札幌の歴史と歩む、2つの名ホテルのSDGsな「おもてなし」
札幌の中心地にありながら自然に囲まれた札幌パークホテルと、90年以上の歴史を紡ぐ札幌グランドホテル。北海道を代表する2つの名ホテルでは、おもてなしの心にもSDGsの視点が生かされていた。

2027年閉館決定に惜しむ声!札幌パークホテル
札幌駅から3駅、地下鉄・中島公園駅の出口を出ればすぐ正面にあるのが、緑に映える青いタイル張りの外壁面が特徴的な「札幌パークホテル」。東京ドーム約5個分の広さを持つ中島公園に隣接し、すすきのから歩ける距離ながら、まさに“シティーリゾート”と言うべきくつろぎに満ちたホテルだ。
中島公園を臨む景色はもちろん、庭園に面したレストランや宴会場など、緑に囲まれた時間を過ごすことができるこのホテルでは、ホスピタリティーにもサステナビリティーへの視点を大切にしてきた。
その一つが、2014年から10年以上続けている自社農園「グランビスタファーム サッポロ」。ここでは、リンゴの無農薬栽培で知られる木村秋則氏が提唱する“木村式自然栽培”を取り入れ、農薬や肥料を一切使用せずに、さまざまな野菜を栽培。エキスパートの指導を受けながらホテルの従業員たちが自ら栽培、収穫を行っている。
本格的な自然栽培でとれた野菜は、ホテルのレストランでも活用。シェフたちも「野菜本来の味」「鮮度が素晴らしい」と絶賛する。この秋からはホテルの「テラスレストラン ピアレ」で農園の自然栽培野菜を使ったパスタ「自然栽培野菜とベーコンのアマトリチャーナ」を期間限定で提供。
ホテルスタッフ自らが環境に優しい農法を実践することで、従業員たちのサステナビリティーへの意識も自然と深まっているという。ホテルでゲストに提供できなかった食材などを従業員食堂で活用したり、食器をリペアして再利用するなど、さまざまなアイデアが実践されている。
惜しくも同ホテルは2027年2月で閉館することが決定しており、現在建て替え計画を見据え、閉館までの期間でさまざまな記念企画を検討中。もちろん、大切に大地と野菜を育ててきた農園の活動も続行するとのこと。
1964年7月に開業、昨年60周年を迎え、北海道の中でも長い歴史を誇るホテルの1つとして愛されてきたが、まだ訪れたことがない道外の人も多いのでは。閉館までの期間に滞在することができたら、特徴的な外壁面の青い有田焼タイルをはじめとする趣あふれる館内外のデザインを鑑賞したり、中島公園を散策して公園内にある国指定重要文化財・豊平館と合わせてレトロ体験を楽しむのもおすすめだ。サステナビリティーあふれるおもてなしの心を込めて、地域の自然とともに歩んできた札幌パークホテルの魅力を改めて感じてほしい。
①札幌パークホテルを象徴する外壁の青い壁面。43万枚以上有田焼の青磁タイルが使われている ②緑も鮮やかな庭園の景色も特徴の1つ ③④⑤自社農園「グランビスタファーム サッポロ」ではホテルスタッフが自然栽培野菜を育てる ⑥ホテルスタッフが育てた無農薬野菜をふんだんに!「自然栽培野菜とベーコンのアマトリチャーナ」単品2000円、セットメニュー 3400円(各・税サ込)※10月15日まで ⑦⑧庭園に面した「テラスレストラン ピアレ」。農園でとれた野菜を使用することも ⑨札幌パークホテルでは都市型養蜂も行っており、採集した蜂蜜を使ったオリジナル商品は大人気。「北海道はちみつ生カステラ」(1500円・税込)