山田幸代×北川愛莉対談「社会人経験がスポーツ選手としての生き方にポジティブな影響を与える」

SDGs HEADLINE〈シリーズ:未来トーク〉アスリートと会社員

 持続可能な未来へ向けた取り組みや、目標達成のヒントとなる話題を各界の著名人とビジネスパーソンが語り合う「シリーズ:未来トーク」。3回目となる今回は、社会人とスポーツ選手の両立方法や気持ちの持ち方について、日本初のプロラクロスプレイヤーであり、台湾ラクロスナショナルチーム監督、世界ラクロス協会の理事を兼任している山田幸代氏と、大宮アルディージャVENTUSでプロサッカー選手として活躍しながら株式会社ミライト・ワン埼玉支店で働く北川愛莉氏が語り合った。

世界ラクロス協会理事・山田幸代氏(左)と大宮アルディージャVENTUS所属・北川愛莉氏が“社会人とアスリート”の両立をテーマにトーク(撮影・蔦野裕)

会社員とスポーツ選手の2軸で生きること

北川愛莉氏(以下、北川)「チームのキャリアパートナーであるミライト・ワンで働くことを決め、サッカーと会社員の2軸で成長していきたいと思い、入社しました。山田さんも大学卒業直後は働きながらラクロス競技に取り組んでいたそうですね」

山田幸代氏(以下、山田)「そうなんです。ラクロスはマイナーなスポーツなので、そもそも2軸で取り組むのが当たり前の世界でした。ラクロスだけで生活できるような環境がなかったのです。私の場合はラクロスの日本代表になることが決まった状態での就職活動だったので、面接時にラクロスの練習場がある東京に配属してほしいこと、入社して半年後に世界大会があるので、その期間は1ヶ月半休みにしてほしいことを伝えました。就職活動はラクロスができる場所を探すことと同じ意味でしたね」

北川「私は朝から練習をして、一度家に帰って家事を済ませてから午後2時半から6時まで出勤し、帰宅後ご飯を作って食べ、ストレッチなどをする……という生活なのですが、山田さんは社会人の時はどのような生活をしていましたか?」

山田「朝6時くらいに練習に行き、その後仕事に向かい、仕事が終わってからジムに行くという生活を続けていました。仕事に遅れが出た場合は会社に泊まって遅れを取り戻さなくてはいけないこともありました。ラクロスをしながら働くことを認めていただいていることに感謝して、社内の方々に応援してもらえるようきちんと両立することを意識していましたね」

北川「会社の方々が応援してくれるのは励みになりますよね。私も、働きながらサッカーをさせてもらえる環境に感謝しています。会社の皆さんにしっかりとプレーしているところを見せたいと思いますし、働いている時間は仕事で恩返ししようと集中して取り組んでいます。明るく過ごすことで職場の雰囲気に貢献したり、積極的にコミュニケーションを取ったりすることも意識しています」

山田「社会人との2軸と聞くと大変そうと言われることが多いですが、実際はプラスなポイントが多いですよね。北川さんにとって社会人をしていることでマイナスになるポイントはありますか? 例えば会社を背負っているというプレッシャーを感じるとか」

北川「それはないですね。サッカーを通して社内の方たちの横のつながりを作るなど社内貢献できているのはむしろうれしく思いますし、一層頑張ろうと奮い立ちます」

山田幸代(やまだ さちよ)…1982年生まれ。滋賀県出身。日本初のプロラクロッサー。2007年9月にプロ宣言し、2008年から女子ラクロス界では世界トップクラスのオーストラリアリーグに加入。オーストラリア代表に選出され数々の大会で活躍。現在は台湾ラクロスナショナルチーム監督、世界ラクロス協会の理事を兼任。育成にも力を入れている。

社会人経験が視野を広げ、人間形成に役立つ

北川「山田さんは会社員として2年働いた後にプロ宣言をされたと思うのですが、迷いや不安はありませんでしたか?」

山田「なかったですね。私の夢はラクロスを日本の子どもたちに普及することと、ラクロスを通して子どもたちの選択肢を増やすことです。その夢のために日本のラクロスを強くしたいと思っていて、オーストラリアに行くことやプロになることは手段でしかありませんでした。そのように目標が明確だったので迷いや不安はありませんでした。私が失敗したとしても、次の方が私の失敗から学べばよいのですから。今も自分が日本のラクロス界の新しいロールモデルになれるように努力していますし、前に道がなければ私が作ってやるという気持ちでやっています」

北川「そこまで強い気持ちで挑んでいたのですね。それでも、プロになって環境の変化に戸惑いはしませんでしたか?」

山田「時間が余ったことには戸惑いました」

北川「え、意外です。むしろ忙しくなったのかと思いました」

山田「それまで働いていた時間が全部余るようになったため、ヒマな時間がすごく増えてしまったのです。ただ、ヒマな時間を無駄にしていては子どもたちの目標にはなれませんし、人としてカッコよくないですよね。子どもたちのお手本になることを意識しながら、時間の使い方を他のプロ選手に聞いて試してみたり、大学院に行って勉強したりしました。そのように視野を広げる必要性を感じられたのは社会人経験があってこそだと思いますね」

北川「私は社会人になってまだ日が浅いですが、事務作業でのタイピングや備品の購入など、サッカー選手だけでは経験できないことが多く、人間形成に役立っていると感じます」

山田「どのような経験も無駄になりませんよね。だからこそ手を抜けず、両立するのが大変だという面もあるとは思いますが。会社には競技に関するサポート制度のようなものはありますか?」

北川「試合の前日はお休みにしてもらっています。土曜日が試合だったら金曜日がお休みですね。試合前日は体を休めたいので、とても助かっています」

 

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