息子は自閉症、そして12歳の宇宙物理学者

『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』著:クリスティン・バーネット 訳:永峯涼

 アメリカに住む少年ジェイコブはアインシュタイン級のIQの持ち主。記憶力が抜群で、2週間で微積分を独学で習得。さらに9歳で大学に入学し宇宙物理学についての独自の理論に取り組み、ノーベル賞候補になると言われている。しかし、そんな天才児がその能力を開花させるまでには、大きな壁があったのだ。

 インディアナに住むクリンスティン・バーネットは結婚し、待望の子どもを授かる。しかし、長男として生まれてきたジェイコブは、2歳の時に自閉症の一種、アスペルガー症候群だと診断される。将来自分で靴紐を結べるようにはならないと言われたが、クリスティンはジェイコブが持つ才能を信じてみることにした。発達障害の専門家たちのアドバイスを無視し、徹底的にジェイコブのやりたいことをやらせる。なぜみんなは息子ができないことばかりに注目するの?なぜできることに目を向けてくれないの? 母は息子が数字に異常な興味を示すことを発見し、ある日天文学の講義に誘う。するとジェイコブは、宇宙の法則を見つけ出すことに喜びを感じるようになり、必要な知識をスポンジのようにどんどん吸収していく。そして学ぶ喜び、真理を導く喜び、それを分かち合う喜びみ目覚め、他者とのコミュニケーションが可能になっていった。大きな障害に立ち向かい、息子に普通の楽しい子ども時代を体験させたいと手探りで戦ってきた日々。自閉症の子どもを持つ母親に勇気を与える本であるとともに、すべての子どもには無限の能力が備わっていて、それを引き出すきっかけがあれば輝かしい可能性が開けるということを教えてくれる一冊。



【著者】クリスティン・バーネット【訳者】永峯涼【定価】本体1700円(税別)【発行】KADOKAWA