映画『バンクーバーの朝日』豪華男優陣の中で光った高畑充希の存在

気をつけたのは“歌を練習しない”こと(笑)。 あれは“歌う”場面じゃなく“伝える”場面だったから。

NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』西門希子役や現在放送中の大河ドラマ『軍師官兵衛』黒田長政の妻・糸役で存在感を見せ、『チョーヤ 酔わないウメッシュ』で美しい歌声を披露するなど、いま何かと注目を集めている旬な女優・高畑充希。実は2007年から2012年まで6年間にわたってミュージカル『ピーターパン』で8代目ピーターパン役を演じるなど舞台経験も豊富な実力派。12月公開の映画『バンクーバーの朝日』など、今後も話題作への出演を控える彼女の、ポジティブスタイルに注目!

 今、最も気になる若手女優の1人、高畑充希。彼女が新たに挑んだ映画『バンクーバーの朝日』が12月20日より全国公開となる。同作は戦前のカナダに実在した日系人野球チーム・バンクーバー朝日の活躍がもたらした奇跡の実話を豪華キャストで描く感動作。高畑が演じるのは、妻夫木聡演じる野球チームリーダー・レジー笠原の妹・エミー。日系二世としてハイスクールに通いながら裕福な白人家庭でハウスワーカーとして働く少女。カナダ社会に溶け込もうとしない者もいるなか、エミーは前向きに努力し、奨学金を目指す。

「エミーは、言動や考え方がとてもしっかりしているんですが、実はふとした瞬間に10代の女の子らしさが垣間見えるんです。その少しアンバランスなところがエミーの魅力だと思います。奨学金がダメになった日の帰り道、一緒に歩くお兄ちゃんに何も言わず、1人で我慢するんです。だけど家に帰ってから違うところに向けて爆発しちゃったり(笑)。そんなところも10代ならではのかわいらしさかな、と思いますね」

 兄たちの弱小野球チームを温かく見守り続けたエミーは、しだいに勝ち進んでいく彼らに勇気づけられていく。戦争が近づき、日本人への風当たりが強まる中、それでも野球を愛し続ける彼らに、エミーは1つの歌を贈る。それは、今なお歌い継がれる野球ファンの愛唱歌『Take Me Out to the Ball Game』。湧き上がる涙を抑えながら、懸命に歌うエミーの姿は時代を超えた感動を呼び覚ます。この重要なシーンを演じるにあたり、意識したことは?

「気をつけたのは“歌を練習しないこと”です(笑)。あの場面で、すごく上手に歌うのはちょっと違うな、と思って。あそこは歌のシーンというより、伝えるシーンなんだと思ったんです。英語の発音は一生懸命、練習したんですけどね。英語のセリフで演じるのは今回が初めてだったので。でも歌の練習は一切しませんでしたね。もう当たって砕けろ、という思いでした(笑)。撮影のときは、本当に緊張していました。あのシーンは、自分が背負うものが大きすぎて。自分では、1回でOKを出したいと思っていたんですけど、緊張しすぎて、できる気がしなくて(笑)。でも石井監督が、私がダメな方向に行きそうになるのを、ふっと引き寄せて戻してくださったんです。それでなんとか平静に戻って、セリフの部分から歌い終わるまでカメラを回し続けた状態で、1回でOKを出すことができました。終わった時は本当にホッとしました(笑)。完成した映画を見たら、BGMを入れずに私の歌声だけで勝負してくれていたことが、すごくうれしかったです」

 彼女の歌声に、その場にいた共演者たちも大きな感動を覚えたようだ。

「みんな帰りのバスの中で、あの歌を歌っていましたね(笑)。歌を聞いているときの皆さんの顔がすごく素敵で、その表情にもすごく助けられたと思います。あの場面で、それまで別々に語られていた野球チームの人々とエミーの物語が交わって、一つになるところが、すごく素敵だと思いますね」

 メガホンをとったのは『舟を編む』で日本アカデミー賞を総なめにした石井裕也監督。石井監督との仕事も、自分を成長させてくれたと振り返る。

「石井監督は…“怪物”ですよ(笑)。もちろん監督にも葛藤や不安はあると思うんですけど、監督がそういうならそれが正解に違いない、とみんなに思わせてしまうんです。すごいビッグマウスなんですけど(笑)、それを有言実行するから、みんな、監督を信じるんです。サッカーの本田選手みたいな感じです(笑)。この映画は実際の出来事がもとになっているんですが、監督は誰よりこの映画のテーマを調べて勉強したという自信はある、と仰っていました。石井監督は、そういう事実をしっかり示してくれる。逆に、監督もスタッフや俳優を信用してくれるんですよ。だから、別にハードルを設けられているわけでもないのに、監督の期待をはるかに超える仕事をしないといけないような気になってくるんです」

 チーム朝日のメンバーを演じるのは、兄役の妻夫木の他、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮といった世代を代表する俳優たち。

「妻夫木さん以外、野球経験があるということもあって、皆さんすごく上手でした。私は野球が全然分からないんですけど、観戦シーンの撮影では、ただただ感激していました。妻夫木さんは、ほとんど野球をやったことが無いとおっしゃっていましたけど、それでも遜色なくプレーしていて、さすがだなと思いました。すごく練習したそうで、本当に努力の人だと思います。妻夫木さんってすごく気さくに、スタッフみんなと接するんですよ。あと、なんだかいつも楽しそう(笑)。今回は、他の皆さんも同じでしたね。とにかく撮影を楽しんでいる感じ。野球チームはみんな仲良くて、うらやましかったです(笑)。撮影中、私も何度か夕食にご一緒させて頂いたんですけど、やっぱり女子がいると皆さんが何となく気を使ってくださるというか、男同士の会話を楽しめないだろうなと思って、ほど良いところで切り上げて子役の子を連れて先に帰っていました(笑)」
 メンバーたちの本格的なプレーやチームの絆に加えて、巨大なセットで再現した日本人街の風景も見どころとなっている。
「セットは本当にかっこよかったです。私自身、オープンセットで撮影するのが初めてだったこともあって、本当に感動しました。セット内にいると、とても栃木にいるとは思えませんでした(笑)。特に夜になるとライトアップされて素敵なんです。歌を歌う撮影の日、撮る前は緊張で景色を見る余裕なんてなかったんですけど、撮り終わって夜のセットを歩いたときは、なんてきれいなんだろうって感激しました(笑)」

「大変だけど面白い」舞台で、映画で逆境を楽しむポジティブさ

 舞台の公演のためなどで、全国各地を飛び回ってきた経験も彼女のポジティブさを培っていた。

「地方に行くときは、やっぱりその土地のおいしいものを食べることが大きな楽しみなんですよね(笑)。おいしいものを食べて、ぐっすり眠れば大抵の悩みは吹き飛んじゃいます(笑)。もともと気持ちの切り替えは早いタイプだと思います。頭の中で、どんどん次のことを考えちゃうんです(笑)。舞台で鍛えられたおかげもあると思いますね。舞台は常に一度きりの生ものなんですけど、何公演もあるので、逆に安心感もあるんです。今日はこういう感じでやってみたけど、明日は違う感じでやってみよう、とかいろいろ挑戦できるんですよね。そこが舞台の面白いところでもあり、勉強にもなるところです。それと、逆境に強くなります(笑)。もちろん大変だし不安もあるんですけど、思うようにいかなくても次は頑張ろうという気持ちを持てるようになりました。今回の映画も初めて経験することが多くて逆境だらけというか、けっこうプレッシャーがありました。映画界を代表するスタッフや役者さんを前に、怖気づきそうになる自分もいたんです。それこそこれまで、石井監督や妻夫木さんの作品を、一映画ファンとして見ていた人間ですから(笑)。でも萎縮しないって覚悟をきめたんです。皆さんと比べて映画の経験が少ないことは事実なんだから、聞きたいことは聞いて言いたいことは言うようにしていました(笑)。終わってみたら皆さんのおかげで本当に楽しかったし成長もできた気がします。この映画は自分の中で一つの転機になったと思います」

 最後に岡山の読者にメッセージを!

「『ピーターパン』の公演で、倉敷に伺ったことがあるんです。これからも、映画やドラマだけでなく舞台作品にも出演していきたいと思っているので、また倉敷公演でお会いしましょう!」 

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戦前のカナダ・バンクーバーに実在した日系人野球チーム・バンクーバー朝日。困難な境遇にも負けず、小柄な体を生かしたプレーで白人チームに立ち向かっていく青年たちの姿を描く感動作。

監督:石井裕也  出演:妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、佐藤浩市、高畑充希他/東宝配給/12月20日より全国公開 http://www.vancouver-asahi.jp/
©2014「バンクーバーの朝日」製作委員会



高畑充希'S POSITIVE ITEM

いつも前向きな高畑充希の気持ちがアガるポジティブアイテムを紹介

FOOD
私の元気の源は、お寿司です!(笑) 私、本当にお寿司が大好きで、ご褒美とか特別な日に食べるのは、ほとんどお寿司ですね。そういうときに食べに行くお寿司は、ちゃんとカウンターで、本格的なお寿司を頂きます。どのネタが…というより、とにかくすべてが好き。寿司という食文化そのものが好きなんです(笑)。

RELAX
大切なのはリラックスする時間を作ること。特に睡眠ですね。私、本当に眠るのが好きというか、必要不可欠なんです。希望としては最低でも7時間は眠りたい(笑)。最近、すごく素敵な柄のお布団を買ってしまったんです。モロッコ風のデザインで、ちょっと珍しい柄で、それがすごく素敵なんですよ。実はけっこうエスニックなデザインが好きで、クッションとかも合わせてます(笑)。大好きなデザインのアイテムに囲まれて、素敵なお布団にくるまって眠る時間が、最高に幸せです。そうすると大抵、一晩経てば元気になりますよ!(笑)

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もともと映画を見るのは好きですね。映画を見て元気ややる気をもらうこともよくあります。最近のおススメは、石井監督の『ぼくたちの家族』。妻夫木さんと池松さんが兄弟を演じているんです。石井監督に『ぼくたちの家族』が面白かったです、と言ったら、当たり前だって言われました(笑)。

DVD『ぼくたちの家族』
発売元・販売元:TCエンタテインメント
発売日:11月21日 価格:3800円(税別)