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芸術の都、パリでスリに遭った日本人アーティストが伝授する今年の傾向と対策?!

2025.07.04 Vol.web original

街を歩くだけで映画の世界へ…映画ファン垂涎のパリおすすめスポット

 今年もフランスのカンヌ国際映画祭に参加した僕(映画監督/映画評論家)は、帰りに3日間パリに滞在した。

 芸術の都パリを訪れるのはかれこれ10回目だが、個人的にヨーロッパの中でも最も好きな街の一つだ。僕はどの国に行っても、ひたすら歩くのが好きなのだが、パリは別格。歴史的な建造物や街並み、太陽の光の色合いや青空などを含めて、まるで美しい絵画の中を歩いているような気分になるからだ。非現実的な現実世界が当たり前のように広がっているロマンティックな都市である。

 パリはもちろん、美術館天国でもある。ルーブルやオルセー、オランジュリー、ポンピドゥー・センターなど、重要なアートが展示された世界屈指の魅力的な美術館が至る所にあるのもたまらない。オルセーとオランジュリーはセーヌ川をはさんで徒歩5分ほどの距離にあるので、簡単にハシゴすることができるのだが、印象派好きには垂涎の贅沢なコースといえよう。

 ノートルダム大聖堂やエトワール凱旋門、エッフェル塔、オペラ座といったお馴染みの観光名所も一度は足を運びたいところだが、映画ファンには、ノートルダムのそばにある歴史的な書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」をお薦めしたい。リチャード・リンクレーター監督の『ビフォア・サンセット』(04)にも登場した小ぢんまりとした、しかし文学の歴史が濃密に凝縮されたようなチャーミングな書店だ。近年は観光地化しており、あまり落ち着いて店内を見ることはできないが、あの珠玉の恋愛映画3部作のファンには是非立ち寄ってみてほしい。そこから少し歩くと、レオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋人』(91)が撮影された、1607年開通のパリ最古の橋「ポンヌフ橋」が架かっている。オランジュリー美術館の少し西側、グラン・パレの近くにある、ウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』(11)で印象的な使われ方をしていた「アレクサンドル3世橋」も、パリの象徴的な橋の一つだ。

映画関連の話を続けると、サン=ミッシェル通りとエコール通りの交差点のそばに、「Le Champo」「Reflet Médicis」「Filmothèque du Quartier Latin」という3軒の名画座が並んでいるシネフィルご用達の通りが存在する。僕はここで今回、マイケル・マン監督のホラー映画『ザ・キープ』(83)とリチャード・リンクレーターの監督2作目『スラッカー』(90)というレアな2本を初めてスクリーンで鑑賞することができた。このエリアには映画のブルーレイやDVD、音楽のLPやCDなど品揃えが豊富な「Gibert」や書店が立ち並び、5分ほど歩くとホラー映画のソフトや書籍の専門店「Metaluna」もある。ここから南に少し歩いていくと、17世紀に作られた美しく広大な都会のオアシス、リュクサンブール公園が広がっている。

 僕が一番好きなエリアが、18区にあるパリで一番高い丘、モンマルトル。石畳みの古い街並みが残った芸術家の聖地だ。ランドマークともいえる巨大な教会、サクレ・クール寺院からは、パリの絶景を眺めることができる。この教会は一般に開放されており、無料で中に入ることができることを今回初めて知った。ゴッホやルノワール、モディリアーニ、ピカソといった錚々たる芸術家たちの溜まり場だったキャバレー、オ・ラパン・アジルは今もシャンソイエとして存続、アートの歴史が詰まったオレンジ色のキッチュな外観が特徴的な場所だ。1886年にゴッホと弟テオが住んでいたアパートや、モンマルトル博物館も芸術愛好家には見逃せない。かつてキャバレーとして栄えた有名な観光ナイトスポット、ムーラン・ルージュもこの近くにある。

カンヌってなんだ?!入門ガイドつき映画祭最新レポート!

2025.06.02 Vol.web original

 今年もカンヌ国際映画祭に参加した。通算5回目。世界最高峰の映画祭が開催されるカンヌはフランス南部の地中海に面したリゾート地で、パリからは飛行機でニースまで行き、そこからバスやタクシーで1時間弱で到着する(パリから電車でも行けるが約5時間かかる)。今年は5月13日から24日まで12日間に渡って開催された、第78回を迎えたカンヌ国際映画祭だが、僕は13日の午後カンヌに到着し7泊して、20日朝の上映を観てカンヌを発った。

 カンヌは小さな街で、映画祭会場が密集している中心部は簡単に歩いて回ることができる。カンヌ国際映画祭の公式作品(オフィシャル・セレクション)は、目玉の「コンペティション」や「ある視点」「アウト・オブ・コンペティション」など様々な部門で構成されているが、並行開催の「監督週間」と「批評家週間」は公式作品ではなく、異なる別の団体が運営する部門であり、「監督週間」の会場はメイン会場から徒歩10分の距離にあるシアター・クロワゼットで、「批評家週間」の会場ミラマーは、そこからさらに東に徒歩7分程度の距離に位置する。

 僕は今年もコンペティションの作品を中心に35本を鑑賞した。映画祭は連日朝8時半頃から上映が始まり、ミッドナイトの上映がある場合は深夜3時頃までスクリーニングが行われている。文字通り映画のお祭りが2週間弱続くことになる(映画祭前半で帰る人が大半だが)。その前に、カンヌの戦いは朝7時前から始まる。なんの話だと思うかもしれないが、オンラインのチケット予約が連日7時に始まるのである。チケットがないと鑑賞できない上映が多いのだが、争奪戦で数分でチケットがなくなるので、毎朝7時前に起床することがルーティンになる。映画祭期間中は必然的に毎日寝不足になるわけだ。ちなみに、カンヌ映画祭には毎年世界各国からインダストリー(配給会社のバイヤーや製作者、映画祭関係者など)が3万人、プレスが5千人集まると言われている。 週末はフランス国内の観光客も詰めかけるので、会場周辺は常にごった返していた。

 カンヌ名物といえば、レッドカーペット。メイン会場のリュミエール(映画の発明者リュミエール兄弟から取られている)では、連日18時以降に「ソワレ」と呼ばれるコンペ作品を中心としたプレミア上映が行われ、スターたちがレッドカーペットを練り歩く。ソワレにはドレスコードがあり、男性の場合はタキシードかイヴニング・ガウンの着用を求められるが、スーツでも可。ただしボウタイが必要になる。そんなこともあって、僕は一度もソワレで映画を観たことがない(面倒だから)。しかし朝や日中、深夜の上映でリュミエールに入るので、毎日のようにレッドカーペットを歩くことになる。が、この会場がキャパ2300という広さで、1階席は場所によってかなりスクリーンが見づらく、僕は2階席のサイドの前方で観るようにしている。音響の設備は悪くないが、特殊な形状の広大な会場でサウンドの響きは良くなく、スクリーンもあまり大きくない。なので、リュミエールは映画祭会場の中で僕が一番好きではない会場だったりする。

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