片寄涼太が一夜限りのクリスマスライブ フルバンド編成で最高の夜

 

 ライブ終盤はクリスマスの思い出になるような場面がツリー下に溢れるプレゼントのように積み上がる。8曲目「tenkiame」イントロ中に片寄が客席に「皆さん一緒に行きましょ!」とフランクに提案すると、1階席と2階席が自然と呼吸を合わせて〈la la la〉と声を重ねる。客席との一体感を受け取った片寄も思わず「デビューします? 皆んなで」と朗らかなリアクションで返した。片寄の思いを共有する一体感のある会場に音楽の輪が生まれていた。

 公演ラストナンバーは作詞曲「朝日のように、夢を見て」を披露した。サビのフレーズ〈あるはずのない 虹のまぼろし〉には自宅での作詞中に窓の外に虹を見た経験を落とし込み、公演で提供されたオリジナルカクテルに浮かぶあざやかなエディブルフラワーはこの虹と朝日の色合いを花束のように表現している。「心を込めて歌います」と歌唱前からエモーションを高める片寄を温かい拍手が包み、アウトロまで豊かなフレージングがきらめいた。歌唱後、片寄は客席の間を抜けて一度退場。1階席からアンコールを求める手拍子、2階席から「涼太」コールを受けて再登場した片寄はメガネをかけていた。本人もレアだと語るメガネスタイルでアンコール1曲目「運命」を歌う。ソロ活動を通じて何度も歌ってきた同曲は片寄自身が常に「背中を押された」特別なナンバーであり、「皆さん一人ひとりが主人公です」というメッセージをアウトロに付け加えたようにリスナーにとっての応援ソングでもある。さらに今回のライブ仕様にアレンジしたアルバム収録のボーナストラック「Pray -for Bouquet -」は、ホリデーシーズンにぴったりの心温まるサウンドの中でボーカルの魅力が一際華やぐ。一夜限定ライブならでの距離感で片寄の息づかいを間近で感じる特別なクリスマスライブのひとときを締めくくった。