5種混合、15価肺炎球菌、HPV、風疹…東京都医師会が最新のワクチン事情を解説

 東京都医師会は2月13日、都内にて行った定例記者会見で最新のワクチン接種事情について解説した。

東京都医師会が乳幼児期から高齢者までのワクチン事情を解説(写真はイメージ)

 疾病対策担当の川上一恵理事は「ワクチンに関する最近の話題」と題して登壇。まず乳幼児期のワクチンについて、今年4月からこれまでの百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオの4種混合ワクチンにインフルエンザ菌b型(ヒブ)を加えた「5種混合ワクチン」の定期接種を行う。生後2か月から7歳半までの間に一定の期間を空けて4回の接種が行われ、接種費用は原則無料。また、肺炎球菌ワクチンも「15価肺炎球菌結合型ワクチン」が定期接種に位置付けられる。皮下注射だけでなく筋肉内注射でも投与できるので、接種部位の腫れや炎症の軽減が期待できるという。

「こちらは4月1日以降の接種ですので、2月1日以降に生まれた赤ちゃんたちはすべて対象者になってきます」

 HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんなどのHPV感染症を予防するワクチンとして、2022年度から小学校6年から高校1年相当の女子を対象に定期接種を再開。積極的勧奨を中止した期間に接種の機会を逃した人に、来年3月末まで公費によるキャッチアップ接種が行われている。期間内に3回の接種を終えるためには、今年9月中に1回目の接種を受ける必要がある。対象は1997年度から2006年度に生まれた女性。

 川上理事は「HPVウイルスは女子だけに子宮頸がんを引き起こすわけではなく、男子の場合は肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんなどをもたらす。男子にも接種しているニュージーランドやオーストラリアでは、子宮頸がんだけでなく肛門がんなども減ってきている。東京都では、区市町村が男子への助成を決めると都が半額を負担する制度が始まり、すでに助成が始まる地区に住んでいる男子にはぜひ受けていただきたい」などと話し、対象は女子と同じ小学校6年から高校1年相当だという。

 1962年度から1978年度生まれの男性は、区市町村から送付されたクーポン券で原則無料で風疹第5期予防接種が受けられる(2024年度まで)。風疹抗体を持っていない男性が風疹にかかり、妊娠初期の女性に感染させると生まれてくる赤ちゃんの目や耳、心臓に障害が起きるリスクがある。また、帯状疱疹ワクチンについても区市町村が助成を決めると都が半額を負担する制度がある。帯状疱疹は過去の水ぼうそう(水痘)ウイルスが体内に残り、加齢や疲れなどで免疫が低下すると発症し、任意接種の対象は50歳以上の都民。

 高齢者には肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチン、前述の帯状疱疹ワクチンに加え、今年1月から60歳以上を対象にRSウイルスワクチンの任意接種が始まった。川上理事は「RSウイルスというと乳児がかかって呼吸困難を来す病気という認識かもしれないが、海外では高齢者、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、心疾患など慢性の基礎疾患がある方で市中肺炎で入院する人の10~30%ほどにRSウイルスが関与しているというデータが出ている。能登半島地震もそうだが避難所では必ず感染症が流行し、冬場だとインフルエンザ、肺炎球菌、新型コロナ、RSウイルスがある。日本は避難所で生活する期間が長く、高齢者が集団で過ごす場所にこういった疾患が入ってくると、災害から生き延びても避難所で感染症にかかって命がけの状態になることが起こりうる」と警鐘を鳴らした。

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