【5月病のメカニズムを探る】「抱え込まないで人に相談」そして「ありのままの自分」でいることが大事

 3月から4月にかけては卒業、入学、就職、転勤などなど別れと出会いが交錯する季節。新しい環境にワクワクする一方でなにかしら不安を抱えている人もいるのでは…? そんな人たちにちょっとしたアドバイス。

 昔からゴールデンウイーク明けに新入社員や新入生など環境が変わった人を中心に現れる「5月病」。ちょっと気が早いかもしれないが、この5月病について少々検証を。新しい生活に適応できないことの不安が原因とされるが、果たしてそのメカニズムは?

「よく言われているのはバーンアウト。いわゆる“燃えつき”です。極端から極端に走りやすい傾向の生真面目な人がなりやすいとは言われています。例えば新しい環境で、自分を必要以上に大きく見せたり、新しい場所に必要以上に期待しすぎていたりとか。やりすぎちゃうというか過剰適応ということですね」と話すのは心療内科・精神科医でアマラクリニック表参道の松薗りえこ院長。

 どういう心持ちでいればそういった状況に陥らないですむのでしょう?

「考え方のパターンは人それぞれですから一概には言えませんが “徐々になじんでいく”という気持ちで新しい環境に臨むといいのではないかと思います。人に相談できずに自分で責任を抱え込みやすい人は5月病にかかりやすいというところはあると思います。人に相談するのが恥ずかしいというパターンの人もいます。自分の思い込みで“こんなこと言えない”“こんなこと言ったらダメ社員に思われる”とか思っているわけです。新入社員はたいてい自分で抱え込んでしまっていますね」

 できなくて当たり前という感覚ではないんですね。

「そういう“できなくて当たり前だ”と思える人は5月病は回避できるのではないでしょうか。ありのままの自分でしようがない。首になったらしようがないじゃない、という感じ。まったくやる気がないのはどうかと思いますが(笑)。“すいません、教えてください”“また聞いてもいいですか?”でいいじゃないですか。そういう“できない自分”を受け入れられたら楽でしょ?」

 他人に相談することなく、生きてきた人はなかなかそういうふうに発想を転換するのは難しそうですが…。

「自分や相手を極度に理想化しないことです。恋愛も盛り上がりすぎると挫折することが多いじゃないですか(笑)。友達としてなじんでいって信頼関係を築いて、それからのほうが長続きしたりするでしょう。それに人間のマインドって極端から極端に走りやすいんです。だから新年の目標とかを立てるのもやめなさいって思います。結局やらないから(笑)。いや、やれるに越したことはないですけど、ほとんどの人が達成できていませんから。だから三日坊主という言葉があるんです」

 昨今、新社会人などが精神的に折れやすくなっているということは?

「折れやすくなっているという表現が適切かどうかは分かりませんが、自分自身のありようが混乱しているのではないかとは思っています。今は情報過多で“こうしなきゃいけない”みたいな考え方に振り回されているようには思えます」

 SNS上で見られる承認欲求のようなものは昔はここまで強くはなかった。

「“こうあらねば”みたいなものが大きくなっているんじゃないでしょうか」

 スマホを見る時間を減らすといったSNSとの付き合い方などをアドバイスすることも? 

「場合によっては具体的なアドバイスをすることもあります。クリニックには自分のダメな部分を何とかしようと思って来る人が多いんですけど、自分がダメな部分と思っているところは自分が勝手にそう解釈しているだけで実はダメな部分ではなかったりするわけです。脳は出来事があると感情が出てくるようになっています。感情が出てくる時には、必ずその物事をどう解釈するかという経過がある。解釈そのものを見つめられるようになるといい。例えば全速力で電車に乗ろうとして、目の前でドアが閉まったとします。がっかりするかもしれないんですが、がっかりしたというように感情が動いたとしたら、必ず“ついていない”といったなんらかの解釈を自分でつけているわけ。それは瞬間的なものだから自分でも気が付かない。SNSを見ていて、もやっとしたとします。でも、その“もやっ”がどんなものかは本人も分かっていない。そのもやっを分解してみて、本人の中で大したことないことと思えればいいわけです。“あの人に比べて私はいいねが足りない”と思ったとします。そういう時は“私のほうがイケてないんだわ”といった解釈をしているわけ。自分で勝手にイケてないと思って、それは悪いことだと思っているかもしれないけど、そうではない可能性もある。そうではないかもしれないことと分かったら、SNSを3時間見ていても同じ感覚にはならないかもしれない。いいねがたくさんついている人も組織票みたいなものを使っているかもしれないと思うと数字だけを見て決められない。

 人間というのは、昔から“考えて物事を解決しなさい”と言われ続けてきました。だからヤバいと思ったら、問題解決モードにすぐになる。そうすると考えを巡らせていく中で問題ではないことも問題に思えてくる。だんだん苦しくなってきて、どんどん新たな悩みを生んでしまうこともあります」

 新しい環境に順応するための努力はもちろん必要だけど、すぐにバリバリ仕事ができなくても当たり前! 分からないことがあったらとりあえず“聞く”という心掛けが大事なよう。
松薗りえこ
「アマラクリニック表参道」院長。認知療法・マインドフルネス・森田療法などのエッセンスを取り入れた独自のカウンセリング、「あるがままメソッド」を考案。この「あるがままメソッド」は薬に頼らず、心の調整力に働きかけ、信頼してゆだねるカウンセリング技法。
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