加藤勝信 内閣官房長官【2021年の新たなキーワードとは。SDGs達成に向けた日本の成長戦略】

 新型コロナウイルスの感染拡大でかつてないパラダイムシフトが起きた2020年。世界全体で大きな社会変革が求められる中、注目を集めるのが、持続可能な開発目標SDGsだ。厚生労働大臣時代からコロナ対策の最前線に立ち、2020年9月発足の菅内閣で官房長官に就任した加藤勝信氏に、コロナ時代の社会の変容および今後の展望について聞いた。(聞き手・一木広治)
加藤勝信 内閣官房長官(撮影・蔦野裕)

――2020年以降の日本のテーマを開発する『BEYOND 2020 NEXT FORUM』の活動から、今回『SDGsピースコミュニケーションプロジェクト』を立ち上げました。現在注目が高まっているSDGsの日本の取り組みについてお聞かせください。

キーワードは「グリーン」と「デジタル化」



 SDGsは持続可能な社会のために17のゴールを設定して進めているものですが、日本ではSDGs推進本部があり、私は副本部長を務めております。大きな柱は「カーボンニュートラル」です。菅政権は2050年までに温暖化ガス排出ゼロという目標を掲げています。これまでの議論では、温暖化への対応は費用やエネルギー面でさまざまな課題があるため、成長への制約になるのではないかとの意見がありました。しかし、世界全体で地球温暖化を防ぐという動きの中で、日本としても産業構造や経済社会の変革を通じて積極的に取り組むことが、むしろ成長のエンジンになっていくという位置付けで、総合経済対策を打ち出しています。

 私が議長を務める政府の成長戦略会議でも長期的なプロジェクトとして取り上げました。たとえば水素エネルギーなどのさまざまなイノベーションを作り出していくこと、また同時に実装化のための規制との調整も必要になってくることから、全体として目標を設定することが大事です。そして、こうした産業部門だけが取り扱うのではなく、家計部門も含めて取り組むことで、初めてゴールが見えてくるものだと思っております。昨年12月には、若い方にも参加いただき、脱炭素社会の実現に向けた「2050年カーボンニュートラル・全国フォーラム」を開催しました。その場で出席者の方から「一人の100歩より100人の一歩が世界を変える」とのコメントをいただき、皆で取り組む必要性について指摘がありました。政府としても、このように、いろいろな方がメンバーとなって機運を高めることも考えております。一木さんからお話のあった「SDGsピースコミュニケーション」は、まさに若い世代の方々に主体的に取り組んでいただこうとする素晴らしい取り組みだと思っております。

――来年に控えている東京五輪・パラリンピックをどのような大会にしたいか教えてください。

 若い方にとっては初めての東京五輪・パラリンピックで、私にとっては2度目となります。1964年の東京大会はアジア初であり、戦後から日本が復興した証という位置付けもあって、当時の皆さんは大会を契機として自らを鼓舞して、日本の経済成長につながっていったと思います。2020年大会は1年延期されておりますが、ひとつは東日本大震災から10年の節目でもあります。復興がポイントで、その姿を世界に発信する機会です。もうひとつは、新型コロナウイルス感染症の中にあっても成功裡に終わったということが、コロナ禍を乗り越えた証につながっていくのではないかと思っております。

 また、この大会を契機に心豊かで持続可能な社会を日本が率先して世界に発信し、その思いを次の世代につなげていく。こうした意味において、510自治体のホストタウンで地域の方や相手国の選手の皆さんとの文化やスポーツを通した交流が期待されております。そして、ユニバーサルデザインや心のバリアフリーによる共生社会の実現に向けた取り組みがなされることで、成熟社会の中で後世に残るレガシーを作っていきたいと考えております。そのために、まずは、感染対策をしっかりすることが大事になってきます。関係者の皆さんと検討を進めながら、大会を成功に導くためにご努力いただいております。

――五輪パラリンピック後の日本を活性化していくテーマについても考えをお聞かせください。

 将来に向けての大きな流れとしては、「グリーン」と「デジタル化」だと思っております。グリーンについては、2050年までのカーボンニュートラルを目指すために、電動車の普及、水素の利用など、革新的な技術を活用・実装化して、環境に優しいグリーン社会の実現を目指すことが柱になります。デジタル化というのは、すでにいろいろなところで言われておりますが、ポイントは国民の皆さんの生活の利便性を上げていくことです。さらに、社会全体や役所、企業の効率化を通じて生産性を向上させること、賃金の上昇、経済の成長といった流れを作っていきたいと思っております。それに加えて今回、感染症により人と接触することに課題が出てくる中で、非接触のサービス、たとえばロボット技術やICT技術を使うことによって、感染症に強い社会が出来上がってきます。顔認証などの次の時代に向けたサービスが導入されることで、国民の皆さんにとってもより便利な行政サービスの提供につながっていくと思いますし、2025年大阪万博にもつなげていきたいと考えております。

――クールジャパン政策なども、コロナによってシフトチェンジがございますね。

 そうですね。なかなかイベントがしにくいという状況がありますが、日本の映画やアニメに対する関心は国内外から高いものがあります。高く評価されている日本の文化を国際的に展開し、発信していくことと共に、日本の文化をしっかりと守らなくてはなりません。財政的な面や知的財産としての海賊版の対策などを含めて対応することが必要かと思います。

――日本食も世界に対して強みがあります。

 はい。これまで海外に赴いた際にも、日本の食文化や食材をアピールしてまいりました。さらに農産物の輸出に関しては2030年までに5兆円という目標を掲げています。これまでは日本で売るのがメインで、その上で海外へ、という対応がなされてきましたが、はじめから海外をターゲットにした「マーケットイン」という考えに立っていく必要があります。農業生産も国内向け、海外向けそれぞれに対応しつつ、これらを連携しながら取り組んでいくことが大事になっていきます。
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