江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 片棒(かたぼう)

落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 国町に店を構える赤螺屋吝兵衛(あかにしや・けちべい)。食うものも食わずに一代で大身代を築いたが、その名の通り大のドケチ。今日も自分が死んだあとは、その財産がどうなるかと考えて気が気じゃない。そこで3人の息子、金太郎、銀二郎、銅三郎の3人に話を聞き、身代をしっかりと守ってくれそうな者に店を譲ろうと考えた。まずは長男の金太郎を呼び「もし私が明日死んだら、お前ならどんな葬式を出してくれるんだ」と聞いた。吝兵衛と違ってぜいたく好みの長男は「まず、通夜は2晩行います。それでお葬式は日比谷公園を借り切ってですね、東京中の僧侶を集めて大読経大会。で、会葬客のお弁当は特注で、お土産に特別に誂えた重箱にお料理を入れて持って帰っていただきます。その時お車代として、みなさんに十両ずつ手渡して…」。吝兵衛さん、そこまで聞くと卒倒しそうになり「もういい。葬式で身代を潰されてたまるか!」と追い出してしまった。次に呼ばれたお調子者の次男の銀二郎は同じことを聞かれ「ここはお練をやりたいと思います」「お練?」「はい。先頭は東京中の組頭、鳶100人による木遣りで、その後ろに新橋や赤坂の芸者の手古舞が続きます。さらに後ろには山車が出て、その山車の上にはおとっつあんそっくりな人形を乗せます。人形は片手にそろばんを持って、それを弾くようなからくり仕掛けにして、後ろからはおとっつあんの骨壷を乗せた神輿も登場。わっしょい、わっしょいっと」。「バカ野郎!お前なんざ、勘当だ!」。

 そしていよいよ最後の三男・銅三郎に望みを託す。「死ぬなんてのは自然のことですから、葬式にお金はかけません」「おっ、いいぞ。これは見込みがある」「死骸はどこかにほっぽっておいて鳥につつかせましょう」。さすがにこれには吝兵衛さんも難色を示したので、とりあえず葬式は出すということに。「では、早桶はどうせ燃やすので、死体は漬物樽に詰め込んで、出棺時間は午前8時と伝えておいて、実際は5時に出ちまいます。これで会葬者に食事や菓子を振る舞わなくていい。それぐらいの事ですから、人を雇わなくても、家族と使用人で十分仕切れます」「さすが私の息子」と跡継ぎは三男と決めた。「しかし、俺の入った樽を担ぐ人は雇わなきゃならないだろう」「確かに。片棒は私が担ぎますが、後棒が…」「心配するな。その片棒は俺が出て担ぐ」