「次亜塩素酸水」空間噴霧の安全性と注意点は? 三重大・福﨑教授に聞く(後篇)【withコロナ】

三重大学大学院生物資源学研究科の福﨑智司教授
 今後、「次亜塩素酸水」の有効性評価の結果が発表される予定ですが、福﨑教授が期待されることを教えてください。

福﨑「まず、次亜塩素酸の歴史をたどっていくと150年前から効果があると分かっている成分です。それを今回の検証試験だけで判断することは、むしろ難しいと思いますし、効果なしという結果は出るわけがないと思っています。何年も研究して学術論文が提出され、査読を通過して発表するのが学術研究の手順です。これまでに査読を経て発表された学術研究とどちらを信じるかは、消費者の自律的な判断に任せられますし、次亜塩素酸水に不信感を持つ人は使用を控えていただければいいと思います。

 いろいろな殺菌剤の効果を見る時に、微生物が液体の中に浮遊している状態と、何かに付着している状態では、薬剤に対する抵抗性が違います。何かに付着しているとはるかに殺菌しにくく、その材質がどういう性質の個体表面か、水に濡れやすいか濡れにくいかによっても差が出ます。次亜塩素酸水溶液の洗浄・殺菌上の欠点は、表面張力が高いので濡らしにくいのです。試験方法によって結果が異なることも十分考えられます。一つの条件で効果が出なかった場合に、どうすれば効果が出るのかを検証するのが学術研究です。

 もしも今回の検証試験で効果が期待できないという結果が出たとしても、私たち研究者は一つの結果ですねとしか判断できない、というのが正直なところです。各研究機関では、定められた試験条件にしたがって操作を行うのが評価試験です。条件と結果を提示していただき、結果が期待通りでなかった場合、再び条件を変えて検討を重ねる、そして最適な殺菌操作を見出すのが科学技術なのです」

(了)
「微生物制御」の観点から「次亜塩素酸水」を読み解く 三重大・福﨑教授【前篇】
https://www.tokyoheadline.com/500554/

なぜ「次亜塩素酸水」が問題とされているのか? 三重大・福﨑教授に聞く【中篇】
https://www.tokyoheadline.com/500602/
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