新型コロナの長期化で急増も…「うつ病」とはどんな病気?

「うつ病」が疑われたら?



 笑顔や口数が減った、好きなものにも興味を示さなくなった、ぼんやりしていて涙ぐむこともある、眠れない、酒量が増えたなどの変化があったら、インターネットなどで自己診断をせず早めに専門医に相談してください。精神科、心療内科の看板を挙げているクリニックはよく目にしますが、「精神保険指定医」または精神神経学会が認定する「認定専門医」がいる精神科医療機関を選んでください。東京都医師会などの会員であることは、地域医療を担っている医療機関の証明でもあるのでホームページ等で確認すると良いでしょう。

「うつ病」と診断された人やその周りの人へ



「うつ病」と診断された患者さんにお願いすることは、「うつ病」の原因や背景は医師が考えますので、自身の病気について原因を探ったり、治療法についてあれこれインターネット上を検索したりしないこと。そして最も大切なことは、すべてに優先して休みを取ることです。ひたすら心身共に休息させ、とにかく静養に専念してください。気晴らしに誘われても、気を遣ってまで行く必要はありません。「うつ病」になる方というのは生真面目で、なかなか休みを取ろうとしません。私たちの世界では、休職の診断書作成に本人が同意してくれれば、半分治療が終わったようなものだと言われるほどです。最近の「新型うつ病」等と呼ばれるグループとは大きな差異があり、後者では初診時に本人から休職の要望が出されることもままあります。

 また、「うつ病」になると頭の回転が著しく悪化します。簡単な問題でも迷ってしまい、判断ができなくなります。考え始めても堂々巡りで結論が出ません。これは決して頭が働かなくなったわけではありません。脳を守る安全装置が起動したと思ってください。漏電を防ぐためヒューズやブレーカーが上がっている状態です。思考力が大幅に低下しているわけですから、このような思考状態の時に退職、退学、離婚等の大きな問題に結論は出さないでください。自ら命を絶とうなどと考えたり、実行しようとするのはもってのほかです。人生を左右するような大きな決断等は病状が回復するまで封印ないし、先送りしてください。

 ご家族や周囲の方へのお願いとしては、「頑張れ」「気合を入れろ」といった激励はやめ、本人が安心して静養できる環境を作ってあげてください。もしも本人から悩みを打ち明けられたら、ただひたすら真剣に話を聞くことに専念してください。本人としては散々考えた末に話しているので、あなたの考えや意見、解決策を示しても何のなぐさめにもなりません。何とかしよう、説得しようとしないで、本人の考えを否定せず、素直に言葉を受け入れてあげましょう。「そんなことないよ」「そうかもしれないね」など否定も肯定もせず、本人の言葉をそのまま受け取り、「そうだったんだ。そう考えたのなら、それは辛かっただろうね」と本人の気持ちに寄り添ってあげてください。また、病状初期には無理に気晴らしに誘ったりしないように注意してください。

>>次ページは「ひらかわクリニック」(八王子市)の平川博之院長