他人の自慢話なんて聞きたかないだろうけど、『あちこちオードリー』で褒められて、「芸人続けていて良かった」と思った〈徳井健太の菩薩目線 第195回〉

平成ノブシコブシ・徳井健太

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第195回目は、「あの悩みどうなった報告会」について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 なんだか旧年の話ばかりで申し訳ないです。年末に放送された『あちこちオードリー』の「あの悩みどうなった報告会」をご覧になった皆さま、ありがとうございました。

 僕は、「人から褒められない」ということを、以前、この番組で吐露した。その答え合わせをするために、再び呼ばれたわけだけど、僕の悩みは解決していない。相変わらず、人から褒められることはない。

 そんな中、僕は「ローリエのような存在でありたい」という結論を、自分なりに出した。ローリエはハーブの一種。よくよく調べてみると、クスノキ科ゲッケイジュ属の「月桂樹」の葉を乾燥させたもので、原産地は地中海沿岸。なんでも古代ギリシャの時代から香辛料として利用されていたようで、甘い香りと苦味を有するローリエは、現代まで肉や魚料理の臭み取りや風味づけの調味料として生き続けている。

――なんて、もっともらしく説明したものの、一般家庭でローリエが登場するシーンはほとんどないと思う。でも、プロが料理を作るとき、ローリエはなくてはならない。僕はそれでいいと思った。

 ローリエは食べられることもなく、最後は捨てられる。僕が編集でカットされていたとしても、笑いを生んでいるその人の面白さを引き出していたのが、僕だったら素敵じゃないですか。未編集の素材を見ると、僕が振っていて、その先に笑いが生まれている……そんなローリエのような存在であることに、自信を持ちたいと話した。

 すると、佐久間(宣行)さんがカンペで、『徳井君は3日前にキャスティングすることが決まった』と教えてくれた。

 よくよく考えれば、「人から褒められない」という僕の悩みのアフターは、話題として“弱い”。例えば、この日出演したZAZYは、「ZAZY」と「赤井(本名)」、二つの人格で揺れるといった悩みを抱えている。どう考えても、ZAZYの悩みの“その後”の方が番組として盛り上がるし、広がる。一方、僕の悩みはというと、悩みそのものも弱ければ、中途半端な解決しかしていない。どう料理していいか難しい。ほんと、ローリエみたいな悩みだったと思う。

 佐久間さんは、(田村)亮さん、松丸(亮吾)君、 ZAZYの3人だけだと、悩みが暗くなりすぎる可能性があるから、ここに誰か一人を加えようと思ったそうだ。会議の結果、僕の名前があがり、キャスティングされたという。なんだかとてもうれしかった。

「徳井君が『しくじり』とかに来てくれると、横に広がるんだよね」

 その話を聞いていた、オードリーの若林君が合いの手を入れる。「人に褒められない」という体で参加しているのに、こんなに褒められたら僕だけ矛盾しちゃうんじゃないか。気が気じゃないけど、それ以上にうれしかったのは言うまでもない。僕の悩みは、もう解決していたのだ。

 収録が終わって、喫煙ブースで一服していると、偶然、佐久間さんがやってきた。「褒めてもらってありがとうございます」と伝えると、「本当のことだからね」と言われた。ローリエでい続けたいと、気持ちをあらたにした。

 そう声を掛けられたのは、僕が喫煙ブースで一服していたから。実はここ1~2年ほど、うちの奥さんからの助言もあって、収録後、すぐに帰宅するのではなく、喫煙ブースで一息ついてから帰るようにしている。

 昔から僕は、仕事が終わるとすぐに帰っていた。若手の頃、居座る先輩とどう接していいか分からなければ、スタッフの皆さんと一緒になっても、何を話せばいいか分からなかった。だから、そそくさと逃げるように帰ることが、一番ノーダメージの帰路の着き方だと習慣になっていた。

 居座れば居座るほど気まずい空間になりそうで、それがなんだか申し訳ないから、消えるように帰っていた。「あいつは可愛げがない奴だな」と思われても仕方のない行動だったと思う。

 でも、奥さんから「それはもったいないよ」と進言され、少し前からワンクッションを置いてから帰るように変えた。

 一服するようになってから、いろんな人たちとほんの数分、話をするだけで、些細な会話の中に喜怒哀楽があることを知った。僕が歳を重ねたことで、場の雰囲気の受け取り方に変化が生じたことも大きいんだろうなと思う。若い頃は何も話さない場は耐えられなかったけど、今は何も話さなくても耐えられる。みんないろんな事情があるから、他愛のない一言でさえ、意味のある一言だと感じられるようになった。

 生活や仕事のどこかで、どうかワンクッションを作ってみてください。思いがけない一言やひらめきに出会えると思います。そういう中で、僕はローリエになろうと思ったのだから。

 

【プロフィル】
1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
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