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ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』目の前が真っ白に…感染症「ミルク色の海」がまん延する世界

2022.01.11 Vol.749

 長引くコロナ禍。外出自粛によるおうち時間が増え、自宅でゆっくり読書や映画鑑賞を楽しんだ人も多いだろう。昨年、1947年に出版されたフランスの小説、カミュ『ペスト』が160万部を突破したニュースは記憶に新しい。

 そんな中、NHK Eテレ「100分de名著」で作家の高橋源一郎が絶賛し、改めて注目を集めるパンデミック文学が昨年3月に文庫化したポルトガルのノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴの『白の闇』(河出文庫)である。舞台はとある都市、突然失明したある男から、目の前が真っ白になる原因不明の感染症「ミルク色の海」が次々と広がっていく。事態を重く見た政府は、失明者と感染者を強制的に精神病院に隔離し始める。唯一、視力を失わなかった「医者の妻」が見た世界とは……。

 固有名詞のない登場人物、かぎかっこのない会話など独特の文体から、感染症に追い詰められた人間の姿が浮かび上がる。

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