世界文化遺産の富士山に夏到来

 世界文化遺産になった富士山が1日、登録後初めての山びらきを迎えた。山びらきにあわせて山頂で御来光を拝もうと、前日から多くの人が登山道を登った。今夏は世界遺産の効果もあり、シーズン中は35万人を超す来訪客が予想されており、にぎわいを見せそうだ。

 世界文化遺産に登録された富士山とその周辺エリアが沸いている。1日の山びらきにあわせて弾丸登山のリスクが叫ばれ、1日には登頂を目指す登山者や、あいにくの天候ながらもご来光を拝むたくさんの人たちの姿、さらには来訪者を安全かつ快適に、温かく迎えようとする人たちの様子が多く報道された。

 例年ならば、7月初旬は比較的余裕を持って富士登山を楽しみやすい時期。しかしながら世界遺産への登録によって、予想以上に状況が変わっている。学生の夏休みとなる7月中旬から8月いっぱいのハイシーズンには、国内はもちろん、海外からの来訪者も見込まれ、富士山やその周辺の観光スポットなどでは、トイレや駐車場の設備をどれだけ整えたら十分なのかといった不安も抱えながらのスタートだ。

 静岡、山梨の両県では、富士山の環境を守るとともに安全に富士登山を楽しめるように対策を講じている。来夏から導入を検討していた入山料を、試験的に今夏から期間限定で導入する。6月28日、両県の協議会の作業部会が山梨県富士河口湖町で開かれ、「富士山保全協力金」として1000円を、7月25日から8月3日まで、午前9時から午後6時の間に徴収することを決定した。ただ、支払いは任意で、支払った人には記念品を渡すという。

 報道によると、今夏の富士山来訪者は例年の30万人を超える、35万〜40万人が見込まれている。ともすると、混雑を避けたいという気持ちが働く人も少なくなさそうだ。しかしながら、多くの人が「一度は登ってみたい」とする富士山。登録を機に、さまざまな登山案内や情報が提供され、交通アクセスも良くなり、ツアーも豊富になった今年は富士登山に挑戦しやすい年ともいえる。日本一の富士山、世界がその価値を改めて認めた富士山の魅力を自分の体と心で感じてほしい。

バス増便ツアー増加で富士山がより身近に

 富士山やその周辺地域への注目が高まるなかで、都内からの交通アクセスが強化され、バスツアーなど観光商品も増加している。

 富士急行株式会社は、バスの新宿〜富士山五合目線(京王電鉄バス株式会社と共同運行)を7月26日から9月1日までの毎日、従来の1日6往復から10往復に増便。さらに、例年夏季は富士山五合目まで延ばされる羽田空港〜富士山駅線(京浜急行バス株式会社と共同運行)に加えて、横浜〜河口湖線(相鉄バスと共同運行)の一部の便も延ばす。

 また、便利な周遊券も販売。「富士山ストーリー」は東京駅発着の高速バスと登山バスがセットになった7日間有効の周遊券で、吉田ルートを登って富士宮ルートで下山、またはその逆など、富士登山を山梨と静岡両方から楽しめることで毎シーズン人気を集めている商品だ。東京駅と静岡県側の富士宮登山道を往復する「プチ富士山ストーリー」も販売している。ともに、大人6000円、こども3000円で8月31日まで発売され、利用できる。

 ツアーのコースもバリエーションが豊富になっている。はとバスでは、日帰りの富士山周遊ツアー、山小屋に宿泊する富士登山ツアーが大人気。さらに、専門ガイドが案内する富士山信仰の歴史にスポットをあてたコースや、英語で案内するコースも追加され、さまざまな角度から世界文化遺産としての富士山やその周辺エリアを楽しめるようになった。

 その他の旅行会社も富士山特需に期待し、多くのツアーを企画している。すでにハイシーズンの予約がとりにくくなっている山小屋だが、ツアーを使えば比較的利用しやすい。富士山へのアクセスも、公共交通機関や自家用車よりも楽な場合もあるので、うまく計画に組み込んで、快適に富士登山を楽しもう。

富士山とその周辺をいろんな角度から


キャンプ場から富士登山

 
 富士山に日本で一番近い表富士グリーンキャンプ場と、人気の登山ルートの富士吉田口に近いPICA富士吉田では、富士登山とキャンプ、富士山麓の恵みを楽しめるバーベキュー1食分がセットになったプランをフジサン価格(2名2泊分2万2300円・税込)で提供中。どちらかのキャンプ場をベースキャンプとして使うことで、朝早くから登り始められるなど、より時間を有効に使える。また、キャンプ場は標高1000メートル。前泊すれば高度順応も期待できそうだ。
【URL】http://www.pica-style.co.jp/



フジヤマミュージアムで富士山堪能

 ハイランドリゾートホテル&スパ内にある、フジヤマミュージアムは、悠久の富士を巡る美術館。近現代の画家が独自の視点で描いた作品を主体にコレクションしており、芸術家の目を通したさまざまな富士を見ることができる。現在、開館10周年と富士山の世界文化遺産登録を記念して、「フジヤマミュージアム名品展」を開催中。人気の高い収蔵作品を中心に、加山又造の『富岳』を迎えて展示している。会期は10月27日まで。
【URL】http://www.fujiyama-museum.com/



眺めたい派は三保松原へ

 富士山は遠くから眺めて愛でるのが一番と考えるなら、静岡・三保松原へ。清水港から突き出した半島にあり、海と松林、そして富士山という絵画のような景色を見られる場所だ。天女が羽衣をかけた伝説で知られる「羽衣の松」として親しまれてきたクロマツは、立ち枯れのために3日、伐採されたが、2010年に隣の木を静岡市が「羽衣の松」として認定して世代交代を済ませている。三保松原へもさまざまなバス観光ツアーが販売されている。ほとんどが駿河湾の海産物など地元の味も楽しめるプラン。