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見て、感じて、そしていろいろ考えたい作品『カスパー』

2023.03.01 Vol.753

 

 2019年のノーベル文学賞受賞作家でもあるペーター・ハントケの『カスパー』が舞台化される。

 同作は幼少期より暗い牢のような場所に約16年間監禁され、発見された当時は一つの文章しか話せなかったといわれる実在したドイツ人孤児、カスパー・ハウザーを題材に描いたもの。主人公のカスパーを今回が初舞台となる寛一郎が演じる。

 寛一郎を支えるキャストとして、バレエやコンテンポラリーダンサーとしての華々しいキャリアを持つ首藤康之、昨年『ピサロ』で今回の演出を務めるウィル・タケットとも組んだ下総源太朗、そして文学座若手俳優の萩原亮介がカスパーをことばの世界へと誘い、調教する3人の謎の男“プロンプター”役を演じる。

 カスパーは史実によれば16歳で保護された当初、言葉を全く理解しておらず、また言葉に意味があることさえ知らなかったといわれている。そんな彼に周囲の人々は教育を施し、ただの音でしかなかった“言葉”に意味があることを彼は知り、自分というものの存在、また他者との関係について考えるようになっていく。やがて自分のこと、周囲の事象を他者に伝える手段として自らが言葉を使うようになっていく過程で、彼が何を感じ、何を得て、何を失っていったのか。それらを、カスパー演じる寛一郎と共に、この実力派キャストたちがセリフだけでなく身体表現を駆使して描いていく。

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