鈴木寛の「2020年への篤行録」 第22回 18歳選挙権引き下げで大事なこと

 公職選挙法が改正され、投票年齢が18歳以上に引き下げられました。投票年齢の変更は70年ぶりのことです。来年夏の参議院選挙から適用される公算が高くなっていますが、高校3年生の一部も含まれますので学校現場では、どのように政治と向き合えばいいのか、戸惑いの声が上がっています。


 ここで重要なのは、若者が投票に行きさえすればいいということではないこと。たしかに、世界的に投票年齢は18歳以上が主流になっており、日本でも低迷して久しい若年層の投票率を上げ、彼らの政治参画を促そうと若い世代を中心に投票年齢引き下げを主張し、ようやく実りました。


 しかしネット選挙活動が解禁された折を思い出してみてください。当時も「ネットを使う若い人が投票に行くようになればいい」という期待論がありました。私がかつて十数年、ネット解禁を主張した理由のひとつに、候補者と有権者、あるいは有権者同士の政策論議を活発化して、政治参画の意識を高める目的がありましたが、結局、政党やマスコミが一時的に騒いだ割に投票率が劇的に上がることはなく、それどころか都知事選では歴代ワースト3番目、衆議院選挙は歴代最低の低投票率に終わりました。


 このときの“教訓”から改めて思うのは、投票年齢引き下げにしろ、ネット選挙解禁にせよ、所詮は手段に過ぎないということです。民主主義制度は有権者の自治システムなので、ほかの誰かからの介入を受けることなく、自分の頭で考え抜いて決めるようにならなければなりません。そういうマインドを地道にコツコツ育てていかないといけません。70%の市民が投票に行った大阪の住民投票のような事例は、当事者意識が高まったからですが、それはカンフル剤のようなもので、やはり普段からの地域や家庭でいかに「自治意識」を育てていくのかが重要です。


 何も特別なことは必要ありません。政治は、「あちらを立たせばこちらが立たず」といったトレードオフや矛盾、葛藤の連続ですが、たとえば部活動のマネジメントを基本的に生徒たち主体で行うだけでも自治意識は育っていきます。公立高校の野球部であれば、サッカーなどほかの運動部とグラウンドが共用だったりして十分な練習時間を確保できないことが多いでしょう。そこでグラウンドが使えなくても可能なトレーニングが何か創意工夫します。狙い通りにいくこともあれば失敗することもあるでしょう。しかし、仲間たちと話し合って、どのように効率的かつ効果的にチームを強くしていくべきか、その試行錯誤のプロセスこそが自治意識のひな形になるのです。高校時代、弱小サッカー部のマネジャーだった私は仲間たちと主体的に運営したのですが、強豪校を破って地元の大会で優勝した成功体験は大きかったと思います。


 こうした自主性を養うには大人のアプローチが重要です。介入ではなくじっと見守り、どうしようもなくなったときだけ手を差し伸べるようにできるかどうか。親や教師、大人のマインドセットも問われています。 (東大・慶応大教授、文部科学大臣補佐官)