都医師会・尾﨑氏、全数把握見直しに「漏れた方がそのまま放置されることがないように」

 東京都医師会は13日、都内で今後の感染症対策について定例記者会見を行った。

全国一律の全数把握の見直しに決意を述べる東京都医師会の尾﨑治夫会長

 尾﨑治夫会長は冒頭で「これはまだ発表できることではありませんが」と前置きし、「ワクチンを接種している方の中で、大部分の方は4回接種していれば高齢者で感染した場合も軽症で終わっているわけですが、中には4回接種していても重症化する方がいないわけではない。今後、抗原検査ではなく抗体検査でS抗体、N抗体などの中和抗体を具体的に調べてみて、抗体の量が少ない方に特化して感染予防や重症化予防をするような対策を重点的に行うといった戦略もあるのではないか」と新たな対策に言及。

 今後のワクチン接種について「アメリカではBA.4とBA.5のワクチンの緊急使用が許可されましたが、皆さんご存じのように日本でも新しいオミクロン株対応ワクチンの接種が認められることになっています。現状は高齢者の4回目ワクチン接種率は72%くらいですが、残念ながら20~40代の3回目接種率は7割に至っておりません。特に20代は今20%弱くらいで、この20~40代の方の接種率が7割を超えるようになれば、感染のすがたがさらにいい方向に向いていくのではないか」として「私の私見ですけれども、従来のワクチンを早く打っていただくことがよろしいのではないかと思っている」との見方を示した。

 26日から全国一律に移行する全数把握の見直しについて「65歳以上でない、基礎疾患を持っていない、妊産婦の方、そういった全数把握から外れる方の中にも重症化したり、亡くなられるような方はいないのかどうか。残念ながらある一定の人数はそういう方がいらっしゃるわけで、そういった方がそのまま放置されてしまうことがないように。全数把握から漏れた方が重症化することや亡くなられることをなくすにはどうしたらいいのか、しっかりした体制づくりを引き続き東京都と連携しながら取り組んでいきたい」と決意を述べた。

 最後に「感染症としてはコロナが注目されてしまいますが、実は小児のRSウイルス感染症や手足口病、ヘルパンギーナ、成人の梅毒などいろいろな感染症がある。この冬はインフルエンザとの同時流行もないとはいえないことを考えると、コロナ以外のいろいろな感染症にも目を向けていただくことが大事」と新型コロナ以外の感染症の流行にも注意を促した。

 続いて、都のモニタリング会議のメンバーでもある猪口正孝副会長は、現在の感染状況と医療提供体制について「先週のモニタリング会議では感染状況、医療提供体制ともに赤(4段階中の一番上)を維持したが、前回との比較でいうと感染状況は落ち着いてきている。落ち着いてきている大きな理由は感染者が非常に増えて免疫を持った方が多いことと、ワクチン接種して免疫を獲得した方たちの総和が一定数増えてきたことによって、新規養成者数が減少しているのは間違いのないところ」と総括。

「ただし、死亡者に関しては(感染者数の増加に)4~5週ほど遅れて増えてきている。先週報告された死亡者は203人で、1週間の報告数としては過去最多。このように死亡者が増え続ける限りにおいて、やはり感染状況を赤からオレンジにするにはちょっと早いのではないか」として「今のオミクロン株は毒性が弱い、重症化しないといわれていますが、このように何万人という形で感染者が増えるとやはり亡くなる方が増えるということにしっかり警鐘を鳴らす必要があるということで、先週は感染状況の評価を赤のままに止めました。ぜひこのことをご理解いただきたい」と引き続き感染対策に理解を求めた。