小保方氏「STAP細胞はあります」でも第三者が検証可能な科学的根拠を明らかにせず

 新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、理化学研究所は1日、調査委員会の最終報告書を公表し、重要な画像に捏造と改竄があったと不正を認定した。調査委の最終報告によると、不正と認定されたのは小保方晴子・研究ユニットリーダー(30)の3年前の早稲田大の博士論文の関連画像から流用された画像4枚と、一部が切り張りされたDNAの解析画像。

 調査委は不正を行ったのは小保方氏1人とした。共著者の笹井芳樹理研発生・再生科学総合研究センター副センター長と元理研の若山照彦山梨大教授については、不正はなかったとしながらも、データの正当性と正確性を自ら確認しなかったとして責任は重大とした。同じく共著者で理研の丹羽仁史氏に不正は認められないとした。
 これに対し、小保方氏は8日に不服を申し立て。9日に大阪市内で記者会見を行い、「未熟で多くの人に迷惑をかけた」と謝罪する一方、「悪意を持って論文を仕上げたわけではない」と不正を否定した。

 理研の調査委の会見は論文で指摘された6項目の疑惑についてのみ語られ、肝心のSTAP細胞が存在するのか、といった疑問にはなんら答えることはなかった。この報告書を受けての理化学研究所の野依良治理事長らの会見も、小保方氏一人にの責任として幕引きにしたいという空気も感じられたもので、理研の姿勢やガバナンスに対する批判はやむことはなかった。肝心のSTAP細胞に関しては「理研の研究者が検証を試み、外部の再現実験にも積極的な情報発信を心がける」(野依氏)とした。検証実験には1年程度の時間を要するという。

 一方、小保方氏も取り違えた写真の「真正画像」はあるとしながらも、会見で公表することもなかった。細胞の存否については「200回以上作製した。STAP細胞はあります」と主張。第三者がSTAP細胞作製に成功しているとしながらも、報道陣に氏名を求められると「個人名になってしまうので。あまりにも公の場なので…」と口ごもり、結局、その名が明らかにされることはなかった。


小保方氏は個人のパソコンで仕事をしていた!?

 小保方氏はこのような状況を引き起こした原因について「学生のころから研究室を渡り歩き、研究にかなり自己流で走ってきたことは、私の不勉強であり、未熟さであり情けなく思っている。今回の疑義については、第三者的観点で弁護士に協力してもらい晴らしたい」と語る。

 調査委の報告で3年間で実験ノートが2冊しかないと指摘された点には「4〜5冊ある。写真は大量に、間違いなく何百枚とある」とした。しかし再現実験やノートの公開をする気はあるのかという質問には「公開実験については私の判断では決められることではないので答えられない。実験ノートについても秘密実験もたくさんあり、すべての方に公開するつもりはない」という。

 しかし今後について、「自己流で走ってきてしまったので、ゼロからではなくマイナス100からだと思って、科学や研究に向き合っていくチャンスがあればいいと思っている」と現在自らが置かれている状況を理解しているのであれば、第三者が検証可能な科学的根拠を明らかにすることは必須と思われるのだが、会見では「あるある」というだけで一切示されることはなかった。

 また今回の一連の会見で驚かされたことは、小保方氏が私物のパソコンで仕事をしており、私物ゆえに調査委がパソコン本体の提出要請ができず、データ提出をお願いしたという点と、小保方氏側に調査委に未提出の実験ノートがあるという点だろう。

 民主党政権下で行われた事業仕分けで理研は仕分け人の蓮舫氏に「2位じゃダメなんですか?」と言われ、反論した過去がある。そんなところが情報漏えいに対する危機管理が全くなされていなかったということに驚いた人も多かっただろう。

 また小保方氏もこれだけの疑惑がかけられているのに、すべての資料を提出しないという行為には疑問が残る。

 国から多額の研究費を引き出そうと思うのなら、そこらへんの倫理観はしっかりしてほしいところだ。