THE RAMPAGE 浦川翔平「長崎で作った念願のクラフトビール〈Cloud9〉をBUZZらせたい!」〈BUZZらないとイヤー! 第100回〉

打ち合わせで、「取材の時に飲ませていただいた『上町ヴァイス』をリファレンスに、何かプラスアルファできないかなって思っています」と翔平さん。
滑らかな舌触り、青りんごやバナナを引き合いに出されるフルーティーな味わい、醸造家の風間さんが白ビールの特徴をあげながら、翔平さんの理想のビール像を具体的に探ります。
「……飲み心地が好きなんですよね、あのまろやかな感じ。それと甘党なのもあって……バナナ感。甘いバナナ感、いいですね。ビールを飲みなれていない人とか、苦手意識がある人って、最初が辛口だったんじゃないかなって思うんですよ。ビールってビター系だなあって苦手だって。だからビールを飲んでみたいって人が飲んだ時に、ビールってこれもありなんだっていう印象を与えるようなものになったらいいな……そうなると青りんごよりもバナナ系かな」
「長崎ならではの素材」や「長崎を盛り上げる」という要素もトピックに。
「何かしらの長崎っぽさを入れたいと思うんですけど、入れすぎてもねって思うんです。白ビールって、そのままでフルーティーじゃないですか。そこにフルーツを絡めても……」と語りだす翔平さん。風間さんも「白ビールはバランスが大切。果物を入れると、そっちが主役になっちゃう」と頷きます。
「……難しいと思うんですけど」と翔平さんが提案したのが、コッペパンでした。

「前にパンの端材を使ったビールの話を聞いたことがあって、自分も作る時にはSDGs的な要素があるビールがいいなと思っていて……コッペパン、給食のコッペパンってどうですか? 小学校の時にコッペパンが苦手だった子がいて、いつも残していて。それが17年間ずっと気になっているんで」
風間さんによれば、コッペパンを使ってもビール全体への影響は少ないとのこと。ただ、あくまでも長崎市におけるフードロス対策としてのアイデアなので、現在の長崎市の学校給食の状況や協力してもらえるものなのか相談してみること、もうひとつの案として長崎名産のカステラの端材を活用すること、その両輪で進めることに決まりました。翔平さんは「給食のコッペパンにカステラ、長崎の醸造所で自分が加える長崎らしさって、フルーツじゃなくてこれだな! 小麦推し!」
さて「ビール全体への影響は少ない」というコッペパンやカステラ。入れても、コッペパン味のビール、カステラ味のビールにはならないんです。どのように生かされるかというと、ビールの酵母を元気に働かせるチカラになるんです。
ビールを醸造するにあたって重要な工程に〈糖化〉と〈発酵〉があります。〈糖化〉は麦芽のデンプンを糖に変える工程で、麦芽をおかゆ状態にしてぐつぐつと煮て、ろ過して、麦汁を取りだします。〈発酵〉はホップを加えて煮沸して香り付けした麦汁を一定の温度まで冷やし、酵母を加えて行います。すると、この酵母が麦汁の中の糖を食べてアルコールと二酸化炭素を作ってくれるんです。二酸化炭素はビールの泡の部分になります。
飲み心地や味わいとともに翔平さんがこだわったのは濁りです。
「あんな濁り、なかなか見たことない。東京でも酵母が染みますよとか、酵母が生きてるうちの濁りですよって言われて飲んだりするんですけど、『上町ヴァイス』のあの濁りはなかなかない。グラスが揺れたら濁りが分かるレベルだったのに驚いたので……それに取材の時におっしゃってた濁りが落ちていくのを眺めるのもいいっていう話がいいなって。私は飲みたいのが先で、そんなに待てないから無理ですけど」
「濁り……濁りかあ。濁りはコントロールが難しいんですよねえ。タンクから直接注いでいるっていうのもあるし…」と、風間さんは苦笑いしながらも「……やってみます!」