神奈川県の横浜市が2027年3月の「国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」の開幕前を目標に市内全域で路上喫煙禁止の導入を目指すという。同市の山中竹春市長が昨年12月10日の市議会本会議で表明した。
条例制定に向けては2月13日から3月15日にかけてパブリックコメントの募集を行い、そこでの意見を踏まえたうえで5~6月に開催予定の令和8年第2回定例会でポイ捨て条例改正の議案提出・審議が行われ、令和9年1月ごろに条例施行というスケジュールが予定されている。
路上喫煙を全域で禁止にする条例については、東京都の一部の区、大阪市といった自治体が導入している。東京都は2020年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピック、大阪は万博に向けてといった、ある意味「面子」を気にした政策という面は否定できない。
横浜市は「望まない受動喫煙の防止」をはかるため、すでに令和7年4月から公園の禁煙化を実施。また「横浜市空き缶等及び吸い殻等の散乱の防止等に関する条例」(ポイ捨て防止条例)を改正し、市内全域において「歩行中の喫煙をしない」としていたものを一段階進めて「路上喫煙を禁止」とするという方向であることから、市民にもすんなりと受け入れられそうではある。
一方でこの条例が施行された際の問題点は喫煙所の設置が追いついていないこと。大阪では喫煙所の少なさから路上喫煙所以外の路上で喫煙してしまう人が多く、また喫煙所が増えた後もその多くはいわゆる飲食店やパチンコ店の中に民間が作っているもので、利用できるのはその施設の営業時間内だけという体裁を整えるための“水増し”的な喫煙所も多くあった。
今回の横浜市の場合はどうか? 株式会社プランワークスが1月20日に発表した「横浜市内における分煙施設の整備について」というリポートによると、横浜市全域で必要な喫煙所数は614カ所なのだという。そのうえで横浜市が指定する喫煙禁止区域内で必要な喫煙所数を91カ所と推計。現在の設置数は17カ所ということで、設置率は約19%でさらなる整備が必要ということになる。
実際に横浜の街を歩いてみると歩きたばこをする人はほとんど見かけないが、吸い殻のポイ捨てはさすがにゼロではない。このポイ捨てについては赤レンガ倉庫周辺や最寄り駅の日本大通り駅からの道のりではほとんど見かけることがなかったのだが、歴史ある繁華街・野毛では少し目についた。これは観光地や飲食街といった、地域ごとの性質の違いによるところと思われる。
ただ一つ、赤レンガ倉庫では考えさせられたことがあった。取材時、同施設には喫煙所は2つあった。一つは2号館の第1駐車場側の壁沿いに加熱式たばこ用のもの、もう一つは1号館の海側に紙巻きたばこも吸えるテントが設置されていた。しかしこのテントは催事中の受動喫煙対策として期間限定で設置されたもので、実質的にこの施設では加熱式たばこ用の1カ所しか喫煙所はないことになる。その喫煙所で70代から80代と思われる老人がうまそうに紫煙をくゆらせていた。そのたたずまいにはジャズの街・横浜で青春時代を過ごした者の粋とでもいおうか、そういった雰囲気が漂っていた。もしくは原田芳雄や松田優作が歌う「横浜ホンキー・トンク・ブルース」の歌詞の中に出てくる登場人物のような。
もちろん違反である。本来ならテントの喫煙所を教えてあげるべきなのだろうが、そういった老人にそこまで歩かせるのもどうなのか。またこれが車椅子の利用者だったらどうだろうか? そしてそもそもそれくらいの年齢の喫煙者に「紫煙をくゆらせられない」加熱式たばこに切り替えろというのもなにかしっくり来なかった。「そんなもん、たばこじゃないじゃん」とか言われそうーーというのは妄想がすぎるにしても、ここまで長く、決して安くはないたばこ税を収めてきた喫煙者には喫煙所を増やしてあげるくらいの優しさはあってもいいのではないだろうか…。
また、ある居酒屋で話を聞いた喫煙者は「自分は吸い殻のポイ捨てはしたことはない」と断ったうえで「そもそも空き缶と吸い殻が同列に扱われているけど、空き缶なんて自販機の横にゴミ箱があるんだから、そこに捨てるじゃないですか。今どき道端に空き缶捨てる奴なんて、よっぽどの事情があるか、意気がって最初からルールを守る気がない奴でしょ? たばこだって捨てるところを作ってくれればそこに捨てますし、今の喫煙者は吸える所を作ってくれればそこで吸いますよ」と語った。確かに空き缶とたばこの吸い殻というゴミになる過程が全く違うものを一つの条例でくくるのはいかがなものなのだろうか。

