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[アートを通して世界に触れる]総合開館20周年記念「ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館」

2017.05.20 Vol.691

 今、世界で最も活躍する写真家の一人であるダヤニータ・シンの、日本の美術館では初となる個展。

 1961年にインド・ニューデリーに生まれたダヤニータ・シンは、国内のデザイン大学を経てニューヨークでドキュメンタリー写真を学び、欧米雑誌のカメラマンとしてキャリアをスタートさせた。しかし徐々に、外国人が望むエキゾチックで混沌とした貧しいインドのステレオタイプなイメージに疑問を持ち、1990年代後半にフォトジャーナリストを辞め、アーティストとしての活動を開始する。

 さまざまな風景をとらえる彼女の作品は一見、日常的でありながらつい引き込まれる物語性をはらんでおり、ドキュメンタリーとフィクション、夢と現実、不在と実在がない交ぜとなったユニークな世界を展開。詩的な美しさを持ち合わせる一方で、現代社会におけるさまざまな問題も示唆されている。近年は〈インドの大きな家の美術館〉と名付け、作品全体を移動式の“美術館”として展示するスタイルを考案した。

 本展では、初期の代表作から転機となった〈セント・ア・レター〉を展示する他、最新作を含めた彼女の“美術館”を日本初公開する。

“見れば見るほど、世界が広がる”ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展  16世紀ネーデルラントの至宝 — ボスを超えて —

2017.05.08 Vol.690

 旧約聖書の物語を題材にした、巨匠ピーテル・ブリューゲル1世の傑作『バベルの塔』をはじめ、16世紀ネーデルラントの重要作品が集結。『バベルの塔』は24年ぶりの来日となるほか、巨匠ヒエロニムス・ボスの油彩画2点『放浪者(行商人)』『聖クリストフォロス』も初来日。代表的な巨匠に加え同時代の作家たちも数多く紹介。宗教から風景や人々の暮らしまで題材を広げていった、16世紀ネーデルラント芸術の豊かさを知ることができる。

 本展では『バベルの塔』に、かつてない視点で迫ったプロジェクトも見どころ。今回、東京藝術大学COI拠点の持つ高精度の複製技術により制作された、実物比約300%の巨大複製画を展示。実物の鑑賞では見えにくい細部まで、じっくり堪能できる。また会場では『バベルの塔』のなかの見どころの部分をCGにし、動画で見せるスペシャル映像も上映。ブリューゲルより前にバベルの塔を題材にした作品なども紹介しながら、同作が傑作と呼ばれる理由を徹底解説する。

 また今回はブリューゲルにも影響を与えたとされる奇想の画家・ボスにも焦点をあてる。ボスの模写や、モチーフを借りた作品なども紹介。ボス作品の魅力だけでなくその影響力にも注目する。

“見れば見るほど、世界が広がる”エリック・カール展 The Art of Eric Carle

2017.05.08 Vol.690

 ベストセラー絵本『はらぺこあおむし』で知られる、アメリカの絵本作家エリック・カールの世界を、貴重な原画・作品で伝える展覧会。米国・マサチューセッツ州にあるエリック・カール絵本美術館の全面協力を得て、選りすぐりの絵本原画など約160点の作品を展示する。

 展覧会は2部構成。第1部では、カールが世に送りだした80タイトルにおよぶ作品の中から『はらぺこあおむし』や『こぐまくん こぐまくん なに みているの?』など、日本でもよく知られた絵本の原画を展示。第2部では、影響を受けたフランツ・マルク、パウル・クレー、交流のあったレオ・レオニらゆかりのある美術家、作家の作品や、日本の絵本作家いわむらかずおとの共作絵本の原画の他、舞台の衣装デザインや立体作品なども展示。カールのアーティストとしての側面に迫る。

『はらぺこあおむし』が生まれてからおよそ50年。今なお、その輝きは失せることなく、親から子へ受け継がれ続けている。永遠の名作絵本を生み出したエリック・カールの真髄に触れて。

人を撮る。人生を撮る。松蔭浩之展「LUST」

2017.04.22 Vol.689

 近年、映像やインスタレーション、バンド活動など表現媒体の垣根を越えた活動を展開している写真家・現代美術家の松蔭浩之。

 ここ数年は「BLUE NOTE TOKYO Jam」でJAZZ 界のレジェンドたちを50名以上、さらに週刊「女性自身」(光文社刊)において日本の文化人延べ300 名以上を撮影し、肖像写真の世界でも存在感を発揮している。

 そんな松蔭が「LUST」と題した本展では、デビュー当時から撮り続けている女性の肖像写真に、ありうるべき未来を多面的に投影し、その欲望の根源を映した圧倒的な美しさを表現していく。また、ギャラリー奥の和室と小展示室では「松蔭浩之展:Early Days」を同時開催。高校・大学時代の松蔭の作品や資料の数々を展示する。

 急速に進行するグローバリゼーションと引き換えに、人間の大きなロマンが消失してしまったと松蔭はとらえている。ネットで簡単に情報を手に入れ、SNSで簡単に“表現”することが可能な時代。松蔭がなぜ肖像写真にこだわり続けるのか、写真を通して何を表現しようと試みているのか。30年に渡り飽くなき欲求を持ち続ける表現者の姿を、2つの展示を通して感じてほしい。

人を撮る。人生を撮る。ロベール・ドアノー写真展「ドアノーのパリ劇場」写大ギャラリー・コレクションより

2017.04.22 Vol.689

 パリの街角の風景をこよなく愛した20世紀フランス写真界の巨匠ロベール・ドアノー(1912-1994)のオリジナルプリントを展示する写真展。

 パリ郊外ジャンティイに生まれたドアノーは、印刷分野の職業学校で石版画の技術を学んだ後、広告デザインのスタジオを経て写真の道に。写真家アンドレ・ヴィニョーの助手に。第二次世界大戦時には苦難の時を過ごすも、戦後はフォトジャーナリズム誌全盛期の潮流に乗り、フリーランスの写真家として活躍。1950年に『LIFE』誌の依頼で撮影された「市庁舎前のキス」は、愛の国フランスを象徴する写真として、撮影されてから60年以上を経たいまもなお、広く世界中で知られている。
 本展では写大ギャラリー・コレクションより「こども」「パリ郊外」「街」「物陰のパリ」「恋人たち」「芸術家」の6つのテーマに沿って厳選。

 世界的なフォトエージェンシーであるマグナム社より誘いを受けながらも、パリの街で生きる市井の人々とともにあることを選んだドアノー。時代が移り変わっても色あせないその魅力を感じて。

たたずめば、聞こえてくる。片桐功敦 展「SACRIFICE〜福島第一原発30km圏内の花たちが語る言葉〜」

2017.04.08 Vol.688

 Tomio Koyama Galleryの小山登美夫氏監修で、日本の美術のシーンを新しい視点で切り開いていくギャラリーや美術に関わる人に焦点をあてる〈Hikarie Contemporary Art Eye〉。第6弾は、華道家・片桐功教による、福島でのプロジェクトを紹介。

 震災から3年目を迎えた2013年の夏、環境省の絶滅危惧2類に指定された希少な在来植物“みずあおい”が福島県南相馬市沿岸部の津波の跡地に咲き乱れたという。華道家として植物と向き合ってきた片桐は、このときから津波の跡地や廃墟、ゴーストタウンとなった街の片すみなど、被災した各地に趣き、そこで花を生け続けた。
 一人の華道家が、人が去った場所にどんな思いを託して花を生けたのか。震災から6年目を迎えた今、我々はその情景に何を思うのか。

 11日にはオープニングパフォーマンス「フレコニアン紀に咲く花、その言葉」(いけばなパフォーマンス:片桐功敦×ポエトリーリーディング+ラップ:狐火)を実施(18時30分?)。

【時間】11?20時【休】会期中無休【料金】入場無料【問い合わせ】03-6434-1493【交通】渋谷駅直結 渋谷ヒカリエ 8階【URL】 http://www.hikarie8.com/cube/

たたずめば、聞こえてくる。『ruichi sakamoto async 坂本龍一 設置音楽展』

2017.04.08 Vol.688

 坂本龍一の8年ぶりとなる新作アルバム『async』が先日、発売され早くもファンを中心に絶賛が広がっている。実はこのアルバム、「あまりに好きすぎて、誰にも聴かせたくない」という本人の思いをそのままに、リリース以前の視聴やサンプル盤の配布が一切行われず、いっそうファンの想像をかきたてていた。

 今回ワタリウム美術館では、「整った環境で音楽と向き合ってもらえたら」という坂本の思いと、本作が映像喚起力の強い音響作品であるという点から、音と映像で坂本の最新作を堪能する展覧会を実施。会場では、5.1chサラウンドを坂本が最も信頼するムジークエレクトロニクガイサイン製スピーカーにて再生。長年のコラボレーターである高谷史郎(空間構成・映像)も参加し、かつてない音楽と映像のインスタレーション空間を出現させる。2階は坂本によるアルバム全曲の5.1chサラウンドMIX視聴と高谷の映像で構成されたメインフロア。3階は、ソロアルバム制作時に多くの時間を過ごした空間を映像で抽象的にとらえ、その空間が持つ環境音とアルバム楽曲の中の音素材を混ぜたシンプルな映像とで構成するインスタレーション空間となっている。さらに4階ではタイ出身の映像作家・映画監督アピチャッポン・ウィーラセクタンとのコラボとなる映像作品を上映する。

【時間】11?19時(水曜は21時まで)【休】月曜【料金】大人1000円、学生(25歳以下)500円【問い合わせ】03-3402-3001【交通】地下鉄 外苑前駅より徒歩8分【URL】 http://www.watarium.co.jp

「所蔵作品展 MOMATコレクション」

2017.03.28 Vol.687

※展示替えあり。前期展示:?4月16日 後期展示:4月18日?5月21日

アートで花を愛でる、春を感じる! Mika Ninagawa「earthly flowers, heavenly colors」展

2017.03.26 Vol.687

 新丸ビルの飲食店ゾーン「丸の内ハウス」では2008年からthe MOTHER of DESIGNと題し、話題のクリエーターの展覧会を行っている。

 東京も春爛漫の季節を迎える今回は、写真家、映画監督と多彩な顔を持ち、国内はもとよりアジア、ヨーロッパ各国で活動する蜷川美花の個展を開催。

 本展では、蜷川作品の中でも人気の高い「花」のシリーズの最新作を、写真集『earthly flowers,heavenly colors』の中から紹介する。丸の内ハウスの外光が入るホール空間では、透過性のフィルムを使ったインスタレーションを展示。時間帯によって刻々と変化する太陽光が、蜷川作品独特の色彩に、どんな表情をもたらすのか。異なる時間帯に訪れて、その変化を楽しんでみたい。またギャラリースペースでは20点近い最新のプリント作品を展示。蜷川ワールドを体感できる空間が出現する。丸の内エリアで行われる春イベントと合わせて、咲き誇る花の美しさも堪能して。

広がって、伝わって。『花森安治の仕事 — デザインする手、編集長の眼』

2017.03.13 Vol.686

 ドラマ『とと姉ちゃん』のモデルとなった大橋鎭子とともに『暮しの手帖』を手掛けた稀代のマルチアーティスト花森安治(はなもり・やすじ、1911?1978)に迫る展覧会。

 1946年3月、花森は大橋鎭子を社長とする衣裳研究所を銀座に設立、新進の服飾評論家としてデビューする。“直線裁ち”という誰もが簡単に作れる洋服を提案した雑誌『スタイル・ブック』が評判を呼ぶが、その後、かねてより計画していた生活家庭雑誌『美しい暮しの手帖』(のちの『暮しの手帖』)を1948年9月に創刊。後に社名も暮しの手帖社へと変更した。

 衣食住をコンセプトにしつつも、社会と庶民の暮らしを見つめ続け30年間にわたり一切広告を入れず、雑誌は発行100万部に迫るまでに成長。実は、その表紙画からカット、レイアウト、新聞広告、中吊り広告まで、取材や執筆はもとより、制作から宣伝まですべてを手がけたのが編集長・花森安治だった。

 展覧会では花森の足跡を全6章で追う。学生時代の作品や戦時下の仕事にも着目しつつ、『暮しの手帖』編集長として手掛けた多彩な仕事を詳しく紹介するほか、花森が誌面で紹介した日用品や愛用品なども展示。

広がって、伝わって。『TARO賞20年/20人の鬼子たち』

2017.03.13 Vol.686

 日本を代表する芸術家・岡本太郎の没後、その芸術への情熱を継承する新たな才能を発掘すべく創設された岡本太郎記念現代芸術大賞 (2006年に岡本太郎現代芸術賞に改称)、通称“TARO賞”。創設から20年経った現在、TARO賞は現代芸術のアワードとして広く認知され、入選者は実に410名(組)に上る。入選作家の多くが、その後目覚ましい活躍を見せていることも、注目に値する。

 本展ではTARO賞20年を記念し、歴代の入選作家20人の作品を一挙展示。出展作家は、字治野宗輝、梅津庸一、大岩オスカール、オル太、風間サチコ、加藤翼、加藤智大、金沢健一、キュンチョメ、斉と公平太、サエボーグ、関口光太郎、天明屋尚、東北画は可能か?、ながさわたかひろ、西尾康之、村井祐希、山口晃、吉田晋之介、若木くるみ。
 1996年に84歳で亡くなるまでアトリエ兼住居として太郎が暮らした岡本太郎記念館に“太郎の鬼子”たち20人が一堂に集う。個々の作品から空間全体に広がる、太郎の魂を感じたい。

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