都医師会、5類移行でも「東京ルール下がり切らないのが大問題」臨時医療施設の常設を進言

 東京都医師会は14日、今後の医療提供体制について都内で定例記者会見を開いた。

今後の医療提供体制について説明する東京都医師会の猪口正孝副会長

 都のモニタリング会議にも出席する猪口正孝副会長は、先週のモニタリング項目を分析し「感染状況、医療提供体制ともに黄色(警戒レベルが4段階中の3番目)。今週始めのデータは前回との比較でいうと大体横ばいで、新規陽性者数の今週先週比は減少傾向の時は70%台だったが今週は90%になっていて、下げ止まりになりつつある。場合によっては今週終わり頃から増えてしまうかもしれないという状況」と解説。

 ただし「今後も陽性者数が増えるのかというと、5類になってもこういう波を何度も繰り返すということを知っておいていただきたい」としたうえで「陽性者数は増えるけれど感染力と重症化率は今の状況をほぼ維持した形になるので、5類になった時に高齢者などリスクの高い方たちをしっかり守っていくことが、今後ウィズコロナとして生活していくポイント」と語った。

 現状の医療提供体制を「救急医療の東京ルール(一定の基準に基づいて、救急医療の要否や診療の順番を判断すること)の適用件数が下がり切らないのが大問題」といい、その理由を「予定入院の方たちには感染予防を徹底した生活や健康観察の記録、場合によっては事前にPCR検査を行うなど準備することができる。救急の方たちは入院時に以前の状況が分からないため、感染対策を取りながら患者さんを診ざるを得ない。外来のスピードも遅くなりますし、入院もなるべく個室で診ることが常態化している。今後、この状況が劇的に改善するかどうかには何か施策を考えなければいけない」と指摘。

 また、都で検出された新型コロナウイルスのゲノム解析では「注目すべきはオミクロンXBB.1.5株の増え方が他のものの2倍近くなっている。外国の例を見てもXBB.1.5株が非常に増えており、将来的にはここに置き換わっていく。国別に獲得した免疫状況が違うので、日本がそうなっていくかどうかを今後見ていかなくてはいけない」と注意を促した。

 さらに、東日本大震災の際の石巻赤十字病院の状況に触れ「災害拠点病院は計画上200%、つまり200床の病院であれば400人、500床であれば1000人収容するのがひとつの目標。しかし、現実的にパンデミックで用意したコロナ病床で動いているのが60~70%だったことを考えると、災害時に200%収容するのはかなり厳しい話」として「今は災害医療に平時の医療を転用する仕組みしかないが、今回、新型コロナで臨時医療施設という作戦が取られた。一般の病院に比べると医療機能は低いが、通常医療を行っていない分、災害時やパンデミック時に特別な治療や行動が取れるのが臨時医療施設」と説明。

 猪口副会長は「災害・パンデミック対応常設臨時医療施設」の設置を提案し「今回の臨時医療施設は新型インフル特措法に基づいて作られたが、今後は災害時やパンデミック時に素早く動けるようにしたほうがいいのではないか。そのためには、あらかじめ1000床規模の臨時医療施設を作っておく。通常は患者1人につき床面積は6.4平方メートル以上だが、災害時の臨時医療施設はもっと融通を利かせてもいい。5類になっていく時だからこそ、こういったスペースを準備しておくのが大事ではないか」と訴えた。

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