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食わず嫌いは損!!『三人吉三』木ノ下歌舞伎

2015.06.07 Vol.644

 歴史的な文脈を踏まえつつ、自らの解釈で歌舞伎を現代風にアレンジし、上演する木ノ下歌舞伎。

 今回上演する『三人吉三』は昨年秋、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」で初演された話題作。京都での2回だけの上演とあって、再演を望む声も多かった作品。

『三人吉三』は黙阿弥の代表作。黙阿弥の死後、一部をカットしたり、見せ場が豊富な部分のみが上演されることが多かったのだが、木ノ下歌舞伎による『三人吉三』は現行の歌舞伎では上演されない『廓』を舞台にした物語や、初演以来約150年ぶりとなる『地獄の場』の上演を含むものとなっている。

 歌舞伎では3人の吉三郎に視点が集まる作品となっているのだが、そのへんを復活させることで、吉三郎たちと彼らを取り巻くさまざまな人たちを描く群像劇としての面白さを引き出し、全く新しい『三人吉三』を作り上げた。

 そんなわけで本作は全3幕、途中休憩を含み上演時間約5時間の大作となっているのだが、そうめったに見られるものではないので、この機会は逃したくないところだ。

動物電気『ふっくら!人間関係』

2015.05.23 Vol.643

 とことん「おもしろ」を追求する動物電気の2年ぶりの新作公演。

 2013年に20周年を迎えた彼ら。主宰の政岡をはじめ、オリジナルメンバーも多く、文字通り阿吽の呼吸で他には真似のできない、絶妙の笑いの空間を作り出す。そのポリシーは政岡曰く「“笑わせて”いるのでなく“笑われて”いるのでもなく、お客さまと一緒に“笑っている”」というもの。今回もその言葉通りのバカバカしくて、ちょっとほっこりする作品に仕上がっている。

 物語の舞台は日本のどこか北国の海沿いの町にある、船のドックを改修して作られた食堂。地元のおじさんたちは日々そこにたむろして、たまに青春時代を思い出したりと何でもない日常を送っていた。そんな町に都会からおじさんたちの思春期のマドンナが若いころの自分にそっくりの娘を一人連れて帰ってくる。ざわめくおじさんたちは女房相手には忘れていた男子の恥じらい、紳士のたしなみを思い出していく。そんな時、そのマドンナも参加する町内会の旅行という絶好のチャンスがおじさんたちにやってくるのだが…。

 私生活でモヤモヤしてたり、ギスギスした人間関係にイラっとしているような人は明日への活力を、最近「笑ってないな…」という人はひたすら爆笑をもらえることは請け合い。

東出昌大の初舞台が幕開け!若きチェリストを熱演

2015.05.12 Vol.642
 東出昌大が初めて舞台に挑む『夜想曲集』が11日、天王洲・銀河劇場で初日を迎えた。『日の名残り』『わたしを離さないで』などのカズオ・イシグロの短編集を舞台化したもので、東出は若きチェリストを好演している。

 舞台は、3つの短編を1つの物語にしたもの。かつてはスポットライトと喝采を浴びた老歌手と華やかな場所にい続けようと努力する美しい夫人、売れないサックスプレイヤー、傷つけられることを恐れる女性...。それぞれの物語が静かに綴られる。東出は本紙のインタビューで、「とても静かな芝居で、いろんなことを明言しないんです。誰かに対する想いだとか」と話していた通り、2時間弱の舞台は冒頭からラストまでセレナーデのように優しく展開。そのなかにも笑いが起きるシーンもあり、見ているうちに自身も物語の一部になっていくような感覚が得られる。

 東出は、あこがれの人との偶然の出会いに興奮したり、不思議な女性との出会うことによって演奏について考えたりと、他キャストと比べると比較的感情の起伏が多い役どころ。舞台の大半で顔を包帯でぐるぐる巻きにしている安田成美を始め、近藤芳正らの演技にも引き込まれる。

 大きな波がある舞台ではないが、さざ波のように心が波打つ作品。24日まで同所で。

根本宗子、大忙し!! 2カ月連続で新作2作品を上演

2015.04.26 Vol.641

 劇作家、演出家、女優といったジャンルを超えアグレッシブに活躍中の根本宗子の作・演出・出演の舞台が立て続けに2本上演される。月刊「根本宗子」第10回公演『もっと超越したところへ。』(5月9日〜、下北沢・ザ・スズナリ)と大森靖子×根本宗子『夏果て幸せの果て』(6月3日〜、池袋・東京芸術劇場シアターイースト)がそれ。

『もっと――』は女子4人のさまざまな恋愛模様をラブコメ仕立てで描いた作品。

「去年までダメな男の人を描いて来たんですが、最近はしっかり自分の非も見られるようになったのと、昔より小さな幸せを守ることが大事に思えて来て。だからいつもなら今回の題材、女子が不幸な終わり方をしてたけど、今回はそれをどれだけ幸せに見せられるか試みてます」

『夏果て――』はミュージシャンの大森靖子の『夏果て』という曲を題材とした作品。大森が出演することでも話題を呼んでいる。もともと根本が劇中で大森の曲を使っていたのがきっかけでこのコラボが実現。

「大森さんの曲はよく聴いていて、この『夏果て』という曲も好きだったんです。5分ほどの中でものすごくちゃんとしたストーリーがあって、今回、この曲を演劇にしてみたいと思いました。大森さんの役はほかの人より自由度が高く、毎日違うものが見られると思うので、ライブ感覚でも見ていただければと思います」

 2本続けて見ると根本宗子の何が分かる!?と尋ねるとしばらくの沈黙の末「………今(笑)」という答えが返ってきた。自らの作品や自らのことを固定されたイメージでとらえられることが「嫌い」という根本。実際、2008年に劇団を立ち上げて以降、短期間のうちに急激な成長曲線を描いてきただけに、過去の作品のイメージのまま今回の作品を見たら戸惑う人もいるかもしれない。

「今回は私が思う幸せを別視点で描いている2作品です。同じ題材で全く違う見せ方の作品をたった2週間の間隔で上演するということはなかなかないので、ドキュメンタリー的な感じで見てもらっても(笑)」とのこと。なるほど、そういう楽しみ方もあり。公演の詳細はこちらから(http://ameblo.jp/buroguha-nikkande/)(www.oomorinemoto.jp

『月刊「根本宗子」』こんなタイトルつけられたら見に行かないわけにはいかない

2014.08.02 Vol.623

 今年最初の発行号で「2014年、気になる人」としてインタビューした根本宗子。劇団『月刊「根本宗子」』主宰、作家・演出家、そして女優として案の定、2014年は大忙しの日々。そんな中、8月22日から月刊「根本宗子」第9.5号『私の嫌いな女の名前、全部貴方に教えてあげる。』を上演する。

「ダメな恋愛ものは1月公演で一区切りのつもりだったんですが、どうしてもやりたい題材ができてしまって、今回やることにしました。ごくごく私の私情をはさんだ理由なんですが(笑)、何かがありまして…それは秘密です(笑)」

 どういったお話?

「アイドルを取り巻く女たちの話です。途中から何を見せられているんだろうという時間が、多分あります。脚本的には劇的な物語はなにも起こりません。説明ゼリフを排除して、くだらない会話だけで人柄を見せることを前半、1時間半ほどやってみようと思っています」

 アイドル役でD-BOYSの土屋シオンが出演する。

「顔がアイドルっぽくて可愛いいというのがこの役の絶対条件だったんで、そこはこだわりました。本物のアイドルをアイドルの役に据えたことでだいぶリアリティーが増しました」

 幕が上がってのお楽しみなのだが、ちょっと変わった設定とタイトルに隠された秘密がある。

「いろんなお芝居を見てきて、最近みんな同じに見えて、見飽きてしまっていたんです。それで“自分は違うんだ”と思ってやってきたんですが、それもやり飽きてしまい、行き着くところに行き着いてしまったのが今回の作品なんです」

 相変わらずのチャレンジャーだ。

ありそうでなさそう、現実と架空の世界を行ったり来たり

2014.02.03 Vol.610

 ちょっと変わった設定の中で繰り広げられる絶妙な会話劇が鉄板のMONO。
 その変わった設定というのも、刑務所の中に突然に領土問題が発生したり、窃盗団の飛行機の中の話だったり。こう聞くと突飛な設定のようにもみえるが、幕が上がって芝居が始まると、俳優たちの佇まいがそう思わせるのか、なんとなくありそうな設定に思えてしまうから不思議だ。
 今回の舞台はビルの天井裏。そこで「のぞき」をして過ごす人々のお話。
 その天井裏には他の社員が知らない部屋がある。会社をリストラされたと思われている数名の社員が天井裏から社内の様子をのぞいていた。彼らは社長直属の「諜報課」だった。
 登場人物たちはのぞくだけで、決してメーンストリームには加われない人たち。
 この構造はまさに現代のネット社会を模したもので、外野から罵詈雑言を浴びせる人たちの気持ち良さと惨めさが入り混じった不思議な感覚が描かれる。
 そう言われると見終わった後に自分がどんな気分になるのかも、ちょっと気になる!?

ありそうでなさそう、現実と架空の世界を行ったり来たり

2014.02.03 Vol.610

「岩松了シリーズ」や松尾スズキ、倉持裕といった演劇界を代表するような作・演出家との一連の作品など、さまざまなプロデュース公演を手がけるM&Oplaysが今年から明日の演劇界を担う若い才能を育てるシリーズを開催。その第一弾となる。
 今回は第56回岸田國士戯曲賞を受賞したノゾエ征爾を作・演出に起用。主演に大人計画の荒川良々を迎える。
 話はある男の人生。男は「たいくん」という舞台や映像で活躍する有名俳優。演じるのは荒川。たいくんが“今現在”を基準にちょっと前のことやちょっと先のこと、かなり過去のことやかなり未来のことを語り始める。たいくんの人生には印象深い7人の男たちがいて、そんな男たちとのエピソードが非情でありながらたっぷりのユーモアを混じえた形で綴られる。
 たいくん≒荒川?といった雰囲気を漂わせる部分もあり、フィクションとノンフィクションを行ったり来たりする。この絶妙なふわふわ感はノゾエならでは。
 赤堀雅秋、小野寺修二といった個性的な俳優たちが7人の男たちを演じるのも興味深い。

「分かるっ!」女のショートコメディーが舞台で復活『祝女〜shukujo〜』

2013.11.10 Vol.604

 女性の本音やリアルな姿を描き出して人気を博したコメディー番組『祝女〜shukujo〜』が、舞台になって来年2月にカムバックする。

『祝女〜shukujo〜』は、2010年から2012年にわたってNHK総合で放送されたもの。番組では、仕事や休日、アフターファイブなど、日常の何気ないシーンを舞台としたショートストーリーをオムニバス形式でみせた。友達、主婦仲間との関係、職場でのやりとり、恋のライバルなど、さまざまな人間関係のなかで起こる出来事を、客観的に描いて、「ある!ある!」「分かるー!」と女性たちには絶賛され、男性たちを苦笑いさせた。舞台では、番組よりもパワーアップして、女のココロをより生々しくライブ感たっぷりに見せてくれそうだ。

 キャストは、番組のレギュラー陣である友近、YOU、市川実和子。さらに、人気爆発中の大久保佳代子(オアシズ)、入江雅人らも加わる。また、友近と大久保はWキャストで、それぞれの公演でストーリーも変わる。

 舞台版には、テレビ版でもおなじみのシリーズのほか新作も含まれる予定だという。

 年明けもっとも話題の公演のひとつとなりそうな『祝女〜shukujo〜』。チケットは現在、ローチケで発売中。クリスマスのプレゼントとしてもオススメだ。

演出の妙を感じさせる作品 世田谷パブリックシアタープロデュース『オセロ』

2013.05.27 Vol.592

 常に独創的な作品を発表する世田谷パブリックシアターが、またもや新たなる挑戦に乗り出す。

 今回の題材はシェイクスピア四大悲劇のひとつとして知られる『オセロ』。そして白井晃が『オセロ』を現代の視線で再構成・演出する。白井がシェイクスピアを手掛けるのは遊 機械/全自動シアター時代以来となるから、それだけでもレアといえばレアなのだが、今回はなにやら演出がかなり特殊なことになっているという。

 俳優は単にその役を演じるだけではなく、“素の俳優”と“俳優が演じている役”という二重構造の中で演じ、心情をシンクロさせていく。演出家は本来の意味の役割を越え俳優に関わろうとし、俳優は時として素の心情で共演者に嫉妬の目を向ける…。

 例えば舞台に立つ仲村トオルは、その時「オセロ」なのか、「オセロを演じる俳優」なのか、それとも「素の仲村トオル」なのか…といった案配。

 二重構造というと劇中劇を思い浮かべるかもしれないが、今回の場合は異次元というか異空間といった趣。劇場構造をも駆使した壮大なる挑戦ともいえる作品。

岩松了プロデュース「カスケード~やがて時がくれば~」

2011.03.07 Vol.500

岩松了が若手俳優たちとワークショップから作り上げる

 作・演出家・岩松了が今年早くも2作目の新作書き下ろし。

 1〜2月にかけ上演した『国民傘』ではオーディションで選ばれた俳優たちと「戦争」をテーマとするオムニバス形式の実験的な作品を作り上げた岩松。今回は昨今、舞台や映像で頭角を現しつつある若手俳優たちとのワークショップを経て、ひとつの作品に取り組むという。

 物語は「かもめ」の上演を控えた若い役者たちを中心に繰り広げられる。とある出来事をきっかけに彼らのバランスがくずれはじめ、さまざまな問題が浮き彫りになる。彼らを翻弄するのはチェーホフ? 世間の大人たち? それとも演出家? 涙を笑いで洗う青春群像劇。

 葛川思潮社の『浮標』での好演も記憶に新しい安藤聖、昨年の『シダの群れ』で岩松作品を経験済みの�「ジョンミョンら、これから気になる若手俳優たちがしのぎを削る舞台となる。

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