朝霞宿舎5年間凍結も野田首相に“マッチポンプ”批判

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 野田佳彦首相は3日、公務員宿舎朝霞住宅(埼玉県朝霞市)の建設現場を視察した。この後、安住淳財務相を首相官邸に呼び、東日本大震災に伴う復興増税への国民の理解を得るため、少なくとも集中復興期間である5年間は宿舎建設を凍結するよう指示した。

 首相は建設現場を視察後、記者団に「街づくりにも資するという総合判断で着工を判断したが、私なりに現場を見て(凍結の)腹を固めた」と説明した。

 一方、安住氏は、危機管理用を除く東京都千代田、中央、港の3区にある公務員宿舎の廃止・売却や、幹部用宿舎の建設凍結を首相に提案。首相は「ぜひそうしてほしい」と了承した。

 着工からわずか1カ月で建設凍結が決まった宿舎問題。復興増税を訴える一方で公務員優遇を続けることへの批判を受け、野田佳彦首相はやむなく判断したようだが、自らが財務相時代に着工を指示しただけに「マッチポンプ」のそしりは免れない。現場視察もわずか10分間と、果たしてわざわざ視察をする必要があったのか?の声も聞かれた。

 藤村修官房長官は3日の記者会見で「3・11以降ということも考え合わせ再考することになった」と東日本大震災の発生を凍結理由に挙げたが、首相は9月15日の衆院本会議の代表質問で「真に必要な宿舎として朝霞住宅の事業再開を決定した」と答弁。26日の衆院予算委では「(宿舎着工を)変更するつもりはない」と明言しており、震災には一切触れていない。

 そんな首相が豹変したのは、復興増税への逆風が予想以上に強く、これ以上宿舎建設を継続すれば増税そのものが不可能となりかねないと考えたから。

 だが、そんな思惑は見透かされている。建設凍結を訴えてきたみんなの党の渡辺喜美代表は「『真に必要なもの』が5年間凍結できちゃうのか。いいかげんだ。こういうブレまくりの政権は過去2代の民主党政権にもよくあった」と痛烈に批判した。

 また4日には閣僚らが建設中止に傾く発言を繰り返したが、5年後に民主党政権が存続している保証はなく「関心が薄れたころの建設再開をうかがう財務省の筋書きに乗せられているだけだ」(政府高官)との声もある。