ABEMAさんに育ててもらったといっても過言じゃない僕は、BSよしもとの可能性を誰よりも信じている!の巻!【徳井健太の菩薩目線 第197回】

平成ノブシコブシ・徳井健太

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第197回目は、住みます芸人の可能性について、独自の梵鐘を鳴らす――。

 

 僕は、ローリエのような存在でありたい。

 一般家庭でローリエが登場するシーンはほとんどないと思う。でも、プロが料理を作るとき、ローリエはなくてはならない。ローリエは食べられることもなく、最後は捨てられる。だけど、あるとないとではまったく違う。

 どうして、そんなポジションでありたいと思うようになったのかと考えると、ABEMA 競輪・オートレースCH「WINTICKET(ウィンチケット) 」によるところが大きいような気がする。

「WINTICKET」に出演すると、芸人が自分一人ということが珍しくない。共演者はグラビアアイドルをはじめ、違う畑の人ばかり。共同作業で番組を盛り上げていかなければいけないから、僕はとにかくパスを出し、横に展開する癖が養われていったのだと思う。なんてたって8時間くらい収録時間があることも珍しくない。展開しないと場がもたない。

 お笑いが好きだというタレントさんがいれば、がっつり踏み込んで質問してみたり、そんなに関心がないという人であれば、ほどよく引き際のある疑問をぶつけたり。そんなことを繰り返していく中で、話を振った人が引き立ってくれたら、「最終的に自分の存在が薄くなってもいいかな」と思えるローリエに光を見出していた。

 話が横に膨らんだら――。そんな気持ちがあるからなのか、「よしもと住みます芸人」に対しても思うところがある。もっと有効活用できるんじゃないのかなって。前回、山形住みます芸人であるソラシド・本坊さんの話に触れたけど、住みます芸人たちにはドラマがある。

 住みます芸人は、その地域に根ざした土着性という強烈な武器を持っている。その地域に住んでいる人の思いや挑戦をくみ取れるのだから、住みます芸人にしかできないレポートや取材ができるはず。

 たとえば、めちゃくちゃ弱小チームだけど甲子園出場にかける思いだけは、どの高校にも負けない――そんな野球部があったとしたら密着してみる。後継ぎがいなくて困っている農家さんがいるなら、どういう結末を迎えるかわからないけど、その様子を密着してみる。そして、真剣に届ける。地元の人だって、どこの馬か分からない芸人よりも、「え? あなたはここに住んでいる人なの」って距離が縮まるだろう住みます芸人の方が適役だよね。

 振り返れば、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「勉強して東大に入ろうね会」という企画で、高田純次さんが受験生に密着して、合否を見届けたことがあった。おバカな企画ばかりの『元気が出るテレビ!!』では、異例の「涙を誘う名企画」として、今なお人気が根強い。人は、真剣な人に見入ってしまうし、そういう姿を応援したくなる。

『探偵!ナイトスクープ』にしてもそうだよね。小さな疑問や悩みを真剣に解決していく中で、笑いや涙が生まれる。地方の街には、きっとそうした知られるべき「何か」がたくさん眠っていて、その掘り起こしを住みます芸人がやるというのは、ものすごく理に適っていると思うんだけど。

 もしも――。密着の対象者、たとえば学生がその後、大谷翔平のようなスーパースターになったら、どうする? 取材すること自体、難しくなった雲の上の存在。でも、スーパースター自らが、「取材を受けるなら、昔、私を密着してくれた住みます芸人の〇〇さんがいいです。あのときのことを知ってくれているので」なんてこともありえるかもしれない。妄想だけど、ありえなくはない。妄想くらい自由でいいじゃん。

 チームや企業を密着すると、そこに関連する人たちも住みます芸人のファンになってくれる可能性だって高い。よほど嫌われるようなことをしない限り、雪だるま式にファンが増えていく。地域の共感を生むような活動を、住みます芸人たちに密着させ、かかわった人みんなのファンが増えていく。

 そして、それぞれが持ち寄った密着記録を、甲子園のように戦わせる。

 BSよしもとは、『小倉淳の 47 フォーカス』という住みます芸人にフォーカスを当てた番組を持っている。すでに下地があるんだから、BSよしもとでやれないものなんでしょうか。「住みます芸人47 密着甲子園」――。47人が密着した記録を競わせ、その年のグランプリを決める。YouTubeにも配信して、多くの人を巻き込んで、各都道府県の「密着取材」を見てもらう。編集が得意な吉本の若手芸人はたくさんいるだろうから、彼らにも協力してもらって、1年かけて作り上げていけば、住みます芸人にしかできないスペシャルな密着番組ができると思うのに。

 BSよしもとさん、僕に一度、「住みます芸人甲子園」、企画させていただけないでしょうか? 住みます芸人って、もっと爆発を生めるポテンシャルがあると思うんです。

【プロフィル】1980年北海道出身。2000年、東京NSC5期生同期の吉村崇とお笑いコンビ「平成ノブシコブシ」結成。「ピカルの定理」などバラエティ番組を中心に活躍。最近では、バラエティ番組や芸人を愛情たっぷりに「分析」することでも注目を集め、22年2月28日に『敗北からの芸人論』を発売。「もっと世間で評価や称賛を受けるべき人や物」を紹介すべく、YouTubeチャンネル「徳井の考察」も開設している。吉本興業所属。
公式ツイッター:https://twitter.com/nagomigozen 
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