インド旅行好き23人の体験談をごった煮で『旅の賢人たちがつくったインド旅行最強ナビ』

2020.01.21 Vol.726
 旅行作家で編集者、惜しまれつつ終了した紀行バラエティー「クレイジージャーニー」でも人気を博した丸山ゴンザレスが編集する「最強ナビ」シリーズ最新刊。今回は国別版の第3弾で、テーマは「インド」。丸山本人を含む23人の執筆陣を従え、“人生観が変わる”といわれるインド旅の魅力を、さまざまな角度から描いた読み物で堪能できる。  このシリーズ最大のポイントは、何と言っても執筆者がすべて署名原稿で自身の体験談を記していることだろう。性別も年齢も渡航回数も違うメンバーの話がごった煮状態で載っており、旅の目的も沢木耕太郎に憧れて……といった王道系からサイババに会う、ヨガ、砂漠&ラクダ、映画の買い付けなどなど。中には「東京のインディア」、「日本のインドカレー屋」、「インドを旅する日本人」などのエピソードもある。  海外渡航経験がない筆者には、この本が実用的なのかどうかは皆目見当がつかないが、地に足の着いた情報ばかりで、とにかくみんなインドが好き(丸山本人は嫌いと公言しているが、印象として)なんだな、と感じられるのが微笑ましい。ぼんやり「インド旅行に行きたいなぁ」などと思っていたら、インド好きの飲み会に誘われてしまったような読後感。丸山ゴンザレスの編集者としての力量が光る。

今年一番○○だった本でオールスターが激突!?

2020.01.12 Vol.726

スチュワーデスの歴史から片手袋考察まで、ビブリオバトル頂上決戦

話題のノンフィクション『つけびの村』は『ツイン・ピークス』なのか 映画史研究家・春日太一が読み解く、高橋ユキの作家性

2019.12.29 Vol.725

 2013年に発生した山口連続殺人放火事件を題材に、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)を上梓したフリーライターの高橋ユキ。WEBを中心に話題を呼び、発売3カ月で3万部を突破した同書の刊行記念イベントが渋谷の大盛堂書店で行われた。お相手は新刊『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』(文藝春秋)が好評な映画史・時代劇研究家の春日太一。 ◆ ◆ ◆ 春日太一(以下、春日):今日は「大盛堂の寄り合い」ということで、早速僕も『つけびの村』を読ませてもらいました。読んでいるうちに高橋さん自身への興味が強くなってしまい、同じ物書きをやっている立場として考えたことを一個一個答え合わせしたくなって、そのためにはイベントをやろう、と。 高橋ユキ(以下、高橋):私はこれまで、春日さんを一方的にツイッターで見ていたので。感想をつぶやいてくださって、ありがとうございました。 春日:本当に素晴らしい本で、僕はデヴィット・リンチの『ツイン・ピークス』を思い出したんですよ。殺人事件が起きました、捜査官がきて捜査しました、犯人も動機も分かりませんでした。ひとつだけ分かったのはこの街は奇妙な人たちの集まりだということでした、という。ようは『ツイン・ピークス』という作品は、結末それ自体というよりもクーパー捜査官が捜査している過程が面白いわけです。高橋さんがこの村に来て、集落の異常性を経験して、その取材ドキュメントとして書かれているじゃないですか。僕はそこが、この本が今までの事件モノのノンフィクションに比べて新しかったし、面白かったところだなと思っています。そのへんは意識して構成したのですか? 高橋:きちんと結論づけるノンフィクションは私も好きなんですけど、今回の本については取材をした時点で、彼(保見光成死刑囚)の妄想性障害がかなり進行しているな、という印象が強くあって。この証言の真実性を、取材者として断定するのは危険だと思ったんです。同時に、村の取材で耳に入ってくる村の方々の話がちょっと変だな、噂がすごいなと感じていて、「コープの寄り合い」の話を聞いた時に、噂を主軸に組み立て直してストーリーを作ってみようかな、と。 春日:最初にこの本に違和感と同時に、すごいものが始まるぞと思ったのが32ページでした。魔女の宅急便の家に行って、外から呼びかけると、どんどんテレビの音量が上がってくるという描写があります。それが伏線になって104ページで偶然、その家主に遭遇するんですけど、すごいなと思うのは、この人はなにを言っているのか分からないんですよね。しかも高橋さんは、そのよく分からない言葉を、そのまま載せている。そこが『ツイン・ピークス』だなと。 高橋:ゲラ(校正刷り)の段階で、もうすこし話を整理しようかとも考えたんですけど、そのまま載せたほうがこの人のキャラクターと、話を聞いた時の私の困惑が伝わるかなと思って残しました。 春日:分かりにくいところを分かりやすく整理することによって、ドキュメント性や生々しさが失われる怖さ……そのまま残すのは、書き手として勇気のいることですが、この描写がそのまま載っているからこそ、作品になんとも言えない異様なぬめりけが出てくる。最終的に田村さんの重大な証言に至るまで、この人たちはなにを言っているか分からないぞという、すべてを残した決断がすごいなと思ったんです。 高橋:そう言っていただけてよかったです。

DDTの軌跡と奇跡を支える高木三四郎の頭脳『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』

2019.12.28 Vol.725
 エンターテインメント色を強く打ち出した独自の興行で知られるプロレス団体・DDTプロレスリング。団体の代表取締役兼プロレスラーである大社長こと高木三四郎が11年ぶりに刊行したのが本書だ。  11年の間にDDTは両国国技館に進出し、『路上プロレス in 東京ドーム』を行い、大田区総合体育館での全席無料興行を成功させ、ついにサイバーエージェントの100%子会社化を果たしてしまった。本書では一問一答形式で、高木がこれまでの道のりとその時々の考え方を述べている。  驚くのは高木の発想力と柔軟性、そして企業努力。当時メディアに取り上げられなかったことを逆手に、インターネットやSNSを使って自ら発信を強化するなど、気がつけば人の何倍も先をいっている。〈業界の人から「どうかしてる」と思われても仕方ない〉という状況から現在までを支える高木の頭脳の一端が垣間見られるのではないか。  今回も11年前と同様、書店を舞台にイベント興行「本屋プロレス」を打った。雨の路上で繰り広げる試合の“絵力”は凄まじく、そこには問答無用で惹きつけられる何かがあった。プロレスラーの自伝としても素晴らしいが、高木ならではのユニークな視点はぜひビジネスマンや学生の人に読んでほしい。

Mr.都市伝説の関暁夫「人間の体はなくなる!」3年ぶりの『都市伝説シリーズ』発売でイベント

2019.12.27 Vol.Web Original
「Mr.都市伝説」の関暁夫が26日、東京・新宿の福家書店で、新著『Mr.都市伝説 7 ゾルタクスゼイアンの卵たちへ』(竹書房)を発売記念イベントを行った。

作家・いしいしんじ3年ぶりの小説集『マリアさま』をめぐる言葉と音

2019.12.18 Vol.Web Original
 作家のいしいしんじが3年ぶりの小説集『マリアさま』(リトルモア)を出版した。2000〜2018年の間にさまざまな媒体で発表した短篇・掌篇から選りすぐりの27篇を収録。同書の刊行を記念したイベントが荻窪の「Title」にて行われた。当日は『マリアさま』の世界を拡げてくれるようなお話と、刊行に際して作られたプレイリスト〈『マリアさま』のためのサウンドトラック〉から、いしいが愛用する蓄音機“コロちゃん”で蓄音機用レコード=SP盤をかけていく特別な夜となった。イベントの内容からほんの一部をお届けする。司会進行は「Title」店主の辻山良雄。  ◆ ◆ ◆ 辻山良雄(以下、辻山):私はリブロという本屋に勤めていたことがあり、池袋本店が閉店することになって辞めたんですけど、お世話になった人に「これからお店を準備します」みたいなメールを出していたら思いがけずいしいさんから返事をいただきまして。「まったく新しい、けれどなつかしい。ずっとそこにあったはずなのに、たったいまできた空間」ということを返してもらって、それで「Title」のホームページの左上に“まったく新しい、けれどなつかしい”という言葉をずっと使わせてもらってます。 いしいしんじ(以下、いしい):本当にそういう場所になったのは、僕が辻山さんとお目にかかった時に、辻山さんがそういう場所の気配を出してはった。そっちのほうに向かうんだろうなというのがあったからそういうふうに言ったんで、それを僕が受け取って「こうなんじゃないですか」って言っただけなんですよね。 辻山:その言葉をいただいて、なにか店自体が物語性を帯びるというか。いしいさんが気配を嗅ぎ取って、そういう言葉を出したというのは、小説にもつながる話だなと思いましたね。『マリアさま』は18年間に書かれた短篇を27篇集めたということで、実際にはこれに載らないような短篇もいっぱい書かれていると思うんですけれども。 いしい:この中に野球の話(「子規と東京ドームに行った話」)があるんですね。『野球小僧』という雑誌が創刊された時に、僕の担当編集者から「野球小説やらないですか」って話があって、季刊だったから4篇あるはずなんですよ。チェ・ゲバラと一緒に日本対キューバ戦を見るとか、横山やすしと甲子園球場に行くという話(笑)。選ばなかったのかなと思ったら、送ってなかったんですよ。送り損ねてるものがまだいっぱいあるはずなんです。

渋谷でビギナーのための「開高健」ナイト開催!【おすすめ書店イベント】

2019.12.14 Vol.725

 12月に没後30年、2020年12月に生誕90年を迎える開高健。『パニック』、『裸の王様』、『夏の闇』、『オーパ!』などの小説やルポ、エッセイのほか数々の名言、壽屋(現・サントリー)宣伝部時代の名キャッチなど、今も輝き続ける開高健の世界を知ってほしい。そんな思いでノンフィクション作家の角幡唯介やWEBライターの岡田悠など各界から8人の開高ファンや関係者が登壇し、熱く語り合う。

11年ぶりに復活!伝説のDDT「本屋プロレス」とは何か?

2019.11.25 Vol.Web Original
 新宿区・中井の伊野尾書店にて23日、DDTプロレスリングの大社長こと高木三四郎が「本屋プロレス again」を行った。11年ぶりの著書『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』(徳間書店)の発売を記念したイベント。同イベントは2008年に高木が『俺たち文化系プロレス DDT』を刊行した際にも開催され、当時DDT所属だった飯伏幸太(現・新日本プロレス)とのアスファルト上の死闘は伝説として語り継がれてきた。試合開始前に伊野尾書店の伊野尾宏之店長が「2008年の『本屋プロレス』にきた方ってどれくらいいます?」と聞くと、1/3程度の人はリピーター客であることが判明。  伊野尾店長は「前回の『本屋プロレス』の1年後に両国(国技館)に出るぞっていった時に『絶対潰れるわ』って思ったんですよ(笑)。その時に『うちで本屋プロレスをやってくれたDDTが、一世一代の勝負をやるんでみんなで両国に行こうよ』って声をかけたら、50人くらいの人が集まってくれた。それで観たのがHARASHIMA 対 飯伏幸太戦で、みんな感動しました。そこで『DDTいいね』ってみんなが行くようになって、いまでも30人くらいの方が両国に一緒に行ってくれるようになり、11年経ってなんとか伊野尾書店も続くことができ、その間にDDTはさいたまスーパーアリーナでやるような団体になってしまいました。ここまでくることができて個人的には感慨深いです」と挨拶。

【おすすめ書店イベント】『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』刊行記念イベント

2019.11.18 Vol.724
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」……事件当時、報道された貼り紙に覚えのある人も多いだろう。2013年に山口県周南市金峰(みたけ)地区で発生した山口連続殺人放火事件を丹念に取材したルポの書籍化『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)。著者の高橋ユキと、新刊『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』(文藝春秋)が好評の映画史・時代劇研究家の春日太一がトークイベントを開催。取材の裏話や本には書けなかったエピソードを交えつつ本書の魅力に迫る。 ※発行日までに完売になってしまう場合もありますのでご了承下さい。

インパクト大の“前後不覚”なネコは天才!?猫写真家・沖昌之が“必死すぎるネコ”を撮り逃さないワケ

2019.11.16 Vol.724
 猫写真家の沖昌之が、累計発行部数5万部を突破した写真集『必死すぎるネコ』の第2弾、『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』の発売を記念したトークイベントを新宿の紀伊國屋書店新宿本店にて行った。イベント冒頭で、前回の写真集を制作する前の段階で、担当編集者から手塚治虫の漫画『火の鳥』のように「○○編」を重ねながら超大作化させる壮大な構想を提案されたことを明かした沖。当初はあまりの熱意に戸惑いつつも、結果的にその写真集のヒットがプロの猫写真家として活動を続ける力になったそうで、「そういう意味で僕にとって『必死すぎるネコ』は大事なターニングポイント」と語った。この日は『必死すぎるネコ 〜前後不覚 篇〜』に収録した写真の撮影エピソードを中心にトーク。

【オススメBOOK】正常は発狂の一種でしょ?『生命式』

2019.11.14 Vol.724

 本を紹介する枠を受け持っていると、時折「献本」という形で本が送られてくる。そんな中で封を開けた瞬間から異様なパワーが漲っているというか、やたらとオーラのある本が出てきてびっくりすることがあるが、本書もそんな一冊である。  芥川賞受賞作『コンビニ人間』で知られる村田沙耶香自身がセレクトした12篇を収めた最新短編集。まったく予備知識を入れずに読み始めた表題作、ありふれた職場の日常の描写から1ページ目をめくって出てきた台詞「中尾さん、美味しいかなあ」に、えぇ〜。「生命式」って、表紙の燭台って、そういう意味だったのかと鮮やかに騙されてむしろ爽快といった気分になった。一般的なカニバリズムを描いた創作物にありがちな後ろめたさや背徳めいた部分が一切なく、地続きの未来にありえるのかもと思わせるところが見事だ。  人間、生きていると山本のように死んでしまう身近な人はいる。昨日までしゃべって、笑って、元気だった友人でも、ある日突然階段で落ちたり、会社にタクシーが突っ込んできたりして亡くなってしまう。ふと彼や彼女の生命式を思った。 「だって正常は発狂の一種でしょ?」  そんなふうにつぶやきながら食べるのかな、と。

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