廃棄される花を再利用、花からバイオマス燃料を作って事業化! 学生ビジネスコンテストでサステナブルな新規事業アイデア

 生花の通信配達サービスなどを全国展開する一般社団法人JFTD花キューピット(以下、花キューピット)は昨年度、学生を対象に、新規事業案のピッチコンテストから、実際の事業化を意識したブラッシュアップまでをサポートするプロジェクトを実施。参加11組の中から、グランプリを受賞したチーム、事業性が高いと思われるアイディアを発表したチームが、そのアイデアを企業とともにブラッシュアップさせていくという、単なるアイデアコンテストに終わらない、長期間の起業プロジェクトを行った花キューピットと、そこに参加した学生たちを取材した。

参加学生2チームとプロジェクト監修の朝日透教授

廃棄予定の花をたい肥に…分解実験も実施

 前編となる今回は、参加2チームが花キューピットとのディスカッションを経てまとめた、最終的なビジネスアイデアを紹介しつつ、今回のプロジェクトで得た経験を学生にインタビューする。

「花キューピットにおける新規のビジネスアイデアを考案する」というテーマで、最初にピッチコンテストが行われたのは、2020年11月。コンテストには、早稲田大学の大学生・大学院生11組が参加。学生たちは「花キューピット」の組織やサービス、市場環境をリサーチし、そのうえで考えた新しい事業案を3分間のプレゼンテーションを行った。

一般社団法人JFTD花キューピットの澤田將信会長、花キューピット株式会社の𠮷川登代表取締役らによる審査のもと、商学部2年の川野孝誠さんと先進理工学部3年の遠藤竜仁さんの大学生チームによる『Flower Compost 花から始まる循環型社会』と、先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士課程1年の三野流斗さん、先進理工学研究所 生命医科学専攻 修士課程1年の高木大輔さんによるグランプリ受賞チームの『キクのフラワーロスの解決案』の選出が決定。その後、コロナ禍ということもありオンラインを交えつつ、花キューピットの担当者と各チームごと6回のディスカッションを重ね、今年3月29日に最終的な事業案を発表した。

『Flower Compost 花から始まる循環型社会』案は、「花を捨てる」という消費者の精神的負担と、廃棄される花に着目。鑑賞期間を終えた花を回収し、肥料にすることで花を循環させるというアイデア。花キューピット側の担当者とのディスカッションでは「たい肥化するにあたり残留農薬の影響は?」「実際にコンポストで花をたい肥化できるのか」など、さまざまな疑問が浮かび上がり、チームはコンポストを取り扱う企業や花の生産者への取材も行い、分解実験のデータとともに最終案を発表。また、ディスカッションを重ね、最終的なプレゼンテーションでは、この取り組みを教育コンテンツにも生かすアイデアに発展させ、学校向けテキストも作成。「生ごみのほうが微生物が多く分解しやすいが、花のほうは適切な温度にしておくと腐敗臭も少なく子供たちでも扱いやすいので、小学校や幼稚園の花壇などで利用することで、教育的価値も得られると思う。収益化を最優先にしたアイデアではないが、花をステーションに持っていくと花キューピットで特典をもらえるなどして、リユース意識の啓蒙をしながら企業の認知拡大と来店促進につなげられるのでは」と、まとめた。

 発案者の遠藤さんは先進理工学部 電気・情報生命工学科でバクテリアを研究。川野さんは商学部でビジネスモデルを研究するゼミに所属。今回のアイデアでは、川野さんがサーキュラーエコノミーの視点を盛り込むことを提案し、遠藤さんが分解実験の温度や水分量などを調べるなど、それぞれの得意分野も生かしていった。プロジェクトを終えて「実際に企業の人とビジネスアイデアをブラッシュアップしていくということで、学生同士のビジネスアイデアプロジェクトとは違い、あいまいな企画書を持って行っても通用しないと実感した」と振り返った2人。川野さんは「サーキュラーエコノミーを社会実装するのは容易ではないと実感でき、自分が将来的にやりたいことの中で、どうサーキュラーエコノミーを反映していくべきか解像度が上がりました」、遠藤さんは「今回はビジネスの視点を取り入れるという点が少し足りなかった。これを実際にどうビジネスにつなげるかまで、考えられるようになりたい」と話した。

川野孝誠さん、遠藤竜仁さんチーム『Flower Compost 花から始まる循環型社会』

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