新型コロナとインフルエンザ同時流行への備えは? 都医師会に聞いた

東京都では1日、感染症に特化した「東京 i CDC」を立ち上げた
 話は変わりますが、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場で活動する医療従事者に対し、原則無報酬の方針との報道も出ています。

角田「オリンピックはもともと名誉のために競技する側面もあり、国家を挙げて支援するべきだとは思います。ですから、観客サービスや競技運営のサポートなどのボランティアは分かるのですが、医療従事者などは個人の専門的な技術を要求されます。原則すべて無報酬でと言われると、専門家としての意義が認められていないようで抵抗はありますね。

 マスギャザリングといって、大規模な人数が集まる大会での感染症対策は非常に重要です。これまでに対策した感染症に比べ、新型コロナは感染力がそこそこあり無症状者も多いなど厄介です。今後、新型コロナは簡単には収束しないでしょう。医療的な立場としてはこれから新型コロナの流行が何年も続く中で、どうやってオリンピックを開催するのかを考えなければいけないと思います。ウィズコロナ時代に大規模イベントを行うための条件を考えるべきです」

 私たちが「第3波」やインフルエンザとの同時流行に備えることはありますか?

角田「新型コロナが重症化する可能性の高い65歳以上の人と、インフルエンザが重症化しやすい乳幼児は、通常の感染症予防に加えできるだけインフルエンザの予防接種を受けてください。私たちが診断するうえでも、インフルエンザの予防接種を受けていることはひとつの判断基準となります。医療機関では最大限にインフルエンザが流行し、同時に新型コロナが流行するという最悪のシナリオを想定して準備していますが、実は今年のインフルエンザの発生状況は昨年の1/1000以下の水準と報告されています。新型コロナ対策はインフルエンザ対策でもあるので、このまま徹底していけば大きな流行にはつながりにくいでしょう。

 それよりも医療機関で新型コロナに感染すると考えて健康診断やがん検診、糖尿病や高血圧で必要な治療を控えるなど、ほかの疾患の予防を制限していることが気になります。救急医療の現場で、心筋梗塞による心破裂で搬送される患者さんが増えているという話も聞き、原因は早めに治療せずに我慢していることが考えられます。医療機関のクラスターは外来で発生しているわけではありません。マスクや手洗いをしていれば感染の可能性は極めて低いので、通常の医療はきちんと受診してください」

 改めて都民の人にメッセージをお願いします。

角田「感染症対策は個人の心がけによるところが大きく、繰り返しになりますが手洗い・マスク・3密を避けること、換気や消毒が重要です。若い人は重症化しないと言われていますが、お年寄りに感染が広がってしまうと年代による様相がまったく変わってきます。世代を超えて上の世代にうつさないよう注意してください。

 今の心がけを続けながら『普通の生活に戻ってください』と言いたいです。あとは新型コロナ以外の疾患は、検診や予防接種などで予防する努力をお願いします」

(了)

>>次ページは公益社団法人東京都医師会の角田徹副会長ほか