都医師会、新型コロナ「5類」移行を前に改めて「ワクチン接種」の効果・意義を解説

 東京都医師会は14日に都内で定例記者会見を行い、新型コロナウイルス感染症「5類」への移行に向け、新井悟理事がmRNAワクチンについて「ワクチンの効果・意義、疑問点について ~最近の知見より~」とのテーマで登壇した。

「ワクチンの効果・意義、疑問点について 〜最近の知見より〜」のテーマで登壇した東京都医師会の新井悟理事

 新井理事は大阪大学の宮坂昌之名誉教授の情報提供を元に解説。最初に二価ワクチン(従来株とオミクロン株の2種類のmRNAを含むワクチン)の効果について「2021年にイギリスで発表されたデータで、人口10万人あたりの全死亡者数でワクチン接種者と未接種者を比較すると、新型コロナで亡くなる人もそうでない人も含まれるが圧倒的に未接種者の全死亡者数が多い」「二価ワクチンの効果を比較したアメリカのCDC(国際安全衛生センター)のデータでは、接種者と未接種者の感染リスクを比較すると2022年11月末で3・1倍、死亡リスクは同年10月末で18・6倍低下していた」。

 さらに「米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』で今年1月に発表されたデータで、二価ワクチンと一価ワクチンの入院・死亡抑制効果を比較すると、二価ワクチンは60パーセント、一価ワクチンは25パーセントの効果が14週持続する」「医学誌『ランセット』で今年1月に発表された7133の論文のメタ解析で、追加接種者が自然感染した場合のハイブリッド免疫の効果を比較すると、入院・重傷化予防効果は90パーセント以上の効果が8カ月持続、感染予防効果は時間と共に下がってくるが8カ月の時点で60パーセントの効果が示されている」と語った。

 ワクチンの副反応のメカニズムについて、宮坂氏の著書『免疫力を強くする』より「ひとつは自然免疫系の過剰な活性化で、これはワクチン成分を包んでいる脂質膜を含む成分が副反応を起こすということ。ふたつ目は症状としては大きいアナフィラキシー。3つ目はワクチン抗原と似た物質が生体内に存在し、ワクチン接種により自己に対する攻撃が起こることがあると言われるが、これは極めて稀だということです。4つ目はワクチン接種により感染促進性の抗体ができることがあると、デング熱やSARS/MARSでは言われているが、新型コロナのスパイクタンパク質による感染増強の報告はない」として「頻度としては少ないんですけど、副反応の少ない新しいワクチンの開発にはこのようなことを考慮することが必要」とまとめた。

 そのうえで「mRNAワクチンが他のワクチンに比べてどのくらい重篤な副反応を起こすかというと、10万回に1回くらいの頻度。インフルエンザワクチンは100万回に2回、麻疹・風疹・水痘・4種混合などのワクチンは100万回に10回、すなわち10万回に1回ですからmRNAワクチンとほぼ同じくらい。特にmRNAワクチンが非常に高いというわけではない」とした。

 帯状疱疹発症リスクについては「昨年11月に発表された医学誌『JAMA Network Open』による約200万人の大規模調査では、ワクチン接種により帯状疱疹リスクは上昇しなかった」、接種後の免疫力低下については「血液の中のリンパ球数が24~48時間のみ一時的に低下するが、これは『シャットダウン現象』と言われ、ワクチン接種によって血液中のリンパ球がリンパ節に集まり、免疫反応を起こしやすくしているもの。全身のリンパ球が減っているわけではないので免疫力が低下しているわけではない」と説明した。

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