎖につながってしまうとされます。親子の愛着関係がとても大切な(妊娠期から)幼児期においては、どんな境遇に生まれたこどもでも「家庭的な養育を受けられるようにすべし」というのが、平成28年の改正児童福祉法の基本ビジョンで謳われていますが、この理念を制度として徹底せねばなりません。

確実に成果を挙げるフィンランドの「ネウボラ」制度

  そこで、このネウボラ制度なのです。ネウボラ保健師さん(もちろん、保育士さんでも研修を受けた子育て経験豊富な保育ママでもいいと思います)が、親御さんが不安や悩みを抱える妊娠期から0~2歳までの「不安定な3年間」に、効果的なサポートを提供してくれるはずです。じっさい、児童虐待によって失われるこどもの数は、日本では年間60~70件(政府発表。これに対し、小児科学会では年間300件以上あるとしています)ですが、ネウボラの母国フィンランドでは、年間0.3件(つまり、3年に1人!)なのです。

すべては、こども達の未来のために

  今年の4月、こども家庭庁が創設され、こども関連予算が増額されましたが、どちらかというと、これから生まれてくるこどもへの支援メニューに偏った印象です。たしかに、児童手当の所得制限撤廃や、貧困率5割超のひとり親家庭への支援拡充、大学生や専門学校生への給付型奨学金拡大は、こども達の未来を保障するための大事な施策です。

 しかし、私は、すでに生まれて来たこども達を大切に育てることにもっと光を当てるべきだと考えます。増加するゼロ歳児の虐待死、こどもの自殺を未然に防ぐためには、孤独な育児など困難を抱えた親御さんへの手厚い支援が必要です。年末の「こども大綱」策定に向け、こども達の未来のために、真のネウボラ制度を全国に根付かせることができるよう、政府与党の中で全力を傾けて参ります。

 

暑い夏に考える「台湾有事は日本有事」~第3回 台湾海峡危機政策シミュレーションに参加して【長島昭久のリアリズム】

2023.08.01 Vol.web Original

 

 7月15‐16日の二日間、同僚議員と共に都内のホテルに缶詰となって、民間シンクタンク(日本戦略研究フォーラム)が主催する「台湾海峡危機政策シミュレーション」と格闘しました。

本邦初の日本・米国・台湾3か国による有事シミュレーション

 この政策シミュレーションは、現職国会議員が首相はじめ主要閣僚役を務め、マスコミ取材フルオープンの中で、様々なシナリオに基づいて政策決定を迫られるというものです。

 私は、初回から参加してきましたが、日本チームに加えて、昨年は米国チームが、そして、今年は台湾から専門家が参加しました。いずれも、実務経験豊かな元政府高官および軍幹部OBで、現実的で的確な対応が非常に参考になりました。

「官房長官」役として首相を支え、閣議をまとめる

 シナリオは、サイバー攻撃などハイブリッド戦に始まり、危機がエスカレートする中で、①中国による台湾への軍事侵攻が現実化した場合、②米国が台湾防衛のために介入することを決断し、日米安保条約第6条に基づき在日米軍基地を使用するための事前協議を日本政府に求めた場合、さらには、③尖閣諸島や与那国島への領土侵害が行われ西日本がミサイル攻撃にさらされる事態に陥った場合、など極めてリアルな想定のシナリオが突きつけられ、私たち閣僚はそのつど対応を迫られました。

 1回目は防衛大臣役、2回目は米国国務長官役を務めた私は、今回は、昨年に続き首相役の小野寺五典さんを支える「官房長官」役を務めました。

2027年、防衛力の抜本的強化で何が変わるのか?

 今回のシミュレーションは、現在ではなく“2027年”という近未来に設定されました。2027年というのは、昨年の安保3文書に基づいて行われる「防衛力の抜本的な強化」の“第一弾”が終わる年です。つまり、我が国が一定の反撃能力を保有し、能動的なサイバー防御態勢も整い、有事の際に海上保安庁が防衛大臣の指揮下に入る「統制要領」も確立し、被侵略国等に対する防衛装備品の提供も可能となっている等、といった想定で行われました。

 これは、現状の保有能力や法体系を前提に行われた過去2回のシミュレーションと大きく異なる点です。これまでの2回は、シナリオを突き付けられるたびに、「こんなこともできないのか!」という歯がゆさの連続でしたが、今回は、実行可能な政策選択肢の幅が広がり、日米同盟協力もかなり円滑に進めることができました。しかし、その分、極めてストレス度の高いより複雑なシナリオを突き付けられ、演習とはいえ神経をすり減らすこととなりました。

残された4年間で何を成すべきか?

 シナリオの詳細については、「日本戦略研究フォーラム」のHP(www.jfss.gr.jp)をご参照いただければと存じますが、以下に、今回のシミュレーションを通じて課題として浮き彫りになった重要なポイントを2つに絞って記しておきたいと思います。

 第一に、「反撃能力」や「能動的サイバー防御力」を実効あるものとするためには、それを支えるアセットや法整備が必須となるという点です。スタンドオフ・ミサイルの射程を延伸し、敵の基地に反撃を加える能力を持ったとしても、目標を精確に探知・追跡(ターゲッティング)する「眼力」を持たなければ、役に立ちません。

 この分野における米国依存を脱却して、独自の衛星や無人機といった探知アセットの整備を急ぐ必要を痛感しました。また、サイバー攻撃から電力網や通信、鉄道、医療、金融システムなど我が国の重要インフラを守るには、能動的サイバー防御を実施する政府機関に対する電気通信事業法や不正アクセス禁止法など現行法制の「適用除外規定」を設ける法整備が喫緊の課題となります。

目の前で起こる事態に適時適切に対応できない現行の安保法体系

 第二に、「事態認定」の問題です。我が国の安全保障法体系には、他国にはない特有の「仕組み」が埋め込まれています。それが、事態認定です。それは、①我が国が武力攻撃を受けた(あるいは、受ける可能性が高まった)事態と、②未だ攻撃を受けてはいないが我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態の二つに分類されますが、この事態認定を行わないと、自衛隊を柔軟に動かすことも、国民保護を実施することもできません。しかし、シミュレーションでも明らかになったように、この二つの事態は、密接に連動するものです。

 とくに、台湾海峡や朝鮮半島など我が国周辺で不測の事態が起こった場合、②の事態で米国(軍)が動く際には、必ず同盟国として我が国が相応の対応を迫られます。その時に、事態認定に手間取ってしまえば、目の前の事態に適時適切に対応できないばかりか、日米同盟協力にも穴を空けてしまいかねません。

 この点については、前回のシミュレーションの後に、月刊誌『正論』2022年10月号に論考を寄せましたが、1年経った現在でも改善されていません。改めて警鐘を鳴らし、政府与党内で真剣に検討することを促します。

そもそも有事を起こしてはならない!~そのために必要なこと

 いずれにせよ、私たち政治家に課された最大の責務は、そもそもこのような有事を起こさないことです。そのための外交努力こそが大切です。しかし、「汝、平和を望まば、戦に備えよ」という人類古来の格言が示すように、有事に対する冷徹にして周到な備えなくして、有事を抑止し平和を維持するための外交を柔軟に展開することはできません。

 私、長島昭久は、そのことを肝に銘じて、引き続き外交・安全保障に全力で取り組んでまいります。

戦後最大の“危機”を、日本再興の“好機”に転換しよう!【長島昭久のリアリズム】

2023.01.05 Vol.web Original

新春のお慶びを申し上げます。

 昨年は、3年目に突入したコロナ禍に加え、2月にはロシアによるウクライナ侵略、ゼロコロナ政策の失敗による中国経済の停滞などにより、戦後の国際秩序が崩壊の淵に立たされ、世界経済の変調と深刻なエネルギー危機に直面する激動の一年となりました。

安全保障環境を無視してきたGDP比1%規制を撤廃

 そのような中、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面した我が国は、安全保障政策の大転換を決断しました。向こう5~10年で我が国の防衛力を全面的に強化するものですが、何より画期的なのは、戦後半世紀以上にわたり防衛力整備を縛り付けてきた「GDP比1%」という防衛費の上限規制を撤廃したことです。

 その上限規制は、昭和51年三木内閣で定められて以来、我が国を取り巻く安全保障環境とは無関係に、歴代政権によって“暗黙の了解”として継承されてきました。それでも、我が国の平和と安全が守られてきたのは、国連を中心とする国際秩序の下で、圧倒的な軍事力を誇るアメリカという同盟国の後ろ盾があったからだといわざるを得ません。

いつまでも“アメリカ頼み“は通用しない

 しかし、そのアメリカも国連も、国連常任理事国のロシアによるウクライナ侵略を抑止することができませんでした。また、昨年9月以来50発以上の弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の蛮行を止めることもできません。さらには、過去30年で40倍以上にも膨れ上がった軍事費に任せて圧倒的な軍拡を推進し、東シナ海や南シナ海、台湾海峡で強硬な軍事活動を行っている中国を明らかに持て余している状況です。

 このような中、我が国のみが安全保障環境の悪化を見て見ぬふりをして防衛努力を怠れば、地域の軍事バランスは益々不安定な方向に傾いてしまいます。そこで、故安倍元総理の後押しもあり、岸田政権が「防衛力の抜本的強化」の旗を掲げ、自民党では一昨年の暮れから1年以上かけて在るべき防衛力の姿を議論し、昨年末に安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)を策定し戦後政策の大転換を行ったのです。

国会で堂々と議論をしよう!

 そして、いよいよ今年の通常国会では、5か年計画の初年度となる防衛予算案とともに、3文書および防衛力整備の中身についての本格的な与野党論戦が行われることになります。とくに、昭和31年に国会で合憲性が確認されていたにもかかわらず、周辺国への配慮やコストかかり過ぎるとの理由から導入を先送りにしてきた「反撃能力」の保有をめぐる議論が白熱するでしょう。

反撃能力は先制攻撃ではなく抑止のため

 私は、複数の隣国が極超音速滑空兵器や弾道ミサイルによる奇襲攻撃能力を有する今日、“受け身”のミサイル防衛網だけで国民の命と平和な暮らしを守り抜くことはほぼ不可能になっている現状に鑑み、ミサイル防衛により飛来するミサイルを防ぎつつも相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から「有効な反撃を相手に加える能力」がどうしても必要な時代になったことを、正面から国民に説明すれば十分納得を得られるものと考えます。こうした有効な反撃能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止するのであり、相手を挑発するような先制攻撃を企図するものでは全くありません。

防衛力強化の財源、今は増税の時ではない

 問題は、5年間で約43兆円もの防衛費をどのように捻出するかです。財源をめぐっては、昨年末の自民党税制調査会で激しい議論が交わされました。結局、岸田総理は「増税という安定財源なくして未来への責任は果たせない」と言明し、今年度は増税せず歳出改革等によって捻出するものの、令和9年度までのいずれかのタイミングで年間1兆円規模の増税を行う方針を打ち出しました。

 しかし、私を含め、多くの同志議員が、このコロナ禍とウクライナ戦争、円安などにより打撃を受けた経済、企業、家計を下支えするために大規模な経済対策を行っている一方で、増税を声高に叫べば消費や投資意欲を萎えさせ、賃上げ努力に水を差し、景気後退でかえって税収を減らしかねないと強く警鐘を鳴らしました。

増税以外のあらゆる選択肢を追求しよう

 結局、自民党においては、萩生田政調会長が、「年明け早々にも、増税に頼らない財源についての議論を(税制調査会の上位機関である)政務調査会で行う」ことで党内議論の引き取り事態を収拾したのです。今後は、通常国会における与野党の議論と党内論議を連動させながら、持続可能な防衛費増額(GDP比2%程度)を支える安定財源の確保と経済危機突破のための財政・金融政策とをバランスさせる“現実解”を追求していくこととなりますが、私もその議論の先頭に立ってまいります。

【 参考までに、防衛財源についての私の考え方は、・・・・倉山満YouTube(チャンネルくらら)「緊急特番 どうなる防衛増税?」
URL https://www.youtube.com/watch?v=JV4TATcMqOQ

予算倍増で、こども達の未来保障を拡充

 喫緊に財源が必要なのは、防衛力整備だけではありません。私が取り組んできたもう一つの課題である「こども達の未来保障」のための予算も倍増しなければなりません

 現状GDP比1.7%のこども予算をOECD平均の3%に近づけるのです。今年の4月から「こども家庭庁」が始動します。これまで、厚労省、文科省、内閣府に分散していた“こども政策”機能を同庁に統合し、政府、自治体、民間が一体となって、こどもと子育て家庭を全力でサポートする仕組みをつくり上げるのです。

こども予算の財源は「こども国債」で

 不妊治療に加え出産も保険適用とするほか、児童手当の増額、幼児教育・初等教育に続き高校の完全無償化(所得制限の撤廃も!)、大学・大学院・専修学校生に対する給付型奨学金の拡充、既存の奨学金の返済猶予、さらには、児童相談所の増強、ネウボラの整備、多様な働き方のニーズに応える「みんなの保育園」の実現、こども食堂やこども宅食支援などなど、政策・制度総動員で子育て環境を劇的に変えるための財源を捻出しなければなりません。そのためには、10年で50兆円の「こども国債」を発行するのです。現役世代にいま投資することによって、こども達が成長し税収として“お釣り”が来ますから、国債発行に十分な正当性があるはずです。防衛力整備を歳出改革で乗り切りつつ、こども財源は10年間の集中投資でこの危機を突破しようというものです。

 たしかに安全保障も未来保障も戦後最大の危機に直面していますが、この危機を正面から捉え、未来に向かって思い切った投資を行い日本再興のチャンスに変えていく、今年はそんな一年にするべく全力を尽くしてまいります。

衆議院議員 長島昭久 拝

令和4年壬寅。年男、国政への決意新たに(その一)【長島昭久のリアリズム】

2022.02.24 Vol.web Original

 

 年初から猛威を振るうオミクロン株により全国で感染者が拡大しました。2月初旬になってようやく、専門家の間でもピークアウトとの観測が広がってきましたが、まだまだ最前線の病院や保健所機能が切迫する油断できない情勢が続いています。また、外にあっては、ウクライナをめぐる混沌、北朝鮮の度重なるミサイル発射など、世界情勢の混迷は深まるばかりです。

 そのような中で、衆議院における令和4年度予算案の審議は順調に進み、論戦の舞台は参議院に移りました。一日も早く可決成立させ、コロナ禍で苦しむ飲食や旅行業界、さらには子育て世帯に対する必要な支援を的確に届けられるよう全力を挙げてまいります。

 今年は、7月に参院選という政治決戦を控えておりますが、国家の基本政策においてもこれまで積み残されてきた重要な課題を解決すべき大事な年でもあります。私は、少なくとも以下の4つのテーマに全身全霊で取り組んでまいります。

①包括的な経済安全保障法制
②こども家庭庁の創設と児童福祉法の改正
③国家安全保障戦略の改定
④憲法改正と皇室典範の改正

 まず、今国会で成立させねばならない二つの重要法案について、私の考え方を述べたいと思います。第一に、「経済安全保障推進法案」です。大きく4つの経済社会的分野から我が国の安全保障を揺るがす深刻な懸念を払拭しようとするものです。すなわち、(1)サプライチェーンの強靭化、(2)基幹インフラ防護、(3)先端技術の官民協力、(4)特許の非公開です。

(1)サプライチェーンでは、とくにコロナ禍対策で露呈した半導体や医薬品などの経済活動や国民生活に不可欠な戦略物資について、輸入や販売、調達、保管状況などを国が厳重に管理する方針です。(2)基幹インフラの防護は、主として外国勢力によるサイバー攻撃等を念頭に、電気、ガス、水道など14分野の防護体制を立て直します。(3)先端技術をめぐっては、官民協議会を立ち上げて、官民が緊密に連携して研究開発を促進できる環境を醸成しつつ、民間人にも国際標準の罰則付き守秘義務を課して機微技術情報を守り抜く体制を構築します。その上で、(4)特許の一部を非公開にすることにより、安全保障上極めて機微な発明等を保護していきます。

 これまでのような、技術流出や情報漏洩、サイバー攻撃に無防備だった我が国の姿勢を大きく転換する重大な法整備ですので、野党や経済界の一部から出ている「骨抜き論」に屈することなく、心して国会審議に臨んでまいります。

 第二は、私がライフワークで取り組んできた子ども達の未来保障の根幹に関わる児童福祉法の改正です。そして、もう一つのライフワークである外交・安全保障分野においては、まさしく10年に一度の大きな改革の年を迎えました。すなわち、年末までに国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の「戦略3文書」同時改定を行わねばなりません。さらに、今年は、国政の根本法である憲法の改正と、日本国(が日本国であるため)の根本法である皇室典範の改正について、真剣に議論を深めるべき重要な年と考えております。衆議院の特別委員長を拝命した北朝鮮による拉致問題の解決に向けた努力とともに真剣に取り組んで参ります。

 以上3つのテーマについては、稿を改めて「令和4年壬寅。年男、国政への決意新たに(その二)」で論じたいと思います。

米国の急激なアジア・シフトにどう対応するか?【長島昭久のリアリズム】

2021.10.11 Vol.746

 ここ1‐2か月のバイデン政権によるアジア・シフト—より正確には「対中戦略シフト」—が風雲急を告げています。我が国の戦略を考える上でも、現状を正確に把握しなければならないと思い筆を執りました。

 私たちの目に見える形でその戦略シフトが始まったのは、猛烈な批判にさらされた8月のアフガニスタン撤退です。あまりにも性急な米軍撤退(に伴う首都カブールの混乱ぶり)に、欧州はじめ国際社会のみならず米国内でも野党共和党や米軍関係者からも怒りの声が上がりました。しかし、この行動の目的は明確です。20年間に2兆ドルもの国費(1日300億円!)と約6500人に上る犠牲者(米兵約2500人、契約民間人約4000人)を出した途轍もない「重荷」を降ろして、アメリカの持てる国力を今世紀最大のライバルである中国との戦略的競争に振り向けよう、という一点に尽きるのです。

 その後、突然発表されたのが、AUKUSです。豪州のAU、英国のUK、アメリカのUSをつなげた名称が表すように米英豪3か国による新たな安全保障協力です。そこでは、豪州とフランスとの間で進められていた通常駆動型の潜水艦建造計画が破棄され、米英の有する原子力潜水艦技術を豪州に供与することが発表されたのです。当然フランスは猛反発しましたが、後の祭りです。ずいぶん乱暴な進め方ではありますが、それくらい事態は切迫していると見るべきでしょう。

 その動きと前後する形で、英国からは空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃部隊がインド洋を超えて南シナ海から西太平洋海域へやってきて、我が国海上自衛隊の軽空母「いせ」や米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」などと共同訓練を行いました。そこには、米海兵隊と英空軍のF-35Bと航空自衛隊のF-35Aという最新鋭戦闘機も参加しました。その後、日米英豪の海軍合同演習も行われました。

 そして、9月いっぱいで退陣する菅義偉総理が訪米し、ワシントンにおいてQUADと呼ばれる日米豪印4か国の首脳会議が初めてリアルで行われたのです。QUADでは、インドの対外姿勢を慮って軍事面を強調することは避けつつも、4か国の経済、技術、気候変動などにおける幅広い協調と結束を確認する有意義な会議となりました。

 これらの動きに通底する共通目標は、中国との戦略的競争を同盟国・同志国により優位に進めるための足場固めです。(そこに秘められた軍事的な意味合いについては稿を改めて論じます。)

 新たに選出される総理総裁および新内閣は、このような我が国を取り巻く戦略環境の激しい変化を見据えつつ、国民の命と平和な暮らしを守るという崇高な使命を全うしていかねばなりません。

(衆議院議員 長島昭久)※本稿は、9/29自民党総裁選の前に書かれました。

米軍のアフガニスタン撤退の教訓【長島昭久のリアリズム】

2021.09.13 Vol.745

 8月15日、アフガニスタンの首都カブールがタリバンの猛攻を受けて陥落しました。丸20年に及ぶ米国をはじめ有志連合によるアフガニスタン戦争のあっけない幕切れです。

 米国は、2001年以来、2兆ドルの巨費を投じ、ピーク時には13万人の有志連合軍を指揮し、約2500人に上る犠牲者を出しながら、30万人のアフガン政府治安部隊を育成し、精密な最新兵器や空軍力を駆使しましたが、はるかに装備の劣る8万人弱のタリバンを屈服させられませんでした。

 バイデン大統領は、この米国史上「最も長い戦争」を強引に終わらせたのです。手段の巧拙は別として、バイデン政権の意図は明々白々でした。今世紀における米国最大のライバルである中国との戦略的競争を勝ち抜くために、余計な重荷を降ろして全ての国力を東アジア・西太平洋正面へシフトさせようとするものです。

 カブール陥落の翌日、ホワイトハウスから声明を発したバイデン大統領は、「アメリカ軍は、自分たちのために戦おうとしない戦争で、戦って死ぬことはできないし、そうすべきでもない」と述べました。

 これは、直接的には、まともに戦わず四散逃亡したガニ大統領はじめアフガン政府首脳や治安部隊に向けられた言葉であることは間違いないのですが、もう少し広いインプリケーション(含意)があると考えた方がよいのではないでしょうか。

 この言葉は、今後の尖閣諸島にも、台湾にも、朝鮮半島にも、南シナ海情勢にも十分当てはまると思います。すでに米国一強時代は過ぎ去りました。軍事介入によって局面を打開しようと考えても、それを支えるリソース(能力、財源、国民の支持)がなければ諦めざるを得ません。したがって、今後の紛争や危機においては、当事国の意志と米国の支援リソースとのにらみ合いが顕著になると覚悟すべきです。結局、「自分の国は自分で守るべし」というシンプルな教訓、これが第一です。

 第二の教訓は、カブール陥落直後に中国から発せられた「警告」に関連します。17日付の『環球時報』(中国共産党機関紙『人民日報』系列紙)英語版は、「台湾当局がアフガニスタンからくみ取るべき教訓」との社説を掲載。「米国がアフガン政府を見捨てたことに最も衝撃を受けているのは台湾だ」と指摘しました。この意図も明らかです。アフガンから撤退した米国の信頼性をことさら傷つけ、同盟国や友好国との間に疑心暗鬼を起こさせ離反させようとしているのです。我が国はじめ米国の同盟国は、このような中国の意図に引っかからないようにすべきでしょう。

 私たちは、米国の意志と能力の限界をリアルに見据えながら、自助努力を怠らず、かつ、米国への対抗心に燃える中国が喧伝する「東昇西降」(弱体化する米国に代わって中国が覇権を握る)のナラティヴに翻弄されないようにせねばなりません。

(衆議院議員 長島昭久)

台湾海峡は日本防衛の最前線【長島昭久のリアリズム】

2021.08.09 Vol.744

 去る7月29日、衆議院議員会館の国際会議場において、国会最大の超党派議員連盟である「日華議員懇談会」主催の日本・台湾・アメリカ議会議員戦略対話が開催されました。議連の副会長を務める私もフル出席しました。ゲスト・スピーカーとして安倍晋三前総理を迎え、台湾から游錫堃立法院長(国会議長)はじめ超党派議員、アメリカ連邦議会からは駐日大使から転身したウィリアム・ハガティ上院議員はじめ上下両院議員有志がオンラインで参加し、約2時間活発な意見交換が行われました。

 今年に入り、3月の日米外務防衛閣僚会議(通称2+2)を皮切りに4月の日米首脳会談、6月のG7サミットなどで繰り返し「台湾海峡の平和と安定」の重要性が共同声明や合意文書に明記されました。一方、3月には、米議会証言で新旧の米インド太平洋軍総司令官が「台湾有事は大多数が考えているより差し迫っている」との見通しを示すなど、台湾海峡をめぐる緊張が日に日に高まっています。そのような中で、日台米の議会人による戦略対話が行われたことは大変意義深いことです。

 戦略対話は、内外で強硬姿勢を誇示する習近平政権の意図や目的、そしてその及ぼす影響などに議論が集中しました。中国が独自の世界観や価値観に基づく新たなインド太平洋の国際秩序を確立しようとしていることは明らかです。アメリカ主導の対中関与政策が描いていた平和的な台頭の期待は見事に裏切られ、今やより専横的でより覇権的となった中国が、ソフト、ハード、スマート・パワーを駆使して域内の自由や民主主義、法の支配を圧迫している構図が鮮明となっています。

 外交、軍事、経済、技術など領域横断的な中国の攻勢を前に、日台米3か国をはじめ自由民主主義陣営がとり得る選択はたった一つ。私たちが謳歌している自由や民主主義への圧迫を座視することなく、その価値観を守り抜く意志と能力を明確に示すことに他なりません。

 そのせめぎ合い最前線が台湾海峡なのです。その台湾海峡の平和と安定へのコミットメントを繰り返し表明してきた日本は、今度は、言葉だけでなくそれを実現するための具体的な行動を内外に示さねばなりません。そのためには、第一に、中国が過信や誤算に基づいて台湾へ軍事侵攻を試みるようなことのないよう確固とした抑止力を示すことです。第二に重要なのは、抑止が崩れ、台湾海峡で不測の事態が勃発した場合の日台米による共同行動を効果的なものにするための様々な準備です。

 しかし、周知のとおり、日台、米台間に正式な国交はありません。とくに、台湾有事を考えた時、日台間に、日米安全保障条約や米国の台湾関係法のような軍事的な協力を可能にする法的枠組みがない現状は、3か国の共同行動において致命的な障害となるでしょう。そのような現状を放置したままで台湾有事が勃発すれば、台湾に在留する邦人約2万人の生命と財産を守るという国家として最低限の責任を果たすことも覚束ないでしょう。

 私たちに必要なのは、今そこにある危機のリアルを直視し、あらゆる可能性に対応し得る周到な準備を積み重ね、足りないモノやコトを炙り出し手遅れになる前に制度や能力を更新することです。焦眉の急です。                    

(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その四・完)【長島昭久のリアリズム】

2021.07.12 Vol.743

 前回の最後に述べた皇室典範の改正については、私も国政に参画する一人として真剣に取り組む覚悟です。さらにもう一つ大事なことは、「伏見宮」家はつい70年前まで皇位継承資格を持つ皇室の「藩屏」として確かに由緒正しいお血筋には間違いないけれど、その中からどのようにして皇室にふさわしい方をお迎えするか、という問題です。結論から申せば、その際には、皇室典範の規定に従い、三権の長と皇族で構成される皇室会議の議論に委ねるべきでしょう。

 ここで一つ紹介しておきたいのですが、一九四六年に十一宮家が皇籍離脱する際、当時の加藤進宮内府次長が重臣会議の席上、皇籍を離れる旧宮家の方々を前にして、「(今後)万が一にも皇位を継ぐ時が来るかもしれないとのご自覚のもとで、身をお慎みになってご生活いただきたい」と述べたというのです。実際、そのようにお慎みになっている方は、例えば東久邇家や賀陽家などにいらっしゃるようです。

 このような議論をすると、「当人の意向を確認したのか」と言う人がいます。しかし、皇籍取得の制度もできていないのに、いきなり尋ねて、「じゃあ、私がやります」なんて言う方はいないですよね。だからこそ私たちには体制を整備する責務があるのです。いずれにせよ、私たちが培ってきた二千年の歴史を、今後とも引き継いでいく方策は十分にあるのだということを、ぜひこの機会に皆さんと共有したいものです。

 もちろん皇籍を取得されるか否かは、慎重の上にも慎重な意思確認が必要です。この際、傍系としての宮家の役割は極めて重要です。直系が行き詰まった時、皇統を引き継ぐために特別の宮家として「世襲親王家」が創設され、天皇家の歴史はずっと続いてきました。

 たしかに「皇位継承は、男性であろうが女性であろうが、直系であるべき」と言う直系優先の考え方もあります。「男系男子に拘れば、やがて皇統が途絶えてしまう」と。しかし、じつは直系優先のほうが、お妃様にかかる出産のプレッシャーは甚大でしょう。むしろ、三つ四つの傍系が準備されていれば、いずれかの家に男子が生まれる可能性があるわけですから、その意味で直系のお妃様が追い詰められなくて済みます。これこそが、歴史の知恵だと思います。

 率直に申せば、二千年以上も続いてきた歴史と伝統を、私たちの代で安易に放棄してしまうなどということは、まさに畏れ多いと言わねばなりません。百年後に振り返った時、「なんだ、これは正統性がないではないか」という批判に必ずさらされるでしょう。その時にはもはや取返しがつきません。皇統の正統性は破壊され、日本が日本でなくなってしまうのです。

 歴史の関頭に立つ私たちには、国家の大本たる皇統二千年余の歴史を踏まえた謙虚な姿勢こそが求められると考えます。

(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その三)【長島昭久のリアリズム】

2021.06.14 Vol.742

 

 前回までに、我が国古来2000年にわたる皇位継承の歴史的大原則である血統原理に基づく「男系継承」の尊さと、それを貫徹するために幾度もの危機を乗り越える過程で編み出された「直系を補う傍系継承」という知恵について述べさせていただきました。その上で、今日直面する皇位継承の危機を克服するために、約600年遡り「伏見宮」系のご子孫を皇室にお迎えすることを提唱させていただきました。

 ただし、GHQ指令に基づくものとはいえ70年以上も前に皇籍離脱した方々のご子孫を、いきなり皇室に迎えるとなると様々な議論が出てくることでしょう。そこで、成人された方々をいきなり皇籍復帰させるのではなく、例えば、旧宮家に連なる十歳前後の男児の方を現皇室に養子としてお迎えし、その宮家を継承していただくということも考えられるのではないでしょうか。幸い、伏見宮系の旧宮家には、五歳とか七歳とかのお子さんも複数いらっしゃいます。こういう方たちに皇室に入っていただいて、帝王学を学んでいただければ、将来、立派な皇位継承資格者になられると考えます。

 そもそも宮家や親王家というのは、「皇統の藩屏」といって男系男子の血筋を保存する〝フェールセーフ〟の仕組みです。もし天皇にお子様が生まれなかった場合、男系皇統を守るために直系に代わって「傍系」が皇位を継承する。こうして万世一系を貫いてきたのが日本の歴史なのです。

 歴史を紐解けば、「傍系継承」で男系継承を維持した先例が少なくとも10例あります。最初が第22代清寧天皇から6親等を隔て祖父の兄の孫である顕宗天皇への継承です。2例目が、有名な第25代武烈天皇から継体天皇への継承です。当時の大連(最高実力者)大伴金村の叡慮によって、武烈天皇から見て10親等を隔てた高祖父の弟の玄孫たる男大迹王(おおどのみこ)を越前に尋ね求めて継体天皇として即位せしめたのです。最近では、第118代後桃園天皇から光格天皇への継承が、7親等を隔てた傍系継承となります。

 今日、この「傍系」の役割を復活させるためには、皇室典範の改正をしなければなりません。一つは、典範第九条です。同条が禁ずる「皇族の養子」を条件付きで緩和する必要があります。ところで、明治の典範制定時、その中心的役割を担った井上毅は、皇族内の養子は「皇統の紊乱につながる」と考え、これを禁じました(旧典範第四十二条)。しかし、宮家間の養子を禁ずることによって、近代以降、男系男子を当主とする宮家が次々に廃絶に追い込まれてしまいました。紊乱を防ごうとするあまり、皇統の先細りを招いてしまったのでは、それこそ本末転倒です。

 もう一つは、典範十五条の改正です。旧宮家といっても、その子孫の方々には皇籍に復帰するのではなく、新たに取得していただかなければなりません。つまり皇籍を取得する「特例」を設ける必要があります。(つづく)(衆議院議員 長島昭久)

改めて皇位継承問題を考える(その二)【長島昭久のリアリズム】

2021.05.10 Vol.741

 

 歴史上、たしかに10代8方の女性天皇(女帝)がおられます。しかし、歴史的経緯を子細に見てみれば、これらはあくまで例外の「中継ぎ」であることがわかります。しかも、すべて男系であり、即位後に婿も取られず、子も産んでおられません。すなわち、皇位は、男系継承が古来例外なく維持されてきたのであって、女系に道を開くようなことは厳格かつ慎重に避けられてきました。これが揺るぎない皇統の大原則なのです。

 なぜ女系が許されないのか。それは至極簡単な理屈です。女系というのは父が皇統に属さない天皇のことで、これを認めれば別の王朝(易姓革命)となってしまうからです。我が国は建国以来、世界で唯一の単一王朝(万世一系)であって、まさにそのことが“ありがたい”のです。つまり、皇位は血統こそが正統性の源ですから、神話の世界も含めて二千年の時を遡って神武天皇に繋がっていることの“ありがたみ”というものが、天皇の権威の大本になっているのだと私は思います。

 しかし、この大原則が、ただ“ありがたい”ものだと受け身で、何らの努力もなく自然に任せて貫かれてきたわけではありません。皇位継承の歴史を紐解けば、過去に7度、男系断絶(すなわち、皇統断絶)の危機があったといいます。そのつど、先人たちが苦心惨憺し危機を乗り越えてきました。直系の皇子がおられない場合は、傍系を何代にもわたり遡ってでも男系男子を見つけ出し、皇位を引き継いできたのです。200年も遡り、越前にいらっしゃった(男系の)王を探し出して皇位に就いていただいたのが継体天皇ですが、これなどがまさにその典型例です。こうした苦労に苦心を重ねながら、今日に至るまで、万世一系という血統原理を貫いてきたのが、我が国の天皇の歴史です。

 しかし、「守れればいいけれど、男子がお生まれでないのだから、女帝でも女系でも仕方がないではないか」というのが、女性宮家論や、女系天皇容認論です。

 果たして、本当に「仕方がない」のでしょうか。

 じつは、皇位継承資格をお持ちの男系男子は現にいらっしゃるのです。正確には、74年前までいらっしゃいました。それは、戦後、GHQの命令によって皇籍を離脱せざるを得なかった、「伏見宮」系の11家51人の方々です。

 確かに、今の皇室から見て600年前に分かれた伏見宮系の方々では血縁が遠すぎるのではないか、皇籍離脱してもう70年余も一般人として生活しているのだから国民の理解は得られないのではないか、などという声はあります。

 しかし、敢えて私が申し上げたいのは、600年も遡れるお血筋が存在することこそが“ありがたい”のではないか、ということなのです。それが、男系の血統を受け継ぎ、しかも74年前まで皇位継承の資格を持っていた旧宮家の方々なのです。(つづく)

(衆議院議員 長島昭久)

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