料理家・谷尻直子と建築家・谷尻誠が夫婦でトーク『HITOTEMAのひとてま 第二幕』ができるまで

一作目以来となる夫婦でのトークイベント。誠氏の「毎日来られるごはん屋さんだと思う」という言葉に聞き入る谷尻

 同店の空間設計を「お店までのアプローチを含めてどういう体験をもたらすか、本質的な部分まで考えています。店に来るまでの時間は準備段階というか、そこからすでに食事が始まっているんですよね。実際にお店に来て『あぁ、いいね』と言って食べ始めれば、おいしいものがよりおいしく感じられる」と解説する誠氏に、谷尻も「いい呼吸をして食べ進めていただきたい、そうした空気感でお招きしたいという思いはありますね」と同調。誠氏の「食事って頭で感じるものとお腹で感じるものがあると思うのですが、彼女の作るものはどちらかというと後者で、あまり『どうだ!』という空間を作るのも違うかな、と。日常の中にある豊かさを感じられたほうが長い時間お付き合いできるようになるし、そういう意味で毎日来られるごはん屋さんだと思う」という言葉にも静かにうなずいた。

「HITOTEMA」を6年間続ける中で「一時期はアカデミックなところを目指さないといけないのかな、というふうに血迷ったことがあるんですけど(笑)、今は滋味深さを愛していただけるような提案ができるお仕事を生きがいにしていきたい」という谷尻。お店の人気メニューをコース料理の構成で披露した同書に「『お母さんの料理で何が好き?』と聞いて出てくるエビフライやハンバーグ、グラタン、カレーライスなども日本食と捉え、そういったものを主軸に作りやすい工程を抽出しました。お酒とみりんを使うレシピはみりんだけにしたり、ごぼうの皮を包丁の背でこそげ取るのではなくピーラーで剥くと書いたり。料亭で出てくるような料理ではなく、家庭での買い出しから片付けまでを含め、現代の忙しい生活の中で料理をして良かったと感じてもらいたいなと思って書いています」と、味わいはもちろん料理の喜びを再現できるよう制作したことを明かした。