片寄涼太「エゴのようなものが減っている」花束のような初ソロアルバムをリリース!作詞にも挑戦

撮影・須山杏

 片寄涼太が初めてのソロアルバム『Bouquet』を完成させた。自身がボーカルを務めるGENERATIONSがライブに作品制作にと活発に動く中で、ゆっくりじっくり、決して急がず、圧倒的なボリューム感と熱い思いを詰め込み、愛にあふれた作品を作り上げた。初めてのアルバムは自然と制作に力がはいるものと容易に想像できるが、片寄の場合はいわゆる“力が入る”とはちょっと次元が違っていて……

『Bouquet』は集大成であり、節目の作品


ーーソロとして初めてのアルバム『Bouquet』が完成しました。昨年の夏、シングルCD『tenkiame / 今夜はブギー・バッグ feat.eill / prod.Shin Sakiura』をリリースした際に、アルバムの準備を進めていると話していらっしゃいましたね。

片寄涼太:今年挑戦したGENERATIONSでメンバーそれぞれが楽曲をプロデュースしてリリースする6カ月は大変だったし、バタバタしましたけど、あの頃に動き始めてたからこそ、なんとかなったかなって。これまでにリリースした楽曲と、線引きできる新曲もできました。それに、このアルバムをどうパッケージするかってところも。

ーー最終的にこういうアルバムを作れたらいいなという考えのもとで動き出したのはいつぐらいのことですか?

片寄涼太:それは去年の上半期です。春ぐらいにはアルバムは『Bouquet』になるんだなって思ってました。初回生産盤についているブックレットに文章を載せているんですが、それを書き始めたのもその頃です。

ーーブックレットの文章は、内容はもちろん、かなりまとまった量で驚きました。すごく乱暴な質問ですが、アルバムリリースはこうした文章がなくてもできたと思いますが、なぜ書こうと思ったのでしょうか? 

片寄涼太:とりあえず書き始めてみて、何かになったら面白いなと思っていたし、アルバムに入れられたらいいなという思いもありましたが、事前にアルバムに入れることは決めていたわけではありませんでした。

ブックレットの前書きにも書いてあるんですが、このアルバムは〈何者でもなかった片寄涼太の15年〉と〈アーティストとして誰かに知られている片寄涼太の15年〉が大きなテーマだと思ったので、それを整えていくような感じで、いろんな文章を思いつくままに書いていました。

書いた文章は、この中に全然収まってないですし(笑)……確かにやることはたくさんでしたけど、やったからこそこの『Bouquet』ができたし、『Bouquet』が集大成でもあり、節目の作品にもなったと思っています。 

ーー書くことで、振り返り、そこから考えられたんですね。

片寄涼太:以前、作詞家の小竹正人さんと『ラウンドトリップ 往復書簡』(新潮社、2021年)って本を出させてもらったんですが、その時に、自分の芯に触れるとか内なる心に触れるみたいなところを文章から感じてもらえている実感があったんですよね。俳優活動とか音楽活動と同じように、書くということもソロ活動の一環なんじゃないかって。

ーー書いたからアルバムの姿が見えてきた?

片寄涼太:こういうふうになってくんだなっていうのは見えました。自分でも俯瞰で見られたのかなって思います。これは、どう伝わるんだろうなとか。

今の自分が過去の自分にブーケを渡してあげる

ーーアルバムのタイトルでこの作品のテーマでもある『Bouquet』という言葉との出会いも書いているなかでのことですか?

片寄涼太:そうですね。今までソロとしていろいろな種類の楽曲をリリースしてきたな、っていうのは漠然と感じてはいたんです。書いていくなかで、そうした楽曲たちがいろいろな色のものに見えてきて、それをひとまとめにするなら何なんだろうって思ったんです。で、浮かんだのがブーケトス!  花嫁が投げて誰かがキャッチする。あれがパッと映像として浮かんできたんですよね、今の自分が過去の自分にブーケを渡してあげるようなイメージで。

ーーそれは〈何者でもなかった片寄涼太の15年〉と〈アーティストとして誰かに知られている片寄涼太の15年〉、ずっと頑張ってきたねという労いの意味でのブーケですか?

片寄涼太:そうですね!「あの時どうだった?」とか「あの時は大変だったよな」って話を絶対できない相手、それが過去の自分なんですよね。過去を知っている同級生とか友人、仲間、一緒に時間を過ごしてきた家族とか、そういった人たちとはできるけど、自分自身とはできない。表現の世界だからこそ、そういうことができたらいいなって思って。自分自身を褒めたいのか、今の自分を、ある意味、言い訳したいのか、みたいな感じでもありますが、こうだったじゃんっていうことを、その頃の自分と対話したいって思うんですよ。

その一端を感じてもらうためには、音楽だけだと分かりづらいだろうなって思って、それで文章なんです。聴いてもらうだけでもうれしいんですけど、今作は文章が作品の理解度を深めることにつながると思っています。

ーー誰もが自分のこれまでとこれからを考えがちな30代に入ってのリリース。今のような思いが込められたアルバムを発表するには最高のタイミングに思えます。

片寄涼太:もっと早く、例えば20代中盤とか後半とかで全然1つの作品にすることもやろうと思えばできたかもしれないです。だけど、これは結果論ですけど、このタイミングで良かったねって。自分がそう思えるようにしたところもあるかもしれませんが。

ーーワインが熟成していくように、その時が、ゆっくりとやってきたような……

片寄涼太:GENERATIONSでのスピード感とか勢いとかを知っているから、そうじゃないテンポでできるのがソロの良さでもあると思います。期限を決めないから楽曲ができるまで時間をかけられますし、曲を作ってくれた方たちとの制作も結果的にすんなりいったり。「朝日のように、夢を見て」みたいに話し始めてから1年以上経ってるのもありますからね、……自分らしい制作だったと思います。

1 2 3 4>>>