「女性の社会進出」はもう古い?これからの幸せな働き方を考える

「これからをどう生き抜くか」――2021年、社会に沸き起こったパラダイムシフトで、自身のキャリアや人生を振り返った人も少なくないだろう。人生100年時代に多様な働き方が求められる中、女性にとって「起業」や「フリーランス」という選択肢も、決して珍しくなくなった。作家・コメンテーターとして活躍する安藤美冬と、中国の人気音声アプリ「himalaya」の齋藤ソフィー副社長が、今それぞれの立場から、女性のこれからの働き方や、子育てとの両立、ジェンダー論について語った。

左から、中国の人気音声アプリ「himalaya」の齋藤ソフィー副社長、作家・コメンテーターの安藤美冬

「女性だから不利」は本当?

安藤美冬(以下、安藤):私は7年間出版社に勤め、独立して10年目が経ちました。現在は、作家、コメンテーターとして、組織に属さず、自分のスキルを使ったフリーランスとして働いています。これまで著作を13冊出版してきていて、2021年だけで3冊、立て続けに本を発表しています。その時々で自分の興味のある分野や力を入れる領域が変化していますが、特に今は執筆活動に集中していますね。パソコンがあれば全国どこでも本が書けるので、地方のホテルに宿泊しながらじっくりと創作に取り掛かることも多いです。自由度の高い働き方が自分らしいなと感じています。

齋藤ソフィー(以下、齋藤):私は中国出身で、2003年に大学院への留学で初めて来日しました。そこから日本の大手IT企業に入社して、イベントプロデューサーとして独立しました。4年前ほど前からは、音声メディアのプラットフォームの会社で副社長として働いています。これまでの働き方でいうと、大きい日本のベンチャー企業、フリーランス・起業、中国のITベンチャー企業と、3つのパターンで仕事をしてきました。

安藤:今日は「女性の社会進出」がテーマなのですが、私が前職で働いていた会社もすでに女性が活躍している実感がありました。ソフィーさんの職場はいかがでしたか。

齋藤:そうですね。こうしたテーマで語られる時って、前提として「女性の方が不利なのでは」というのが、どこかにあると思うんですよね。でも、そのことについて真剣に考え始めたのは、実は、日本に来てからでした。なぜかというと、中国に生まれ育った中で「女性として不利かも」という考えは、ほとんどなかったんですね。社会に出にくいとか、高いポジションに就きにくいとか、そうしたことは一切なかった。上海という都市部にいたこともあって、輝かしい女性が周りに多かったんですね。学生の時のアルバイト先でも、女性のボスの方が多かった。あと、中国はもともと共働きが多いので「女性が家庭を守るべき」という考えもあまりないんですね。日本に来てからですかね、こうした課題を感じるようになったのは。

安藤:私も東京で育って、勤めた会社も女性が定年まで働くのが当たり前でした。しかも、フリーランスになると、さらに女性起業家が周りに集まってきたんですね。彼女たちももともと私と同じように組織で働いていましたが、「起業したほうが時間のコントロールがきくから、子育ても仕事の両立できる」と、独立や起業を選んだ人たちです。実際、小さな子供を育てながら、生き生きと仕事をしています。私自身の実体験としても、「女性だからチャンスを貰えなかった」という惨めな気持ちになったことはなかった。だから、実はいつも「女性の働き方」という切り取られ方に疑問を感じながらインタビューを受けているんです。

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