1909年にパリで鮮烈なデビューを果たしたバレエ・リュス。主宰者セルゲイ・ディアギレフの慧眼により、同バレエ団は、ダンサーのワツラフ・ニジンスキーや作曲家のイーゴリ・ストラヴィンスキーといった数々の才能を輩出。ロシアのエキゾティシズムとして人気を集めたバレエ・リュスは、さらにピカソら当時パリで活躍していた前衛的なアーティストを取り込み、新しいスタイルの総合芸術として美術やファッション、音楽の世界にも大きな影響を与えた。本展では、オーストラリア国立美術館が有する32演目約140点ものコスチューム・コレクションをはじめ、デザイン画や資料などを一挙公開。同館が約40年かけて収集、保存してきたバレエ・リュスの衣装の数々が、国外でまとまったかたちで展示されるのは今回が初めてとなる。
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異国情緒から生まれる、新たな美術「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展 – 印象派を魅了した日本の美」
19世紀後半から20世紀初頭の西洋では、浮世絵を中心とした日本の美術が大流行。日本美術に刺激を受けた作品も数多く登場し“ジャポニスム”という現象が生まれた。本展ではボストン美術館のコレクションから厳選された約150点を紹介。西洋の芸術家たちが日本の美術と出会い、何を取り入れ、新たな美を創造したのかを多角的に検証する。
見どころの1つは、修復期間後、世界初公開となるクロード・モネの傑作《ラ・ジャポネーズ》。日本美術の愛好家でもあったモネ。日本の小物を取り入れた“日本趣味絵画”といえるのは同作のみといわれているが、本展では日本的モチーフを取り入れた初期の作品だけでなく、表現方法にも日本の影響が見られる晩年の作品を展示し、モネのジャポニスムの変遷をたどる。
モネ以外にも、マネやドガ、ロートレック、ルノワールなど印象派の画家たちの名品と、彼らを魅了した日本美術を対比して展示。西洋の芸術家たちが日本美術のどんな点に着目したか、分かりやすく伝える。
日本美術と西洋美術のつながりを感じることができる展覧会だ。
時空を超えて、体感する「ミッション[宇宙×芸術]−コスモロジーを超えて」
日本人として初めてISSの船長を務めた若田光一宇宙飛行士の帰還や、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」の打ち上げ成功など、今年も宇宙関連の話題が熱い。東京都現代美術館では、ますます身近になっている現実の宇宙と、芸術家たちによるイマジネーションの宇宙をともに紹介しながら、宇宙とアートの新たな可能性を探る展覧会が開催される。
宇宙にまなざしを向けてきたアーティストは多く、粒子や宇宙線による作品、人工衛星によるサテライトアートなどが生み出されてきた他、ISSの日本実験棟・きぼうでは芸術実験なども行われている。本展では、アートインスタレーション、人工衛星やロケットの部品などの実際の宇宙開発に関わる資料、宇宙に関連した文学やマンガ、アニメーションなどのエンターテインメント作品を紹介。さらには、スーパープラネタリウム『MEGASTAR』や、無重力空間をイメージできる『スペースダンス・イン・ザ・チューブ』などの参加体験型作品の展示や、トーク&イベントも実施する。
時空を超えて、体感する「特別企画展『天下祭と山王さん 〜江戸っ子は、山車に絵巻に、木遣り唄〜』」
江戸時代以来、隔年で行われている山王権現(日枝神社)の山王祭と神田明神(神田神社)の神田祭。江戸城内で将軍の上覧があったことから“天下祭”と呼ばれた両祭礼は、時代によってスタイルを変化させながらも、江戸から現代へと大切に受け継がれてきた。本展では、山車や絵巻、屏風、古写真、映像、かつて使われていた道具などを展示しながら、祭の成り立ちから現代の様子、祭を支えてきた人々の姿を紹介する。会場では、絵巻『山王祭礼之図 第一巻』(複製)や文政七年(1824年)に作られたとされる江戸天下祭図屏風など、貴重な資料を展示。また『東都歳事記』四巻に記録されたゾウの造り物の図を実際のゾウの大きさに近いサイズで出力展示したり、今なお山王祭で使用されている河鍋暁斎が描いた『御酒所幕』を高性能スキャンし実物に近い状態で展示するなど、祭を体感できる試みも多数。他にも、戦後の山王祭が撮影されたモノクロ映像や、大正時代から昭和に撮影された貴重な写真資料も展示する。
今年6月には日枝神社の山王祭が行われるので、合わせて本展で祭の歴史に触れてみよう。
世界をつなげる、かすがい「オオハラ・コンテンポラリー・アット・ムサビ」
2013年4月に、大原美術館にて開催された『Ohara Contemporary』展を再構成して展示。大原美術館がここ10年あまりの間に収集した日本の現代美術作家30名による47点の作品を、大原美術館の芸術家支援事業、教育普及活動とともに紹介する。さらに、今回の展覧会期間中には、出品作家と武蔵野美術大学に関わりのある作家、批評家とのトークイベントやワークショップなどの関連イベントも合わせて行う。
さまざまな芸術支援事業などによって、若手芸術家の支援や教育普及活動を積極的に行っている大原美術館。その現代美術コレクションがまとまったかたちで公開されるのは、関東圏では初めての試みとなる。本展では、美術館全体を使用して、大原美術館のプログラムごとに作品を展示。作品を鑑賞しながら、大原美術館の活動を知ることで、作家と美術館の関係性の重要さにも改めて気づくことができる。
世界をつなげる、かすがい「ゴー・ビトゥイーンズ展:こどもを通して見る世界」
19世紀後半のニューヨークで、貧しい移民の暮らしを取材した写真家ジェイコブ・A・リースは、英語が不自由な両親の橋渡しをする移民の子供たちを“ゴー・ビトゥイーンズ(媒介者)”と呼んだ。異なる文化の間、現実と想像の世界の間など、さまざまな境界を自由に行き来する子供たち。本展では、そんな子供の性質に注目し、その視点を通して世界を展望しようと試みる。展覧会では、前述のリースらの19世紀末から20世紀初頭の写真や、日系人収容所の様子を写した宮武東洋の写真など貴重な歴史資料を展示。さらに国際的に活躍するアーティストたちの日本初公開作品が多数登場。また奈良美智の『ミッシング・イン・アクション』も本邦初公開となる。
見えなかったものが見えてくる 平成26年度東京都写真美術館コレクション展 スピリチュアル・ワールド
東松照明、土門拳、横尾忠則ら、スピリチュアルな世界観を見つめた日本の写真家、美術家の作品を、3万点を超える東京都写真美術館のコレクションの中から選りすぐって紹介。
日本では古来、森羅万象に“八百万の神”が宿るとする信仰があった。人々は、目に見えないものや日常を超えたものの存在を感じとる感性、神仏を畏れ敬う意識、生きている者と死者の関わり合いを大切にする死生観とともに生きてきた。そんな、近代化の過程で失われていった非合理的なもののなかには、日常生活や現代社会の価値観にはない未来への手がかりが隠されているのかもしれない。現代社会に生きる我々が忘れてしまった、日本古来の感性やそこから生まれた豊かな文化を見つめ直す機会となるはず。
幸福はぼくを見つけてくれるかな? ─ 石川コレクション(岡山)からの10作家
アートが人を引きつけるのは、色やかたちや素材といった目に見える“もの”の魅力だけではなく、その背後にある意味や考えが、見る人にさまざまな問いをもたらすからではないだろうか。本展は、そんな新たな問いや視点をもたらしてくれる作品に出会える展覧会。会場では、“誰もが感じることはあるが、見過ごしてしまうようなこと”をテーマにした作品を手掛ける10組のアーティストを紹介。コンセプチュアルな作品を多く収集するコレクター石川康晴氏のコレクションより、国際的に注目を集める10組のアーティスト、ミルチャ・カントル、オマー・ファスト、ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス、ライアン・ガンダー、リアム・ギリック、ピエール・ユイグ、小泉明郎、グレン・ライゴン、島袋道浩、ヤン・ヴォーの作品が展示される。
都市と自然、個人のアイデンティティと歴史、アートとは何かという問いなど、作品ごとにアプローチはさまざま。しかし彼らの作品はいずれも、そこで語られる作家の個人的経験も、見る者が自身に置き換え深いレベルで共有することを可能にする。そしてそれは、新たな視点と問いをもたらしてくれる。
死ぬとどうなるの? 詩人と漫画家が見つめた死そして生『かないくん展』
詩人・谷川俊太郎が文を書き、『鉄コン筋 クリート』『ピンポン』の漫画家・松本大洋が2年の歳月をかけて描いた“死”をテーマにした絵本『かないくん』。親友というわけではない、ごく普通のともだち・かないくん。ある日、突然かないくんが学校に来なくなって…。 死ぬとどうなるの? 誰も答えられない、でも誰もがいつか知るはずの問い。“かないくん”をきっかけに、その問いを見つめる少年の心を穏やかな言葉と絵で綴っていく、少し不思議な絵本。そんな絵本『かないくん』の世界をテーマにした展覧会が渋谷パルコで開催される。“死”についての問いをテーマにした、珍しい絵本が、どんな思いから生まれたのか。絵本『かないくん』を入り口に、生と死について一緒に考えてみる。そんな、一風変わった展覧会だ。会場では絵本の原画とラフスケッチ、未公開の“本番とは別バージョン”の絵などを展示。他にも、谷川俊太郎による死についての詩や、ビデオインタビュー『死んだらどうなるか、考えたことがありますか?』も上映する。会場では関連グッズなども販売。ちなみに絵本のブックデザインを担当しているのは祖父江慎。“他の本とはちょっと違う”ユニークな装丁も、この絵本を特別な一冊にしているので、絵本のほうも手に取ってみてはいかが。
期間中に行われるトークイベントにも、個性的な顔ぶれが登場。5月18日には、『春風亭昇太と糸井重里が考える。「死ぬとどうなるんだろうねぇ。」 』、5月25日には『谷川俊太郎と工藤直子「死んだらどこに行く?」』を開催(チケットは完売。5月18日のみネット配信予定)。それぞれの視点からどう“死”が語られるのか、気になるところ。
その独特な世界に、ハマる!「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」
ゲーテ研究家、人智学の創始者、哲学者そして教育者として、日本でも知られているルドルフ・シュタイナー(1861〜1925年)。3つのアプローチによって、その世界に迫る展覧会。
一つ目は、シュタイナーが農民や労働者、学者たちに向けて行った講義の際に内容を説明するために描いた黒板ドローイング。1919年から亡くなる1925年までの6年の間に約1000点の黒板ドローイングが残されており、本展では晩年の24点を展示。ちなみに近年、これらは“思考する絵”というアートの新しいフィールドとして世界で注目を集めている。二つ目は、シュタイナーの建築とデザインに着目。1922年に火災により消失した幻の建物〈第一ゲーテアヌム〉を300余点のドキュメント写真や模型で紹介。さらに日本で初めての公開となるウインドーのための習作ドローイングなども展示。三つ目はスイス、ドルナッハの丘に現在も建つ〈第二ゲーテアヌム〉とその周辺を建築家・アーティストの坂口恭平が表したジオラマや、写真家・鈴木理策の写真、本展のために撮り下ろした最新のハイビジョン映像を紹介。
その独特な世界に、ハマる!「バルテュス展」
ピカソが「20世紀最後の巨匠」と評した画家・バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ、1908-2001)。愛好家が多く、所蔵先が世界中に広がっているため、彼と関わりの深いここ日本でも大規模な展覧会が行われるのはまれ。本展は没後初、国内最大規模の大回顧展となる。世界中から集う40点以上の油彩画に加えて、素描や愛用品など100点以上が展示される。
父は美術史家、母は画家、兄は小説家・画家でサドやニーチェの研究家としても知られるピエール・クロソフスキーという、芸術にあふれた環境で育ったバルテュス。実は美術学校に通うことなく、ヨーロッパ絵画の伝統に触れながらも、どの流派に属することなく独特な具象絵画の世界を築き上げた。また、幼いころより東洋文化に親しんだバルテュスは、1962年、初来日で出会った節子夫人と後に結婚。さらに日本との関わりも深くなり、1991年に第3回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。
本展では代表作『夢見るテレーズ』から、ユニークな作品『地中海の猫』など、少女や猫といったバルテュスが愛したモチーフの作品が多数出展。