一票の格差訴訟で昨年の衆院選を「違憲」と判断

 昨年12月の衆院選で最大2.43倍の「一票の格差」が生じたのは憲法違反として、升永英俊弁護士らのグループが東京1区の選挙無効を求めた訴訟の判決が6日、東京高裁であった。難波孝一裁判長は「投票価値の平等に反する区割りで、合理的期間内に是正されないまま選挙に至った」として「違憲」と判断。選挙無効の請求は棄却した。原告側は即日上告した。

 難波裁判長は「最高裁判決で強い警鐘が鳴らされたにもかかわらず、是正が早急に行われないまま選挙に至った経過は看過できない」と、最高裁が「違憲状態」とした前回選挙と同じ区割りで選挙をした国会の姿勢を厳しく批判した。

 衆院選挙制度をめぐっては、与野党は選挙区の「一票の格差」是正に加え、定数削減を含む抜本改革を行うことで合意している。5年に1度の国勢調査で人口変動が明らかになるたびに選挙区の区割りを見直すのではなく、違憲状態を根源から見直そうという狙いだ。しかし、いざ具体論に入ると、どうしても党利党略が絡んでしまう。

 政権交代を経て自民、公明、民主の3党がようやく実務者協議を開いたのは今月5日。しかし、定数の削減幅や比例代表の位置付けなど具体論となると各党の隔たりは大きく、合意のめどは立っていない。

 与党内でも、本音では現行制度を維持したい自民党と、中小政党への配慮を引き出したい公明党の間で調整が難航。一方、与党当時には比例定数40削減を訴えていた民主党は、野党に転落した途端、75削減を主張するなど、合意に向けたハードルを上げている。他方、小選挙区制は政権を争う二大政党に有利とされ、自民、民主両党は定数削減を比例代表で行いたい考え。逆に議席獲得の大半を比例に頼る中小政党はこれに反発し、定数削減論議は遅々として進まない。格差是正の道のりはまだまだ遠そうだ。