菅首相が退陣3条件を明示も“引き抜き”で自民反発

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 菅直人首相は27日、松本龍防災担当相(60)の東日本大震災復興担当相への起用に伴う閣僚人事で、松本氏が兼務していた環境相の後任を江田五月法相に兼務させることを決めた。東京電力福島第1原発事故の対応にあたってきた細野豪志首相補佐官(39)を原発事故収束・再発防止担当相に充てた。閣僚には17人の枠があるため、蓮舫行政刷新担当相(43)を退任させ首相補佐官とし、行政刷新担当相は枝野幸男官房長官が兼務する。蓮舫氏が兼務していた節電啓発担当、消費者・食品安全担当は細野氏が兼務する。

 また首相は自民党の浜田和幸参院議員(58)に復興担当の総務政務官への就任を打診し、浜田氏は受諾した。国民新党の亀井静香代表には副総理での入閣を要請したが固辞され「首相補佐官」とすることで合意した。法律では首相補佐官は5人以内と規定されているため、亀井氏の就任によって、馬淵澄夫首相補佐官が退任することとなった。

 同日夜には記者会見を開き、自らの進退について、平成23年度第2次補正予算案と再生エネルギー特別措置法案、特例公債法案の3つの成立が「一つのめどになる」と表明した。ただ、与野党の対立で8月末までの延長国会中に法案が成立しなかった場合、9月以降も続投する意向を示した。衆院解散の可能性に関しては明言を避けた。

 そして28日に国会内で開かれた民主党の両院議員総会では、エネルギー基本計画の見直しに強い意欲を示した上で「エネルギー政策をどのような方向に持っていくかが次期国政選挙で最大の争点になる」と、原発の是非を争点に掲げて衆院解散・総選挙に踏み切る可能性を示した。

 しかし今回の人事には内外から厳しい声が上がる。

 特に浜田氏に関しては野党の中に手を突っ込んだわけで、今後の審議において自民党の協力を得るのは難しくなった。当初は野党から十数人を引き抜き、参院で過半数を確保して、これまで政権を悩ませてきた「ねじれ」状態を解消したかったようなのだが、呼応したのは浜田氏だけ。

 安住淳国対委員長は28日には国会内で自民党の逢沢一郎国対委員長と会い、浜田氏を一本釣りしたことを陳謝した。

 しかし自民党は28日の党役員会で、震災復興に向けた協調路線を撤回し、菅政権と徹底対決する方針を確認。谷垣禎一総裁は総務会で「政権はもはや暴走状態にある。自民党の協力はいらないと宣言したに等しい。それによって停滞が生じたとすればそれは政権の責任である」と宣言した。