鈴木寛の「2020年への篤行録」  第2回 高校生がソーシャルプロデュース

 都心部はイルミネーションがきらめき、いよいよ年末モードに入ってきました。皆さんもそろそろ来年に向けた展望を描き始めていることでしょうが、ソーシャルプロデュースで新しい息吹を感じさせるイベントがあります。NPO法人カタリバ(杉並区)が12月14日、『全国高校生MY PROJECT AWARD 2013』を日本橋で開催します(http://www.katariba.or.jp/news/2013/11/22/2427/)。
 この催しは、全国各地の地域社会が抱える課題を解決しようと奮闘している高校生の取り組みを評価し、特に優れた実績のある生徒には表彰します。米国では80年代から学校での学びを生かした社会貢献活動が普及していましたが、日本でも近年、松蔭高校(兵庫県神戸市)が「ブルーアースプロジェクト」と銘打ち、ウォームビズや食品ロス削減の推進といった環境保護活動をするなどソーシャルプロデュースを行う高校生が着実に増えております。メディアに注目されるような事例は私立校が多く、公立校にももっと広げていくことが課題ですが、今回のアワードを機に高校生世代のソーシャルプロデュース活動がさらに注目されてほしいものです。
 それにしても、私が慶応SFCで教えていた90年代を振り返ると、高校生の社会起業志向が広がりを見せていることには隔世の感があります。当時は、阪神大震災を機にNPOの存在が注目され始めたものの、社会貢献活動の大半はボランティアベース。ビジネス的な持続可能性を追求した動きは本当に少なく、私の教え子を始めとする大学生たちがパイオニアでした。アワードを主催するカタリバは教育格差の解消に取り組んでいますが、代表理事である今村久美さんはまさにそうした学生たちのリーダー的存在。同世代である駒崎弘樹君(NPO法人フローレンス代表理事)は、今や子育て問題の「論客」として活躍中です。
 高校生や大学生の間にソーシャルプロデュースを経験することで、利害や矛盾といった社会の複雑な構造を肌で感じることができ、問題解決のために自分の頭で思考する貴重な機会になります。卒業後の進路が、社会起業家にはならなかったとしても、正解や前例のないプロジェクトに挑む地力が身に着きます。

(元文部科学副大臣・前参議院議員)