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アートで語る、日本『ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢』

2014.04.13 Vol.615

 2012年にパリで上演されたオペラ『オルランド』のアートディレクションで高い評価を得たニコラ・ビュフを紹介する展覧会。同オペラでは、ヨーロッパの伝統的な美意識と日本やアメリカ由来のサブカルチャーとを見事に融合させた手腕が評価され、同年の演劇・音楽・ダンス部門でのビジュアルデザイン最優秀賞を受賞。一躍時の人となった。実は幼少期に『宇宙刑事ギャバン』に夢中になったというビュフ。後に、それが日本の番組だということを知った彼は日本に関心を持ち、活動拠点を東京に移し現在に至っている。

 本展では、15世紀末のヨーロッパの古典文学『ヒュプネロトマキア ポリフィリ』へのオマージュをベースに、日本のアニメやマンガ、特撮ヒーローもの、ビデオゲームなどの影響が加味された独特の表現世界を展開する。

アートで語る、日本『特集 地震のあとで–東北を思うⅢ』

2014.04.12 Vol.615

 2011年3月11日に東日本大震災が発生してから、同館では同年5月に『特集 東北を思う』を、2012年1月に『特集 東北を思う—記憶・再生・芸術』を開催してきた。3回目となる今回は、地震と津波と福島第一原子力発電所事故の後、アーティストたちがどのように動き、どのように被災地に寄り添ってきたか、また浮かびあがってきたさまざまな問題にどのように向き合ってきたのかに注目する。

 会場では、コレクションを中心に、震災を見つめたアーティストたちの思いを表す作品を展示。コレクション以外にも、写真家・宮本隆司による映像作品《3.11 TSUNAMI 2011》(作家蔵)も合わせてエレベーターホールを挟んで反対側にある12室で紹介。さらに、Chim↑Pomの《REAL TIMES》(寄託作品)を 3階の7室で展示する。

 震災の後、日本のアーティストたちがどんな思いを表現したのか、振り返る。

日本の美を再発見『のぞいてびっくり江戸絵画−科学の眼、視覚のふしぎ−』

2014.03.30 Vol.614

 西洋の遠近法を用いた風景図や、顕微鏡による知見を取り入れた拡大図、博物学の知識を踏まえた写生図など、巧みに視覚効果を取り入れた江戸絵画が集結。
 異国文化に大きな関心を持っていた八代将軍・徳川吉宗が漢訳洋書の輸入規制を緩和した結果、江戸では新たな美術作品が生み出されることになった。本展では、江戸時代後期に花開いた“視覚文化”を、約160点の作品で紹介。小田野直武や司馬江漢、葛飾北斎らによる遠近法を用いた作品、当時の人々が顕微鏡でのぞいたミクロの世界、さらには影絵や寄せ絵といった遊び心にあふれた作品も多数登場する。
 江戸時代後期の人々の豊かな想像力や観察眼、表現力に触れることができる、ユニークな展覧会だ。

日本の美を再発見「開山・栄西禅師800年遠忌 特別展『栄西と建仁寺』」

2014.03.30 Vol.614

 今年は、日本に禅宗(臨済宗)を広め、京都最古の禅寺・建仁寺を開創した栄西禅師(ようさいぜんじ、1141〜1215)の800年遠忌にあたる年。これにあわせ、栄西ならびに建仁寺にゆかりの宝物が東京国立博物館に集結。
 展覧会では、近年、著作や自筆書状の発見が相次ぎ、関連研究が進んでいる栄西の足跡を、貴重な資料でたどる。栄西の著述のほか、建仁寺に関わりのある禅僧の活動も紹介し、栄西の伝えようとしたものや、建仁寺が日本文化の発展に果たした役割を検証する。
 さらに、建仁寺ゆかりの名品たちも本展の大きな見どころ。会場では、建仁寺の至宝といわれる俵屋宗達の最高傑作、国宝『風神雷神図屏風』を全期間展示。また、尾形光琳の重文『風神雷神図屏風』も、本館7室〈日本美術の流れ〉で展示されるので、両者を見比べて鑑賞するのもおすすめだ。他にも、安土桃山時代に海北友松によって描かれた重要文化財の『雲龍図』など、800年の時を経て伝えられる日本の美に感動必至。

再発見の楽しみ「中村一美展」

2014.03.16 Vol.613

 新たな絵画・絵画理論を探求し続ける現代美術家・中村一美の全貌を伝える注目の個展。1980年代から本格的な絵画制作を始めた中村は、“Y型”モチーフを用い、樹木という形象を浮かび上がらせる抽象作品で注目を集めた。中村は、ジャクソン・ポロックやマーク・ロスコといった、西欧モダニズム絵画の到達点とみなされていた戦後アメリカの抽象表現主義絵画を研究。彼らの芸術を乗り越える新たな絵画理論を探求し、日本や中国、朝鮮の伝統絵画にも目を向け、精力的な活動を続けてきた。
 本展では、学生時代の習作から最新作『聖』まで約150点の作品を展示。初期の“Y型”モチーフの作品から、社会性を持った1990年代の作品、鳥のイメージを用いて死と再生を描いた2000年代半ば以降の作品など、作品をたどりながら彼の絵画実践の全貌を知ることができる。また、本展の会場では、2010年に構想されながら実現していなかった、斜行グリッドによるウォール・ペインティングを初公開。

再発見の楽しみ「101年目のロバート・キャパ 誰もがボブに憧れた」

2014.03.15 Vol.613

 キャパの生誕から101年目に合わせ“伝説の戦場カメラマン”ロバート・キャパから“人間・キャパ”へと焦点を変え彼の等身大の魅力を紹介する。
 スペイン戦争や第二次世界大戦など数多く戦場で歴史的瞬間をとらえ、報道写真の伝説となったキャパ(本名アンドレ・フリードマン)。一方で彼は、ギャンブルが好きで女性たちを愛し、多くの友人たちから“ボブ”と親しまれたふつうの男でもあった。その生涯も決して順風とはいえず、愛した女性・ゲルダ・タローとの死別や写真家としての葛藤など、幾度となく挫折や失意を経験している。
 本展では、東京富士美術館のコレクションを中心に、キャパの真骨頂ともいえるユーモアや生きる喜びが表れた作品を中心に5章で構成。1932年に撮影した亡命中のトロツキーや、第二次世界大戦、スペイン内戦時の戦場写真といった時代をとらえた作品の他、戦場で垣間見られた人間性をとらえた作品、“恋多き”男という一面を伝える作品、さらには日本初公開となる、キャパがベッドで眠るゲルダをとらえた写真も登場する。

アジアから世界へ 磯崎真理子展

2014.03.02 Vol.612

 焼き物のテクニックを基に、ひもづくり(紐状にした粘土を積み上げて成形する方法)で土を積みながら、斬新で独特な形状の作品を手掛ける陶芸作家・礒崎真理子。昨年、惜しまれながらも急逝した礒崎の、初期から2013年までの代表作を紹介する。
 化粧土を掛けて磨き独特な質感を持たせた初期の作品、大理石の作品、鮮やかな色が光る繊維強化プラスチックの作品など、さまざまな素材を使いながらも、一貫して“形と空間”を追求した姿勢を感じ取ることができる。礒崎は「作品と空間の関係、作品が空間へ関わっていく過程で周囲との間に生まれる空気感のようなものに興味があり、それらのことを模索しながら、日々制作している」と語っている。卓越したテクニックにより、まさに周囲に空気感を生み出す礒の作品。イタリアを拠点とし、日本と往復しながら活動してきた作家らしい、自由でしなやかな作品を楽しんで。

アジアから世界へ アジア・アナーキー・アライアンス

2014.03.02 Vol.612

 台湾の若手キュレーターのもと、アジア気鋭のアーティストが集結。トーキョーワンダーサイト渋谷、トーキョーワンダーサイト本郷にて同時開催され、台北でも巡回展が開催される。
 グローバル化が進み、新自由主義と情報ネットワークの時代を迎えてあらゆる境界線が曖昧になりつつある現代。その一方で、アート界では現代美術においても西洋美術を主流とする時代が続いている。その状況に一石を投じるべく、アジアのアーティストたちがさまざまな社会問題をアートの文脈に載せて発信する。台湾の若手キュレーター育成を目的として実施している公募プログラムによって選出されたウー・ダークンと、トーキョーワンダーサイトが共同キュレーション。台湾を代表する映像作家、チェン・ジエレンやユェン・グァンミンナド台湾アーティストのほか、インドネシアや中国の作家が出展。

アートでめぐる、意識の旅「川島秀明展『come out』」

2014.02.16 Vol.611

 サッカーワールドカップブラジル大会のポスタープロジェクトに日本から選ばれた人気の現代アーティスト・川島秀明の個展。無地の背景に、抽象化して描かれた人物像。ふわりとたなびく妖しい雰囲気は、人間というより魂そのものを想像させる。それを“自画像”と呼んでいた川島だが、その後2010年ごろから意識を他者へと向け始め、モデルを想像させる具体的な個性を持つ人物像を描くようになっていた。
 小山登美夫ギャラリーでの初個展から約10年経った今回の展覧会では、また新たな境地を見せる。実は過去に2年ほど、比叡山延暦寺で天台宗の修行を経験したという川島。そのときに出会った「一隅を照らす」という最澄の言葉を、最近よく思い返すという。各々の持ち場で最善を尽くしなさい、という意味のこの言葉が、川島にどんな視点を与えたのか。固有の色から解かれ、形は自由にデフォルメされた、新たな“魂”たち。こちらを見返してくる人物像は、これまでの川島作品とはまた違う存在感で、鑑賞者の心に残り続ける。

アートでめぐる、意識の旅「さわ ひらき Under the Box, Beyond the Bounds」

2014.02.16 Vol.611

 ロンドン在住の映像作家・さわひらきの展覧会。国内外で注目を集めた作品も含め、初期作品から新作までを紹介。さわの作品に一貫して見られる“領域”への関心をテーマに展覧会を構成する。
 室内を小さな飛行機が横切ったり、やかんが歩き出したり、映し出されるのは現実にはありえないのに、なぜか親しみを感じる光景。いつだったか、そんな白昼夢を見たような…。さわの作品は、それぞれの心の中の、あるいは記憶の向こうにある“領域”について考えさせてくれる。
 本展は『箱の下』『ラジエーターの後ろ / 配管』『境界の向こう側』の3部で構成。あるときは物理的に閉ざされた空間という領域、またあるときは記憶という時間軸を伴った領域。ドローイングや立体作品だけでなく、映像と空間そのものを作品として、さわが指し示すさまざまな領域を巡っていく。物理的な空間と、記憶や意識の中といった形の無い領域が交差する、意識の旅を楽しんで。

新たな視点、新たな観念との出会い「イメージの力–国立民族学博物館コレクションにさぐる」

2014.02.02 Vol.610

 人類は、早くから物事を視覚化してきた。イメージは文字に先行し、さらには言葉の源になったと考えられている。そんなイメージの創造と、それを享受するあり方に、人類共通の普遍性はあるのか。この壮大な問いをテーマに揚げ大阪の国立民族学博物館の膨大なコレクションから、世界のさまざまな地域で生み出された優れた造形作品を紹介。約600点にも及ぶ古今東西の収蔵品を通して“イメージの力”の謎に迫る。
 会場には、博物館でおなじみの仮面や神像といった造形物から現在活躍中の美術家の作品までが一堂に集結。国立民族学博物館と国立新美術館との共同企画である本展覧会では、イメージを地域や時代ごとに分類するのではなく、共通した造形性や効果、機能に着目して紹介。博物館の資料が、現代美術のインスタレーションの手法で展示されるなど、美術館と博物館の垣根を超えたかつてない視点で、作品を鑑賞することができる。

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