シウバ 劇的KO勝利

『UFC JAPAN 2013』リポート

『UFC JAPAN 2013』が3日、さいたまスーパーアリーナに1万4682人の観衆を集め開催された。メーンではPRIDEで活躍したヴァンダレイ・シウバが日本で約6年半ぶりのファイト。ライトヘビー級ワンマッチでブライアン・スタンと対戦し、2R4分8秒、TKOで劇的な勝利を飾った。

○シウバ(KO 2R4分8秒)スタン●
 両者は1R開始から真っ向勝負の殴り合いを展開。最初に効果的な一発を被弾したのはスタン。左フックに一瞬腰が崩れる。打ち合いを再開すると、今度はシウバがぐらり。自らピンチを招きながらもファンの望むエキサイティングな展開にシウバは一瞬ニヤリと笑みを浮かべた。次の打ち合いでまたもフラッシュダウンを奪われたシウバだったが、なんとかタックルでしのぐ。少しでも長くシウバの戦う姿が見たいというファンには心臓に悪い展開だ。

 途中、ケージに詰めたスタンがボディーに膝蹴りを放った際、つま先がシウバの股間に当たり、一時中断。会場は大ブーイングに包まれた。

 そして2R。序盤でスタンのミドルキックがまたもシウバの股間を直撃。会場から大ブーイングが浴びせられる。

 再開後、「俺は大丈夫だ!!」とばかりに左ハイキックを放つシウバ。そしてついにその瞬間がやってくる。

 まさに電光石火。一瞬のスピードで踏み込んだシウバの右ストレートがスタンの顔面をとらえる。返しの左フックでダウンを奪うと追撃のパウンドを4発放ったところでレフェリーが試合を止めた。
 金網に駆け上がり、ファンの声援にこたえるシウバ。ドラマティックな幕切れに会場が揺れた。
 この試合にはファイト・オブ・ザ・ナイト賞(ベストファイト賞)が贈られ、シウバはKO・オブ・ザ・ナイト賞も獲得した。

○ハント(TKO 3R1分44秒)ストルーブ●
 ダブルメーンの第1試合はマーク・ハントvsステファン・ストルーブのド迫力のヘビー級戦。

 ストルーブは213センチのUFC史上最長の身長を誇るファイター。現在4連勝中で、ヘビー級ランキング9位。ハントは現在3連勝中で、ランカーのストルーブを破れば、悲願のヘビー級王座挑戦も現実的な話となってくる。

 身長差35センチにひるむことなくフックを放つハント。打撃で分が悪いとみるやストルーブは組み付いてグラウンドへ引き込む。マウントを取ると、パウンドから腕十字を狙うが、今のハントはそうやすやすと関節技は決めさせない。逆に2Rにはややガス欠気味のストローブからテイクダウンを奪う場面も見せた。

 そして3R。ノーガードでゆっくり前に出るハントに対し、真っ直ぐ後ろに下がってしまったストローブ。その顔面をまるで無造作に放ったような右フックと左フックが襲う。ケージ際に真後ろにダウンしたストローブを見て勝利を確信したハントだったが、レフェリーのストップがないことに気づくや押取り刀でパウンドを放ち、試合を終わらせた。

 ハントにはKO・オブ・ザ・ナイト賞が贈られた。

岡見が悲願の日本大会初勝利 五味は判定に泣く
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○岡見(判定2−1)ロンバード●
 UFCに参戦する日本人選手の中で一番の実績を誇る岡見勇信はヘクター・ロンバードと対戦。2−1の判定で退け、2度目の世界王座挑戦へ大きく前進した。現在、ミドル級のランキングで4位に入る岡見。日本人でランクに名を連ねるのは岡見だけだ。

 昨年の日本大会では2Rまで完璧に試合を進めながら、3Rにまさかの逆転KO負けを食らっており、日本大会での勝利は岡見にとっては至上命令だった。

 1R開始早々、ロンバードの回転の速いパンチに会場がどよめく。しかし岡見はフックをかいくぐり、片足タックルからテイクダウン。2Rもフックを振り回すロンバードから距離を取り、蹴りからパンチのコンビネーションとタックルからグラウンドで有利に試合を進める。最終3R、後がないロンバードは左右のフックをぶん回し岡見に襲いかかる。そのうちの一発が岡見の顔面をとらえグラリとすると、昨年の悪夢が脳裏に浮かんだか会場は騒然。大岡見コールで後押しだ。タックルも潰され下になる場面もあったが、決定打は許さず3Rを乗り切った。判定は2−1で岡見。「最後は申し訳ない形になってしまいましたが、勝てて良かった」と胸をなでおろした。
○サンチェス(判定2-1)五味●

 五味隆典はディエゴ・サンチェスと対戦。

 五味の入場テーマ曲『SCARY』が流れるや会場は大歓声に包まれる。オクタゴンに入ってからも心なしか曲も長めに会場をあおる。

 試合は五味が打撃での決着を狙うもなかなか自分の距離に持ち込めず、パンチは単発に。五味のプレッシャーにサンチェスはタックルで勝機をうかがうが、2R以降は五味の執ようなボディーブローでスタミナ切れ。タックルも1Rのキレがなく五味はなんなく切っていく。左のフックも顔面をとらえるようになり徐々にペースは五味のものになりつつあった。3Rも残り10秒でサンチェスが猛ラッシュをかけたものの、五味はカウンターのアッパーを炸裂させ、体を入れ替え攻撃を交わしたところで終了のブザーがなった。

 両手を突き上げ勝利を確信する五味。

 しかし判定は2−1でサンチェスの勝利。確かに両者ともに決定的なポイントはなかったものの、記者席の外国人記者も首をかしげた。UFCのデイナ・ホワイト社長もツイッターで「ばかげた判定だ」とつぶやいたように、不運な結果となってしまった。

 ○水垣(判定2−1)キャラウェイ●
 ○徳留(判定3−0)マルセロ●

 今大会に参戦した日本人選手は6人。大きく明暗を分けた。

 UFCで3勝2敗の水垣偉弥はブライアン・キャラウェイを2−1の判定で破った。昨年の日本大会では不可解な判定でクリス・カリアーゾに敗れ、呆然と立ち尽くした水垣だけに、日本での勝利にかける思いは誰よりも大きかった。

 判定の瞬間は会場も固唾を飲んだが、勝利の判定にマットに額を付け号泣。オクタゴンを出てからも涙は止まらなかった。

 UFC初参戦の徳留一樹は3−0の判定でクリスチアーノ・マルセロを破り初陣を飾った。序盤こそ硬さが目立ちマルセロの右ストレートを被弾する場面もあったが、3Rには右フックでダウンを奪うなど、危なげない勝利を収めた。

○ヤヒーラ(判定3−0)廣田●
○タバレス(判定3−0)福田●

 同じくUFC初参戦の廣田瑞人はハニ・ヤヒーラのグラウンドテクニックに、得意の打撃を封じられ、0−3の判定で敗れた。
 ブラッド・タヴァレスと戦った福田力は得意のグラウンドへ持ち込むことができず、1Rから打ち合う展開に終始。小刻みなパンチを顔面に集められ、顔をはらし大差の判定負けを喫した。