演劇へのたゆまぬ探究心は世代も作風も越える T Factory『ドラマ・ドクター』

2015.10.11 Vol.

月刊「根本宗子」再び第7号『今、出来る、精一杯。』演劇へのたゆまぬ探究心は世代も作風も越える 

2015.10.11 Vol.652

 根本宗子は今年は作・演出家としては5月に本公演、6月にミュージシャンの大森靖子とのユニットとなる『ねもしゅーせいこ』、合間を縫ってのバー公演、女優としても『墓場、女子高生』といった話題作の舞台に立つなど、演劇界をにぎわせてきた。  演劇以外でも映画、ドラマへの脚本提供、テレビ朝日のウェブ番組にMCとしてレギュラー出演するなど多忙を極めた。  その活動の根底にあるのは「私にしかできない、誰にもできない面白いものを作りたい」という飽くなき探求心。  今回は1週間ずつ2作品を連続上演するという。 「再び第7号」は2013年に駅前劇場に初進出した時の作品を再演。11月1日からは第11号『超、今、出来る、精一杯。』を同所で上演。こちらは続編でもなんでもなく全くの新作。  なんとも贅沢かつ無謀な試みにも思えるが、かつての自分と今の自分を戦わせてみようということで、こういう形になった。  この『今、出来る、精一杯。』という言葉はまさに今の根本宗子の心境を表したもの。果たしてどんな“精一杯”を見せてくれるのか。

見る者をぐいぐいと作品に引きずり込ませる世界観

2015.09.27 Vol.

普段とはちょっと違ったテイスト『語る室』カタルシツ

2015.09.13 Vol.650
 カタルシツは劇団イキウメの本公演とは一味違ったテイストの作品を上演する場、いわば“別館”として2013年にスタートした企画。  第1回公演ではドストエフスキーの『地下室の手記』を、安井順平と小野ゆり子の二人芝居で上演。今年2月の第2回公演では同作を今度は安井が一人芝居で演じた。ちなみに安井がその第1回公演で読売演劇大賞の優秀男優賞を受賞するなど、個人としても作品としても高い評価を得た。  今回は田舎町で起こった失踪事件をテーマとした新作SFミステリー。  人気のない山道で一人の幼稚園児と送迎バスの運転手が姿を消す。5年経っても行方は知れないまま。消えた子供の母、その弟の警察官、バス運転手の兄。そしてこの3人が出会った、帰ることのできない未来人、奇跡を信じて嘘をつき続ける霊媒師といったさまざまな人々を通じて、徐々に事件の全貌が見えてくるのだった。  取り上げる題材自体は一見、普段のイキウメでやるようなSFやオカルトっぽいものではあるが、より語り口や物語性に重点を置いた作品となっている。

見逃したくない名作『少女仮面』新宿梁山泊

2015.09.12 Vol.650
 旗揚げ以来、テント、劇場とさまざまな空間で国内外を問わず公演を重ねる新宿梁山泊。  主宰で演出も務める金守珍が唐十郎の状況劇場で役者として活躍していたことから唐作品との親和性が高く、唐作品も多く上演してきた。  そんな彼らが今回手がけるのが『少女仮面』。1969年に初演された唐の代表作ということは言うに及ばず、当時、主人公の春日野を演じた李麗仙にとっても自身を語る上で欠かせない代表作だ。  春日野はかつての宝塚の大スター。その隠れ家でもある地下の喫茶店「肉体」に宝塚のスターを目指す少女・カイが老婆と一緒に春日野を訪ねやってくる。春日野に見初められ演技指導を受けるカイ。そのうちに戦争時の記憶がよみがえった春日野は徐々に正気を失っていく…。  実在したスターをモチーフに戦後、そして老いを唐独特の切り口で描いた作品。  若いファンにとっては李はテレビで見かけることの多い女優かもしれないが、舞台上の李はテレビで見るそれとは明らかに違う存在感を見せつける。せっかくだから見ておいてほしい作品。

3.11から4年。忘れちゃダメだよね 舞台 風煉ダンス『泥リア』

2015.08.23 Vol.649
 風煉ダンスは1990年に旗揚げした劇団。もう今年で25年になるのだが、開店休業中の時期もあり、決して作品数は多くはない。しかし生バンドによる劇伴やアーティスティックな舞台セット、スケールの大きい野外劇といったインパクトの大きい作品で根強いファンを持つ。そしてその作品世界は常に時代に対する批評性にあふれ、見る者に“気づき”を与えてくれる。  そんな彼らが2011年5月に発表した『泥リア』は、その3月に起きた東日本大震災に真正面に向き合った作品だった。  リア王をモチーフとした同作は「娘たちに疎まれた痴呆症の老人が王と道化に分裂して魂の荒野をさまよう」といったお話。老人がさまようのは震災前後と過去と未来、死者と生者の狭間。ふらふらとさまよう中で、原発や震災を想起させるキャラクターに遭遇し、そこで起こるさまざま出来事に観客の心は大きく揺さぶられた。  この作品が9月19日から井の頭恩賜公園 西園(ジブリ美術館奥の広場)で再演される。  作・演出の林周一は「もともと再演してほしいという声が多かった。野外でという声も。でも僕たちは別にそんなに再演にはこだわっていなかった。ただ、主人公の老人が劇場の中ではなく、外をリアルにふらふら歩く姿を見てみたいという初動的な衝動に駆られた。いざやるとなったら3年でもなく5年でもなく、4年という時間がしっくりきた。やるなら今かなって。4年間にいろいろなことがあったけど、あれだけ衝撃を受けたはずなのに、自分たちの中でも記憶が薄れている。でもいまだに2万人近い人が仮設住宅にいるという状況は変わっていない。しかも原発はますますひどいことになり、住めない場所はそのままになっている。“これはなんだ?”“4年経って自分たちはどう考えているのか?”ということを考えた。だから再演という気持ちではない。むしろアンサーソング?という感じ」と話す。  再演にあたっては「震災を忘却している人に“ちゃんと思い出してほしい”という意味もある。でも震災は過去ではなく現在進行形。過去の時間を見せるというより、現実に引き戻し、まだこれから続く時間に思いを馳せたい。自分もみんなも」という。  公演の詳細は風煉ダンスHP(http://furen-dance.info/)で。

[STAGE]よみがえる名作を2選

2015.08.23 Vol.649
日本の30代『ジャガーの眼2008』  2012年に上演された松尾スズキ作・演出の『ふくすけ』に出演した役者たちが集まって、昨年、この「日本の30代」を結成した。  10年を超えるキャリアを重ねるなか、所属劇団でも重要なポジションを占めるようになり、それに伴い外部への客演も増えてきた。しゃにむに突っ走ってきた20代を過ぎ、役者としていろいろなことを考える余裕が出てきた。そして「これまでの作品からはみんなが想像できないような、もっと違った芝居がしたい」と思った者たちが自然に集まり、できたユニットだ。  もともと松尾スズキのテイストに近い彼らではあったが、そんな思いもあったため、旗揚げ公演では文学座の鵜山仁に演出を依頼し、シェイクスピアの『十二夜』を上演。普段は見せない顔で、よそではあまり見ない十二夜を作り上げた。  今回は木野花を演出に迎え、唐十郎の『ジャガーの眼2008』を上演する。“唐十郎”という絶対的な個性と“テント芝居”という幻想的なキーワードがついて回るこの作品は古くからのファンも多い。唐以外が上演するときも、割と近い関係の人やテイストを持つ人が手がけてきた。世代もテイストも違う彼らは果たしてどんな形のものを提示してくれるのだろうか…。 【日時】8月28日(金)〜9月7日(月)(開演は28・3日19時、29・7日17時、30・1・4・6日14時、2・5日14時/19時。31日休演。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)【会場】駅前劇場(下北沢)【料金】自由席 前売3300円、当日3500円/指定席 前売3800円、当日4000円/高校生 前売1800円、当日2000円(日本の30代webのみ取扱い・当日身分証確認)【問い合わせ】リトル・ジャイアンツ(TEL:090-8045-2079=平日12〜19時[HP]http://www.nihonno30.com/)【作】唐十郎【演出】木野 花【出演】井内ミワク、井本洋平、延増静美、少路勇介、鈴真紀史、竹口龍茶、羽鳥名美子、平岩紙、町田水城、富川一人

三上博史、新たなる代表作の予感『タンゴ・冬の終わりに』パルコ・プロデュース

2015.08.09 Vol.648
 清水邦夫書き下ろし、蜷川幸雄演出で1984年にパルコ劇場で初演された『タンゴ・冬の終わりに』は86年に同じキャストで再演され、91年にはロンドン・ウェストエンドでアラン・リックマン主演で上演された。当時、日本の作品が海外でその地の俳優と日本のスタッフによって上演されるのはまれなことで大きな話題を呼んだ。  有名な舞台俳優だった清村盛は3年前、突然引退を宣言し、妻・ぎんとともに日本海に面した実家の古びた映画館に引きこもった生活を送っている。捨てたはずの華やかな俳優人生を忘れられない盛の精神状態は日々悪化していた。そこにある日、盛と恋愛関係にあったらしい若く美しい女優、名和水尾が夫・連とともに訪れる。  主役の清村盛を演じるのは三上博史。  三上、パルコといって頭に浮かぶのは、やはり『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』なのだが、実はもう10年も前の話。『ヘドウィグ——』に代わる三上の代表作となりそうな予感。  演出は、最近では積極的に舞台に進出している行定勲。

“今”を切り取った作品『ホーボーズ・ソング HOBO’S SONG 〜スナフキンの手紙Neo〜』虚構の劇団

2015.08.09 Vol.648
 虚構の劇団は作家・演出家の鴻上尚史が若い俳優たちと自らの演劇観を共有しながら作品を作り上げるために結成した劇団。と同時に、大規模なプロデュース公演ではできない“今”を切り取った作品を作るために作った劇団だ。  劇団としては約3年ぶりとなる新作。サブタイトルにある『スナフキンの手紙』は1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した鴻上の代表作。  同作では1960年代に連合赤軍による革命が成功したという設定の日本を舞台に、絶対に語られない「本当の言葉」をきっかけに政府とさまざまな集団が抗争を繰り広げていた。  ホーボーとは居場所をなくし、居場所を追われ、居場所を捨てた人たち。ホーボーズ・ソングとはそんな人たちを歌う歌、もしくはそんな人たちが歌う歌のこと。そして今回のチラシには内戦、捕虜、尋問、監視カメラといった言葉が並ぶ。  かねてから劇作以外の著作でも“空気”について語ることの多い鴻上が最近の日本に漂う空気を敏感に感じ取り、今回この作品が生まれたのでは…と思わせる。

演出の妙を感じさせる2作品

2015.07.26 Vol.647
オフィスコットーネプロデュース『人民の敵』 『人民の敵』は1882年にイプセンによって描かれ、日本ではそれほど上演されていない作品。  イプセンの作品は日本では『ペール・ギュント』『人形の家』といったところがなじみ深いのだが、現状に対して批判的な目を持ち、疑問を呈するような種類のものが多く、観客に常にさまざまな波紋を投げかけてくる。  この『人民の敵』はノルウェー南部のとある温泉町が舞台。湯治場の専門医が観光の目玉である温泉が廃液で汚染されていることを発見する。給水パイプの引き直し工事を進言するが市長は温泉委員会の委員長を兼任しているため公共の経済を優先し、その訴えを聞き入れようとしない。ついに自己の利益と野心に燃えるあらゆる階層の人々を巻き込んで、町をあげての集会が始まる、というお話。  作品では「絶対多数」が本当の正義なのか?といったことが問われてくる。なにやら昨今の日本の政治状況を映し出しているようで興味深いところだ。  今回は演出に2014年の読売演劇大賞・最優秀演出家賞などを受賞し、いま最も注目を集めている演出家といっても過言ではない森新太郎を起用。サスペンスあり、笑いありのこのエンターテインメント作品をどう料理してくれるのか。
【日時】8月21日(金)〜9月2日(水)(開演は月金19時、火13時/19時、水木14時、土12時/18時、日は23日13時・30日14時。25日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】吉祥寺シアター(吉祥寺)【料金】全指定席 一般前売・当日4000円/お得チケット 前売・当日3500円(21、24、26、27、28日の5ステージ限定)/シードチケット(25歳以下)前売・当日共3000円(平日公演のみ。枚数限定。オフィスコットーネのみ取扱。受付にて年齢確認有り)【問い合わせ】オフィス コットーネ(TEL:03-3411-4081[HP]http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/)【作】ヘンリック・イプセン【翻訳】原千代海【構成・上演台本】フジノサツコ【演出】森新太郎【プロデューサー】綿貫凜【出演】瀬川亮、山本亨、松永玲子、有薗芳記、加治将樹、青山勝、塩野谷正幸、若松武史、宮島健 他

会話劇の妙を楽しめる作品 ブルドッキングヘッドロック結成15周年記念公演 vol.26『1995』

2015.07.20 Vol.646
 ナイロン100℃の役者でもある喜安浩平が自ら作・演出を手がける劇団、ブルドッキングヘッドロックを旗揚げしたのが2000年。近年、喜安はナイロン100℃での役者としての活動はもとより、映画『桐島、部活やめるってよ』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞するなど、脚本家としての評価も高まっている。  その作品は「グロテクスな日常に、ささやかなおかしみを」をモットーに、現代の人間が抱えるさまざまな息苦しさを描きつつも、それゆえに発生してしまう、ささやかな“おかしみ”に着目したもの。作品によって軽めのタッチからやや息苦しい空気感まで変幻自在なのだが、共通するのは緻密な会話劇であるということ。  今回は1995年という時代をモチーフとした作品。この年は阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、女子高生文化の萌芽、『エヴァンゲリオン』の放送開始など、社会的にも文化的にも特徴のある時代。そんな中でも彼らが注目したのは「アイドル」。それも「アイドル氷河期」という現象。  表舞台に表れることのなかったアイドルグループの少女たち、それに無償の愛を注ぎ続けた男、かつてアイドルだった女を軸に1995年と2015年を行き来しながら壮大な偏愛の物語が展開される。

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