SearchSearch

「空気を読む」の正体に迫る 二兎社公演41『ザ・空気』

2017.01.08 Vol.682

 2014年に森鴎外をモチーフとした『鴎外の怪談』、2016年は女流作家・樋口一葉の生涯を描いた『書く女』と明治期を舞台とした作品が続いた二兎社だが、今回は日本の「今」を描く現代劇。それもテレビ局の報道現場というメディアの最前線で、実際に起こっているであろう問題を題材に、昨今の日本全体を覆う「空気を読む」という独特の現象の正体に迫る。

 舞台はある大手テレビ局の報道局の一角。その日の夜、局の人気報道番組で、ある特集が放送される予定だった。近頃では珍しい力の入った「調査報道」。デリケートな内容とあって、局内でも慎重に扱われてきた案件なのだが、放送数時間前になって局の上層部から突然の内容変更を命じられ、現場は大混乱に陥るのだった。
 テレビの報道現場という見知ってはいるが身近ではない場所を舞台に喜劇のスタイルで描くことで、観客には俯瞰した状態でこの現象の正体が提示される。ただそれは“向こう側”だけのことではなく、我々自身のことでもある。

 笑った後に「う?ん」とちょっと考えさせられる作品だ。

人間ドラマにどっぷりつかってみる『同じ夢』

2016.01.25 Vol.659

 劇作家、演出家、そして俳優という3つの顔を持つ赤堀雅秋。ここ数年は自ら主宰を務める劇団、THE SHAMPOO HATの公演はもとより、多くの外部公演から作・演出、そして俳優としてもひっぱりだこ。加えて映画のメガホンも握るなど多忙の日々のなかでも、年に1本は新作を書き下ろすなど、バイタリティーあふれる活躍っぷりには目をみはるものがある。

 赤堀の作品は特段センセーショナルな出来事が起こるわけではなく、むしろ地味な人々のよくあるお話が淡々と進行する。ただし、登場人物たちのダメな部分や闇の部分の描き方が絶妙。平々凡々に見える人物から見え隠れする凶暴性だったり、ユーモアあふれる人物の裏側にある物悲しさといったものが絶妙なタイミングとあんばいで顔を出し、その人々が抱えるドラマにぐいぐい引き込まれる。

 そんな赤堀の新作書き下ろしは、中年のおっさん4人に2人の女性が絡むお話。おっさん4人を演じるのは光石研、大森南朋、赤堀雅秋、田中哲司という一筋縄ではいかないベテランたち。ヒロイン役には昨年に続いての舞台出演となる麻生久美子。そしてデビュー5年目にして数多くの作品に出演し、若手演技派女優として頭角を現している木下あかりと豪華な顔ぶれとなっている。

『同じ夢』
【日時】2月5日(金)〜21日(日)(開演は平日19時、土13時/18時、日13時。※6日(土)、7日(日)は15時開演。11日(木・祝)は14時開演。10・17・18日は14時の回あり。火曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)
【会場】シアタートラム(三軒茶屋)
【料金】全席指定 一般6800円、高校生以下3400円(世田谷パブリックシアターチケットセンター店頭&電話予約のみ取扱い、年齢確認できるものを要提示)、U24(18〜24歳)3400円(事前の会員登録が必要)、トラムシート5800円
【問い合わせ】世田谷パブリックシアター(TEL:03-5432-1515 [HP] http://setagaya-pt.jp/ )
【作・演出】赤堀雅秋
【出演】光石研、麻生久美子、大森南朋、木下あかり、赤堀雅秋、田中哲司

ピンターの作品を長塚圭史が手がける

2014.08.31 Vol.625

 阿佐ヶ谷スパイダースの長塚圭史のソロプロジェクトである葛河思潮社。立ち上げ以来、三好十郎の戯曲を上演してきたのだが、今回はハロルド・ピンターの『背信』を上演する。

 ピンターはイギリスの劇作家で、映画の脚本も手がける。『フランス軍中尉の女』『日の名残り』と聞けば、ちょっとは身近な感じがするかもしれない。

 彼の作品は表面上はシンプルな劇構造を取りながら、その内側に凝縮された強い圧力を持つ感情が秘められているといったもの。その作品を多く手がけるデヴィッド・ルヴォーに言わせると「ピンターの作品は日本で上演するのに適している」のだそうだ。

『背信』は1人の女と2人の男による不倫劇。劇が進むにつれて時間が逆行していくという構造を取る。観客には劇が進み、時間がさかのぼるにつれ結果に対するプロセスが提示されるのだが、その過程で「背信」という言葉の意味が揺らぎ始める…。

Copyrighted Image