江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 千早振る(ちはやふる)

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 正月、友だちが遊びに来て百人一首を楽しんでいた娘から突然、小倉百人一首の名歌、在原業平の「千早振る神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くぐるとは」の意味を聞かれた無学のおやじ。もちろん分からないので帰ったら教えると言ってとりあえず、家を飛び出した。困ったおやじは、自称博識家という隠居のところを訪れ、歌の意味を聞いた。実はこの隠居もさっぱり分からなかったのだが、物知りだと思われている手前、知らないとは言えない。そこでしどろもどろに珍解釈を繰り広げる。「それは、あれだな。竜田川というのは何だかわかるかな」「さあ、それを聞きに来たので」「そのー、竜田川というのは相撲取りの名前だ」「へえ、そうなんですか。で、その竜田川という相撲取りがどうしたんですか」。すっかり隠居の言うことを信じるおやじ。「田舎から出てきた竜田川は一生懸命稽古を重ね、やがて大関にまで上り詰めた。それまで酒も煙草も女もやらずに、一心不乱に稽古をしてきた竜田川は、お客さんに連れて行かれた吉原の花見で出くわした花魁道中で、千早太夫という花魁に一目ぼれしてしまったのだ」「へえ、千早ってのは花魁の名前だったんですね」「まあ、そうじゃ。しかし相撲取りは嫌いだと言って、竜田川は千早に振られてしまった」「それが千早振るですか。じゃ、神代も聞かずってのは」「神代とは…神代とは千早の妹だな。こちらも千早から鞍替えした竜田川を振ってしまった。そんなことがあって、すっかり相撲取りが嫌になった竜田川は故郷に帰って豆腐屋になったのだ」「なんで豆腐屋に?」「それは…知らん。まあ、とにかくそこで一生懸命働いて店を大きくした10年後、ボロをまとった女乞食が、丸3日何も食べていないのでおからを恵んでくれと現れた。気の毒に思った竜田川がおからを渡そうと顔を見ると、これがなんとあの千早太夫ではないか。思わずカッとなった竜田川が突き飛ばすと、千早はかたわらにあった井戸に身を投げてしまった。これがこの歌の意味じゃ。つまり千早に振られたから“千早振る”、神代も言うことを聞かないから“神代も聞かず竜田川”、おからをくれなかったから“からくれなゐに”。そして井戸に飛び込んだら水をくぐるので“水くぐる”だ」「だったら、“水くぐる”まででいいんじゃないですか?なんですか最後の“とは”は」「うーん、とわは…千早の本名だった」

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